札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年5月31日月曜日

選択実習のまとめ

5月28日,札幌医科大学総合診療科の選択実習のまとめを行った。当教室から山本、寺田が評価者を兼ねて聴衆として参加した。
5名の学生さんは、松前町立松前病院(2名)、更別村国保診療所、六合温泉医療センター・西吾妻福祉病院(群馬県)、湯沢保健医療センター(新潟県)で3-4週間の実習をしてきた。2クール分をまとめての発表会である。まずパワーポイントで実習した地域の紹介した後、significant event analysisで取り上げた意義深い事例や課題研究を発表した。健康教育の場面をDVDに録画したものを供覧したり、お泊まり実習の発表があったりした。健康教育の内容は、高血圧や不眠についてであった。課題発表ではバスの運行を増加することで患者の受診動向がどう変わったかを年度で比較してくれた。和気藹々と発表はすすみ、あちこちから笑いが起こった。全員が充実した実習であり、満足度の高いものと評価してくれた。
2週間の必修実習と違って、実習施設の職員の中に溶け込むという意味では3週間以上の期間が必要であるという学生の意見が多かった。
御指導いただいた指導医の先生方、職員の方々にこの場を借りて感謝申し上げます。(山本和利)

札幌GPカンファランス

  5月28日、札幌で研修中の若手総合医の勉強会に参加した。はじめに熱傷の処置についての講義があった。10歳以下の子供の熱傷の原因は料理の手伝い中、親が抱っこしての飲食、カップラーメンをこぼした後に子供が這う、アイロンに触った、花火で、ライターで、等が多い。処置として、服はできれば脱がす。12度のぬるま湯で15分から3時間冷やす(氷水はよくない)。I度熱傷ならアロエは有効。乾かさないで被覆させておく。進行性なので深度の断定はしない。
  局所療法。創の被覆が第一である。ワセリンとラップで十分。浸出液が多い場合はポリウレタン。ガーゼはよくない。治りが悪い。顔面熱傷には薄いハイドロコロイドを用いる。浸出液は水で流す。治っても半年ほど色素沈着予防のため日焼け止めが必要。処置の基本。毎日シャワーで流す。石鹸でこすらない。ふやけて剥がれてきたら交換する。水泡は破らない方が治癒は早い。3cm以上は穿刺する。破れた水泡膜は取り除く。知っていると便利な知識。ワセリンはオリーブオイルで落としやすい。手掌の熱傷には外科手袋の利用が便利。予防も重要。子供だけで台所に入れない。飲食をしながらの受け渡しをしない。キャンプ、バーベキューは要注意等。
  次は症例検討。「専門医で診断がつかず紹介となった一例」である。徐々に進行する嚥下困難が主訴。患者さんから「総合内科は最期の砦」と言われた。食べると嘔吐するため4カ月で6kgの体重減少もでている。時間経過に沿って鑑別診断や必要な検査法が問われた。
嚥下障害を起こす疾患をレビューしてくれた。固体のみは機械的閉塞を疑う。発表した研修医のclinical pearl。「頻度、緊急度、重症度の高い疾患を常に念頭において鑑別診断を考える。鑑別の第一歩はやはり病歴と身体診察から。」
  このような勉強会を通じて総合医のレベルを上げ、社会にも認知してもらうようアピールしてゆく必要があろう。(山本和利)

