札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年11月15日火曜日

へき地医療って何だろう

11月15日、西吾妻福祉病院並びに六合温泉医療センター 折茂賢一郎先生の講義を拝聴した。講義のタイトルは「「地域医療の課題と展望-へき地医療って何だろう」である。

東日本大震災での医療支援(宮城県女川町)について。医療者をセットにして4回支援した。外で簡易トイレの使用が苦痛であった。電気と水がない。住民は水の摂取を控えるため、体調不良となる。16mの高台にある病院が被災。津波の動画を供覧。医療従事者は自分が助かっても自分の家族の音信がわからないまま、目の前の患者に対応しなければならなかった。10日間、入浴もできない。日が昇ると活動し、日が沈むと終了(皆で集まって酒を飲む)。患者は自分の病気のことをほとんど知らなかった(薬手帳や薬剤がないため)。内服薬をせめて1種類でも記憶してもらうようにしたい。寝たきり患者はすぐ褥瘡ができる。逆に糖尿病患者の血糖コントロールは改善した。聴診器1本で対応する医療(日ごろの診療態度を問われる)。国際疾病分類から大震災を考える。社会参加を目標とする。被災直後から慢性疾患の管理、リハビリ、心の管理が重要。

「山と離島のへき地医療って違うか」と学生に質問。
山村、半島、広大な地域、大きな島と周辺の離島、本土から距離のある離島、高齢化住宅タウン、山谷地区、等、地域によって様々である。台風のときの対応が難しい。ヘリコプター搬送(有視界飛行である:夜間飛ばない)。

これまでの活動を披露された。自治医大卒。29歳で六合へき地診療所長。「村の命を僕が預かる」。現在、2施設の管理者。白衣を着ない仕事が沢山あった。へき地包括医療に触れた3年間。顔が見える活動を続けた。半無医村の認識(必要なときに医師がいない、看とり)。その反省を踏まえて福祉リゾート構想へ発展させた。六合温泉医療センターを建設。コメディカルが地域へ出向く医療を目指した。そして最前線医療から「支える医療」へ。草津温泉、白根山の近くで対象人口26,000人。観光客年間六百万人。高齢化率>30%の地区で外科系・周産期の救急医療を確保。地域の拠点病院を建設。ヘリポート増設。24時間保育。屋根瓦式研修を導入している。

豊富な写真を提示しながら講義は進んだ。

     
最後に「医療モデル」と「生活モデル」の違いを強調された。目指す目標は「生活モデル」である。
    
今回は、前半で東日本大震災での被災地支援を行ったときの話をされた。リアリティのある話に学生達は感銘を受けていた。何も設備のないところでの診療に総合医が役だっていることがストレートに伝わる授業であった。(山本和利)