札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年11月1日火曜日

北海道の地域医療

11月1日、幌加内町国民健康保険病院の森崎龍郎先生の講義を拝聴した。講義のタイトルは「地域医療の実践 幌加内での医療と生活」である。

まず、自己紹介をされた。横浜生まれ。富山医科薬科大学卒。漢方医。2010年幌加内町国民健康保険病院に赴任。幌加内町の紹介。3つの日本一。そばの作付面積、日本最大の人造湖(朱鞠内湖:ワカサギ釣りができる)、最寒記録-41.2℃(霧氷が見える)。人口1,704人、世帯数855(町として最小数、人口密度が最低)。過疎の町で高齢者が多い(高齢化率35%)。小学校2年生は8名で全員女子。病院の紹介。町内唯一の医療機関。医療療養13床、介護療養29床。建て替えの予定は宙に浮いている。平均入院患者28.6名。平均外来患者数43.6名。常勤医師2名、非常勤医師1名、職員数40名。

日々の診療。外来:超音波、内視鏡検査。訪問診療。入院;回診、病棟業務。病棟管理。予防医学。保健福祉医療連携。産業医。

入院病棟:在宅生活が困難な方。脊椎損傷の方。認知症の方。脳卒中後遺症による胃瘻造設者。末期がん患者。骨折、火傷の方。
外来診療:高血圧、糖尿病、高脂血症。OA.認知症など。慢性疾患が複数組み合わさった患者が多い。それに急性疾患が加わる。小児の肺炎。帯状疱疹。マダニ咬傷。

当直:自宅待機である。2週に1件の救急車。関節脱臼。大腿骨骨幹部骨折。結膜浮腫。農薬が眼に入った患者。

プライマリ・ケア医として
1.まずはすべてに対応する。
2.自分のできることをする。
シンプルに。スーパードクターである必要はない。

道北ドクターヘリ事業:旭川日赤病院が基地。1年半で4回要請している(交通事故、脳卒中)。悪天候、夜間の対応が問題。

在宅医療:老々介護。認知症同士の介護。カバーする地域の範囲が広すぎる。冬期間の厳しさ(雪はねが大変)。介護スタッフ不足。

出張診療所;4つの診療所。公民館の一部を借りているところもある。
保健福祉総合センター(アルク):ディサービス、居住部門、老人福祉寮。ふれあい福祉村構想。地域ケア会議の紹介。

予防接種事業:未就学児の任意予防接種をすべて全額助成。中学生女子の子宮頚がんワクチン全額補助。インフルエンザワクチンは中学生無料、町民は千円、高齢者の肺炎球菌ワクチン助成。保育園健診。

講義の途中に、幌加内そば打たん会、野菜作り、スキー、ワカサギ釣り等、田舎の生活の魅力を紹介してくれた。

夏から秋にかけてのエピソード。農繁期に頭痛で倒れた女性がいるといって救急隊から連絡があった。血圧が高くて、意識障害があった。くも膜下出血を疑い、脳外科のある病院に紹介。その配偶者に糖尿病、高血圧、喫煙についての指導。その母親は大動脈弁狭窄症による労作時呼吸困難がある。精査を勧めたが、結局、自宅で亡くなられた。女性の最終診断は毒キノコ中毒であった。

1年半年経って感じること:患者さんの顔が見える。保健・福祉・救急の連携がスムース。旭川市が比較的近いので助かっている(高度医療・専門医のありがたみがよくわかる)。外傷が多い。人材不足(医師、看護師、介護士、ヘルパー、給食婦、等)。高齢者の生活(冬をどう過ごすか)。意外と子供が多い。シンプルに、コンパクトに地域医療を経験することができる。若いうちに是非、経験を!

学生さん達は「ホンワカとした雰囲気の中で家族と一緒に地域で暮らす楽しさ」を感じとってくれたようだ。(山本和利)