2010年5月28日金曜日

旭川医大2年生の早期体験実習

  5月27日、札幌と旭川地区出身である旭川医大2年生7名が当教室を訪れた。旭川医大の早期体験実習の授業の一貫として、地域医療に関するインタービューを受けた。全員が黒のスーツ(男性はネクタイ着用)という就職活動を思わせるようなきちんとした身なりで現れた。事前にアポイントもあり、FAXでインタービュー内容も事前に知らせてくれており、教官からの指導がしっかりしていることが伺われた。「地域の現場を見てこよう」という主題で、総合診療科や総合内科を持つ札幌市内の病院や道庁にもインタービューに行くそうだ。私は「総合診療とは何か」「札幌の地域医療はどうなっているのか」について訊かれた。
  「総合診療とはまずはどんな訴えであっても診る覚悟で臨み、患者背景を重要視しながら、様々なリソースと連携して問題解決に向かう診療である」と答えた。また地域医療を崩壊させないためには「個々の医師が2割の時間を公共のために提供する覚悟としっかりとした国策(総合医の比率を増やす等)」が重要であることを強調した。予定の時間はあっという間に過ぎてしまった。最後に参加者全員で記念写真を撮って散会となったが、その写真の利用許可書にサインを求められその徹底ぶりに驚きもした。
  訪れた学生さんの目はキラキラと輝いており、私の話を真剣に聞き入っているのがヒシヒシと伝わってきた。いつまでの今の眼の輝きを忘れないで欲しい。(山本和利)

吉本隆明のDNA

  「吉本隆明のDNA」(藤尾京子著:朝日新聞出版 2009年)を読んでみた。これは著名人6人への吉本隆明についてのインタービューで構成されている。巻末の(著作発表年を中心としたと)断り書きのある吉本隆明略年譜が可笑しい。1996年 72歳 伊豆の海で溺れる、とある。このとき入院したのが仲田和正先生のいる西伊豆病院である。(その後の作品に溺れたことが影響を与えたということであろうか)
この中で中沢新一氏と糸井重里氏の章が私には大変参考になった。オウム事件で世間から批判され袋たたきにあった中沢氏が体験を振り返って「ある意味、死ぬほど苦しみました」と答えた言葉がズシンと来る。このような状況で本を次々と書きあげてゆく。吉本死を評して、思想の神髄がにじみ出るのは、生き方というより「たたずまい」ではないか、と。吉本隆明は安全な枠組みを完全に取っ払って突き進んでゆく。
糸井重里氏も挫折の人であったことがわかった。吉本隆明の本を読んでもわからないので読んでいないという。私もそうである。さっぱりわからない。彼は20年に及ぶ家族も交えた付き合いの中で、吉本氏を「逸らさない」魅力を持つ人と評価している。吉本隆明は彼の著作を読むよりも話を聞く人ではないかと思った。孤独と向き合い、人と人との新しい形のつながりを求める「心のあるよう」の人、と吉本を評価している。
この本(志を曲げず、孤独にジッと耐えてきた先人の生き方の本)は、今後の生き方に悩む者にどう乗り越えてゆくかの示唆を与えてくれるであろう。(山本和利)

Common Problem: よくある疾患、見逃しやすい疾患

  内科系総合雑誌Modern Physicianの2010年6月号で「Common Problem: よくある疾患、見逃しやすい疾患」という企画編集をしました。日常診療に役立つ自信作です。是非お手にとってお読みください。以下にその巻頭言を提示します。

 一般に診断の過程は、1)診断仮説の形成、2)診断仮説の修正、3)診断のための検査、4)原因の推理、5)診断の確認、の5つからなると言われている。臨床医は最初に、年齢、性別、人種、印象、主訴から診断仮説を形成する。その際臨床医は思いの外近道思考(ヒューリステックス)を用いていると言われる。すなわち疾患頻度よりも経験した類似症例や最近経験した印象的な症例から仮説を形成している。ベテラン医師の場合、その方法で大部分は正解にたどり着くが、その後の情報や検査結果を無視して最初の仮説の可能性を修正できないでいると(アンカリングの固定)、ときに間違うこともある。医療面接をさらに続け、身体診察情報を加味しながら診断仮説は修正されてゆく。そして治療をするだけの確信に至らなければ切れ味鋭い検査を依頼して、確定診断または除外診断を試みる。一度診断を付けたならばそれができるだけ単純に説明できるかどうか検証することになる(オッカムの剃刀の原理)。
 一方、臨床医は経験した症例を物語(illness scripts)として記憶し、必要に応じて診断に利用しているという意見もある。そこで本企画では、読者に診断の過程をベテラン医師と同様にたどってもらい、かつ利用可能な物語を増やしてもらうために、それぞれの愁訴についてCommon Caseの典型的な年齢、性別を記載のうえで問診、身体診察を中心に執筆してもらった。経験豊富な臨床医は患者から引き出した情報を用い、上述の5つの過程を経て効率よく診断する。学習者の診療能力向上にとって重要な点は、上級医から正解を教えてもらうことではなく、積極的に自分で考えて、それを上級医に話し、その根拠を述べる過程を通じて、自分の理由付けの過ちを修正し、一般論を理解することであると言われている。そこでベテラン医師の論理的な思考過程を追体験できるようにするために、New England Journal of Medicineのclinical problem solvingの症例呈示のように時系列で思考過程を記載してもらい、診断名はできるだけ最後までわからないように記述してもらった。紙面の関係で基礎的事項は最小限にして、最新の知見を日常診療に役立つようお願いした。
 同じ訴えであっても診断名が異なることはよくあることである。優秀な臨床家であっても少なからず失敗例を経験している。それを省察し、同じ過ちを繰り返さないよう努力した者が優秀な臨床家として生き残る。そこで頻度の高い疾患に紛れている見逃しやすい事例もPitfall Caseとして提示した。
 各項目の最後に、臨床医の知識と経験に裏打ちされた、現場での診断・治療に役立つ教訓をClinical pearl として記載してもらった。本企画が読者にとって今後の診療の糧になれば幸いである。 (山本和利)
<参考文献>
J. Kassirer, J. Won, and R. Kopelman:LEARNING Clinical Reasoning 2nd Edition、Lippincott Williams & Wilkins、2010

2010年5月27日木曜日

科学性と人間性

 5月24日、北海道大学医学部2年生を対象に「科学性と人間性」という講義を行った。「医療と社会」に次ぐ今年度の第2回目。
導入は私自身の若かりし日に実践した静岡県佐久間町の地域医療の紹介から入った。その後、オリバー・サックス『妻を帽子とまちがえた男』に収録されている、診察室では「失行症、失認症、知能に欠陥を持つ子供みたいなレベッカ」、しかし、庭で偶然みた姿は「チェーホフの桜の園にでてくる乙女・詩人」という内容を紹介した。サックスは言う、「医学雑誌の支配的テキストは苦しんでいる人を必要とする。しかし、その人々の個別的な苦しみは認知されえないのである」と。
次にAntonovskyの提唱する健康生成論(サルトジェネシス)を紹介。病気になりやすさではなく、逆に健康の源に注目。健康維持にはコヒアレンス感が重要らしい。1)理解可能であるという確信「こんなことは人生にはよくあるさ」。2)対処可能であるという確信「なんとかなるさ」。3)自己を投げ打つに値するという確信。「挑戦してやろうじゃないか!」
医学教育における視点の変化(ロジャー・ジョーンズ、他:Lancet 357:3,2001)を紹介。
研修医、総合医には、持ち込まれた問題に素早く対応できるAbility(即戦力)よりも、自分がまだ知らないも事項についても解決法を見出す力Capability(潜在能力)が重要であることを強調した。その根拠として、Shojania KGの論文How Quickly Do Systematic Reviews Go Out of Date? A Survival Analysis. Annals of Intern Med 2007 ;147(4):224-33の内容を紹介した。効果/治療副作用に関する結論は,系統的レビューが発表後すぐ変更となることがよくある.結論が変更なしに生き延びる生存期間の中央値は5.5年であったからである。(5年間で半分近くが入れ替わる)
N Engl J Med の編集者Groopman Jの著書 “How doctors think” (Houghton Mifflin) 2007を紹介。60歳代の男性である著者が右手関節痛で専門医を4軒受診した顛末が語られている。結論は“You see what you want to see.”(医師は自分の見たいものしか見ていない)。
ここで医学を離れて、考古学の世界「神々の捏造」という本を紹介。2002年10月、イスラエル。イエスの弟、ヤコブの骨箱が「発見」されたが、本物かどうか科学的に検証できるのか。
次に「狂牛病」の経緯を紹介。1985年4月、一頭の牛が異常行動を起こす。レンダリング(産物は肉骨粉)がオイルショックで工程の簡略化により発症を増やしたと考えられる。1990年代に英国で平均23.5歳という若年型症例が次々と報告。社会のちょっとした対応の変化が医療に影響する。
次に農業の話。Rowan Jacobsen「ハチはなぜ大量死したのか(Fruitless Fall)」を紹介。2007年春までに北半球から四分の一のハチが消えた。何が原因か科学的に検証してゆくが、その結末は?
授業の後半は、ナラティブの話。6つのNarrative要素:Six “C”を紹介。授業はまだまだ続く・・・。
学生さんの講義に関する感想文を読むと、医学以外の話が好評のようだ。ほとんどの人が今後の生活の仕方の参考になったと答えてくれており、講義をした者として大変うれしい。(山本和利)

臨床疫学大学院(2)

 6月から当講座の心理のカンファランス等に、心理学に興味を持つ大学院生が副科目の授業の一貫として参加することになった。

 純粋な医学以外についても機会を見つけて一緒に勉強をしてゆきたい。(山本和利)

 

2010年5月25日火曜日

北海道BSAP研究会

 522日、砂川市立病院の内海久美子先生のお誘いを受けて北海道BSAP研究会の第2回世話人会に参加した。BSAPとはBPSD(認知症に伴う周辺症状)Support Area Projectの略である。自己紹介を拝聴すると、メンバーは脳外科医、内科医、家庭医、精神科医、神経内科医、グループホーム代表など専門領域は様々である。この会はBPSDの診断・治療・啓発活動を推進する医師やチームを育成することを目的として立ち上げたプロジェクトである。そしてこの活動を全道に普及し、地域の精神科の医師とかかりつけ医との連携をできるような関係性を構築することも目的としている。

 会議の中で当教室が関わっているPCLSで情報を発信したいという提案あり。2年間のモデル事業として砂川市立病院が認知症疾患医療センターになる予定だそうだ。三愛病院(登別市)と道央佐藤病院(苫小牧市)が病院群として登録される。地域に偏りがあるようだ。全国で60数か所が登録されている。現在の診療に関する問題点。認知症の指導料は数年前に打ち切られて、労力に比して割りが合わない。紹介できる医療機関がない(専門病院は3-6カ月待ち)。精神科で認知症を専門としている医師が少ない(統合失調症、気分障害を専門にする医師が多い)。在宅で如何にBPSDを起こさせないかが重要。認知症病棟は定額制なので身体合併症のひどい患者さんは精神科では原則受け入れない(肺炎など簡単な疾患は身体合併症加算が取れる)。肺炎予防には口腔清拭が重要。若年認知症の診断、家族支援が問題。医師とグループホームとの連携が重要。精神科に入院すると尊厳が失われるような対応がまだ行われることがある。今後さらに独居老人、老老介護が問題となろう。

 今後の活動方針。認知症について学習したい医師は少なくない。事例を研究するのがよい。各地区の核となる精神科医には関わって欲しい。まずは医師を対象とする。その後にコメディカルへ広げてゆく。かかりつけ医意見書が書けるようにする。どこで専門医に引き継ぐのか理解してもらう。第一回目を旭川市で行う予定。20名の参加を目標とする。医師会の後援を得る。今後は「北海道認知症研究会」として活動を行うことになった。(山本和利)

 

2010年5月21日金曜日

学生実習のまとめ

 5月21日,札幌医科大学総合診療科の必修実習のまとめを行った。勤医協中央病院から臺野先生と川口先生、松前町立松前病院から木村先生、幌加内町立国保病院から森崎先生、それに当教室から山本、寺田が評価者として参加した。
 6名の学生さんは、松前町立松前病院、幌加内町立国保病院、六合温泉センター(群馬県)浮間診療所(東京都)、札幌徳洲会病院、富良野協会病院等で2週間の実習をしてきた。臺野先生の司会で始まった会は、まず実習した施設の紹介をひと回りした後、significant event analysisで取り上げた意義深い事例について報告してもらい討議を重ねた。学生それぞれが大学では経験できない出来事を話してくれ、議論は非常に盛り上がった。
 2時間のまとめが終わって学生さんがミニOSCEをしている間に、評価間で今後の評価のありかたについて意見を出し合った。
 このような時間を共有する中で、当教室の学生実習はたくさんの方々の熱意と努力で維持されているということがよくわかった。この場を借りて関係者の方々にお礼申し上げます。(山本和利)

ニポポ研修現地説明会:留萌市立病院

 「ニポポ」第三期生濱田先生、四期生岸野先生が留萌市立病院に赴任したのに伴い、5月20日にお世話になる病院職員の方々や、指導医の方々に集まっていただき指導・評価に関するオリエンテーションを行った。
 札幌からは深川までJRで1時間。その後病院の車で広く舗装された山間の道をゆくこと50分。つい車の中でウトウトしてしまう。市内に入ったすぐの山裾に築10年のこぎれいな留萌市立病院がある。笹川院長に到着早々院内を案内していただく。
オリエンテーションは富良野協会病院とほぼ同様に進行した。今回は地元の日刊るもい新聞が取材に来てくれた。
 すでに学習契約も確認されており、まだ2ヶ月たたないのに360°フィードバック(医師・看護師・検査技師・事務職員)資料もいただいた。両名とも職員に好評であるという。一部患者さんの中に、総合医・家庭医に対する理解不足から、受け持ちを専門医に換えて欲しいということもあったらしい。総合医・家庭医の必要性を訴え、その浸透を図りたい。
 オリエンテーション終了後、笹川院長の車で市内を案内していただいた。千望台からは市内が一眺できる。るもい健康の駅には様々な健康に関する機具が準備されている。宿泊施設や入院診療もできそうなきれいな建物である衛生学院分院なども案内された。一時は経営危機もあったという留萌市立病院は医師も集まりはじめ、笹川院長のもとで市民の期待に応えようとしている姿勢を目の当たりにすることができた。(山本和利)

FLATランチョン勉強会

5月21日、1,2,3年生の特別推薦学生を対象にランチョンセミナー勉強会を開いた。18名が参加。身体診察その1と題して松前町立松前病院の木村眞司先生が講義と実習指導を行った。
学生への質問と応答。
1.どんな診察があるか?「視診」、「打診」、「聴診」、「触診」
2.圧痛(tenderness)について軽く講義。
3.聴診器の説明。ベル型、膜型。切り替えを確認。イアピースの入れ方。聴診器で自分の気管支音を聴くと大きい、高い音である。肺胞呼吸音は小さくて低い。
4.音叉の説明。額に当ててどちらに強く聞こえるか。乳様突起に当ててみる。
5.ハンマーの説明。膝蓋腱反射・アキレス腱反射を行う。
6.眼底鏡の解説。学生の視神経乳頭を見る。
7.耳鏡の解説。後ろ、上に引っ張る。
8.Vital signs:脈拍数、血圧、体温、呼吸数。脈の測り方。指3本で。正常は60-100/m。
9.血圧の解説。高血圧。血圧が低いと何かが起こっているのかもしれない。用意した血圧計で、学生それぞれが聴診器を用いて測定を行った。まずは木村先生が見本を示す。肘付近で上腕動脈を探す。コロトコフ音(乱流によって)がドンドンと聞こえ始めたところが収縮期血圧値、聞こえなくなったところが拡張期血圧。触診法は橈骨動脈で行う。
 午後の最初の授業で解剖学の口頭試験があるという学生が多く、慌ただしく解散となる。
(山本和利)

臨床疫学大学院

 6月から当講座に、医学哲学に興味を持つ大学院生を迎えることになった。

 定期的にミーティングをしながら一緒に勉強をしてゆきたい。

(山本和利)

 

2010年5月20日木曜日

ニポポ・スキルアップ・セミナー:自殺企図ケースのトリアージ

 5月19日、札幌医科大学においてニポポ・スキルアップ・セミナーが行われた。講師は勤医協中央病院の田村修先生である。年間3万人の自殺者があり、自殺の動機は健康問題、経済問題が多い。4つの類型にすると、1)精神病状態による自殺(幻覚妄想から逃れるため)、2)うつによる自殺(悲観的思考に支配され遂行)、3)衝動的な自殺(一番多い、急激な葛藤、酩酊状態、パラ自殺)、4)倫理・哲学的な自殺(安楽死、自殺幇助)、となる。
 患者を診たとき、身体的評価(身元の確認、自殺手段の確認、バイタルサイン、外傷状況の評価、意識・見当識の確認)、精神医学的をする。治療をする際には、誤嚥性肺炎、低体温、横紋筋融会解症を念頭に置くべきである。最近はあまり胃洗浄は行われないが、炭酸リチウムは活性炭に吸着しにくいので胃洗浄をする。強制利尿はしない。輸液量は脱水の予防・補正程度で十分である。三環系抗鬱薬中毒にメイロンがよい。治療への抵抗が強い場合は、精神科への移送、sedation、家族が来るのを待つ。再自殺リスクの評価が重要である(自殺企図であることの確認、動機の確認、今回の行動に対する患者の評価)
 患者を診察する際にはTALKの原則に則って行う。 Tell(話しかける), Ask(自殺の確認), Listen(傾聴), Keep safe(安全の確保)。
 ここで飛び降り自殺事例による実習を行った。「死のうと思って飛び降りた」と語った患者にどう応答するか。「死のうと思って飛び降りた」を医師が復唱して確認すること。語らない患者の場合、誘導して自殺であることを確認する。拒絶的な態度の場合には希死年慮が持続しており再自殺率が高い。その場合、速やかに家族に面会してもらう。ころころ言うことが変わる場合も要注意。
 パラ自殺とは、明確な自殺目的ではなく繰り返される自傷行為の総称。粛々と対応。かかりつけ医に手紙を持たせる。
 自殺の再発防止のため、死なない約束をする。フレーズ「死にたいくらい辛かったのだ。辛いからといって死なないでください」「あなたの命が生きることを選んだのですよ」。言葉を選ぶ緊張が会場に張り詰める。祈るような気持ちで言えることが大切である。自分の感情に焦点を当てる。患者と適度な距離を保って考える。チームで考える。患者の運に差し戻して祈る。ひとつひとつの言葉の重さを実感する講義であった。(山本和利)

5月の三水会

 5月19日、札幌医科大学において三水会が行われた。参加者は12名。
 今回は大門伸吾医師が司会進行役。ある研修医は、家庭医研修の一環としての研究プランを発表した。病院への受療行動を質的に研究したい。地域診断をして、ヘルス・プロモーションを行い、受診率を上げたい。中高生への健康教育を行うことでその親である35-55歳の住民にアプローチし、なぜ地元の市立病院を受診しないのかを、教職員への教育、PTAへの講演、生徒への教育を介して、情報収集したいと。デルファイ法を用いて各年代にかかわる人たちを抽出し自由に意見を書いてもらう方法も考えている。どのようにしてアンケートをとるかなど問題点が浮き彫りになってきた。
 別の研修医が、脳梗塞、パーキンソン病で経口摂取ができなくなった高齢女性の事例を報告した。胃瘻を増設せずCVポート埋め込みをしたが、今後どのようにしたらよいか。これまでに自宅で老人が食べられなくて死んでゆく場面に出会ったことがない。自宅で介護ができないと病院に置いてもらい、病院の方針に家族は従うしかないということもあるのか。様々な意見が出た。
 肝障害、肺線維症を抱える50歳代女性。医師の伝える病名に納得せず、説明に苦慮する事例。呼吸苦、不眠。過去に家庭内に不幸な事故があった。不信感を一度もたれてしまった患者にどのようにしたらよいのか。
 総合内科の仕事には波がある。全科救急当直の報告。頭部外傷での教訓:「画像より先に止血をしなさい」。肘内障や痛風発作患者を経験。胸が締め付けられる50歳代男性。AMIを疑ったが最終的に大動脈解離と診断された。一段落したところで寿司を食べながら個々の事例を発表し合う。(山本和利)

臨床疫学大学院

 6月から当講座に、学内事情で医学哲学に興味を持つ大学院生を迎えることになった。
 定期的にミーティングをしながら一緒に勉強をしてゆきたい。
(山本和利)

2010年5月17日月曜日

富良野協会病院総合内科

 514日、富良野協会病院で総合内科の外来と病棟の指導に出向いた。院長から北海道プライマリ・ケアネットワークから来ている医師のお陰で入院患者が20名増えたと感謝の言葉をいただいた。外来指導は研修医2名と札幌医大の学生1名の計3名に行った。学生さんには頭痛を主訴にする女性と咳と前胸部痛の女性が当たった。OSCE終了後だけあって、申し分のない態度で医療面接ができていた。

 午後はカンファランスに参加した(6名参加)。糖尿病コントロール不良の高齢の男性。インスリン製剤の使い分け、内服薬との併用の仕方、自己血糖測定の結果を治療法に反映させる方法などを助言した。中年の意識低下、けいれん発作について、多剤の内服が追加になったこと、CPKが明らかに上昇していることなどから薬剤による痙攣と判断し、かかりつけ医に内服調整してもらうよう助言した。

 若い医師たちと臨床の問題をディスカッションするのは楽しい!(山本和利)

2010年5月13日木曜日

特別推薦枠学生課外授業

513日、特別推薦枠学生(3年生)対象に、授業の空きを狙って課外授業(胸部X線の読影)を行った。講師は寺田豊助教が勤め、教材になりそうなレントゲン写真を集めて講義がなされた。学生10名が参加し、内蔵逆位例、片側乳房切除例、気胸例など提示されたレントゲン写真を見ながら和気藹々とした雰囲気で質疑応答が行われた。

特別推薦枠一期生は8名であるが、それを上回る10名が参加してくれたのがうれしい。(山本和利)

研修医通信

 57日、「よりよい研修ライフを応援する 研修医通信」という研修医向け雑誌の取材を受けた。学生時代の思い出、当時思い描いていた将来像、研修医時代の様子や心に残るエピソード、研修医に望むこと、北海道プライマリ・ケアネットワーク(ニポポ・プログラム)の活動、目標などをインタービューされた。30分の予定が2時間ほどになってしまったが、若い頃を思い出し、有意義な時間を過ごすことができた。

 目標は「医師の半数をジェネラリストにすること」と答えたが、大風呂敷と言われるか。

 この内容は研修医通信No.36 20108月号(81日発行)に掲載予定である。(山本和利)

 

2010年5月12日水曜日

イノセント・ゲリラの祝祭

 海堂尊氏が書いたイノセント・ゲリラの祝祭」を読んでみた。これは小説の姿を借りた死後画像診断Ai(エーアイ)を推進するための書物であり、痛烈な厚生労働省批判書でもある。一歩進めて、厚生労働省解体を主張しているようにも読める。ただ厚生労働省に対して不満を常々感じている者には面白いかもしれないが、小説として読むとあまり面白くない。法医学学会と病理学会の利権争いについてもかなり誇張して書かれている。世間では「医療安全調査委員会」創設の議論が紛糾を続けているらしい。法医学サイドからは、異状死死因究明制度の確立を目指す議員連盟が「死因究明医療センター」を構想しているという。

 作家としての自信と病理医として培った経験がここまで過激に書かせるのだろうか。

自分の関連領域である地域医療について、私自身若い頃のような情熱をかけて、新たなシステムを構築するために過激な発言も辞さない覚悟が必要なのではないと考えさせられた。(山本和利)

 

2010年5月11日火曜日

医療と社会

 510日、北海道大学医学部2年生を対象に「医療と社会」という講義を行った。

これは前沢政次元教授から依頼され数年前から行っているものである。

導入はいつもの如く、映画の一場面から入った。

1:洗濯鋏を瞼に挟んでいる二人の少女の写真。さて、どうしてでしょう?

問2:小児悪性腫瘍がフランスの農村で増えているという話を聞いて、さて、あなたが医師ならどうしますか?

問3:家の前にある山のような堆積物の前に立つ少年。これは何でしょう?何をしているところでしょうか?

このような写真を提示して、学生に問いかけた。

 意外と知らない人が多い。

その後、「井戸を掘る医者」中村哲先生の言葉を紹介した。「人生思うようにはならない」、大切なことは「人間として心意気」、必要とされていることをする「何かの巡り合わせ」でする。

開始30分後、「社会学からみた医療」の講義を始めた。映画「ダーウィンの悪夢」を例にして、それぞれが最善を目指した結果、「ミクロ合理性の総和は、マクロ非合理性に帰結する。」「個々にとってよいことの総和は、全体にとって悲惨にある。」と結論づけ、地域医療にも当てはまるのではないか?と学生に問いを投げかけた。

次に、「世界がもし100人の村だったら」(If the world were a village of 100 people)という本を紹介した。その一部は

「もしもあなたが 空爆や襲撃や地雷による殺戮や 武装集団のレイプや拉致に おびえていなければ そうではない20人より 恵まれています」。学生のかなりの者が既に読んでいた。

 ここから、医療の話。

1961年 に White KLによって行われた「 1ヶ月間における16歳以上の住民健康調査」を紹介した。大学で治療を受けるのは1000名中1名である。
 次に、「医療とは」何かを知ってもらうため、ウィリアム・オスラーの言葉を引用した。

「医療とはただの手仕事ではなくアートである。商売ではなく天職である。

すなわち、頭と心を等しく働かさねばならない天職である。

諸君の本来の仕事のうちで最も重要なのは水薬・粉薬を与えることではなく、強者よりも弱者へ、正しい者よりも悪しき者へ、賢い者より愚かな者へ感化を及ぼすことにある。信頼のおける相談相手、・・・

家庭医である諸君のもとへ、父親はその心配ごとを、

母親はその秘めた悲しみを、

娘はその悩みを、

息子はその愚行を携えてやってくるであろう。

諸君の仕事にゆうに三分の一は、専門書以外の範疇に入るものである。」

 

授業はまだまだ続く・・・。

 

 授業を聞いている態度だけで判断すると、眠いのか聞いているのかわからない学生もいるように思えるのだが、学生さんの講義に関する感想文を読むと、皆がそれぞれ感じてくれているとことがあるとわかってうれしくなった。

 2年生のときにこんなに素晴らしい感性を持った学生さんが、卒後に家庭医になる人数が少ないのはどうしてなのだろう?(教育の成果?)

 

問1の答え:

女工哀歌(エレジー)と映画の一場面である。「睡眠不足で瞼が落ちてこないようにするため」。中国の山間の農村に暮らす16歳のジャスミンは、家計を支えるために都会の工場に出稼ぎに出る。彼女の仕事は、欧米諸国へ輸出するジーンズ作りの「糸切り作業」。時給7円という低賃金だが、ほとんど休む間もない忙しさだ。一方、工場長のラム氏は、海外の顧客からコスト削減を迫られていた。きびしい条件の中、納期に間に合わせるために、徹夜の作業が続く。しかし給料の未払いが続き、工員たちの不満はつのっていった…。

問2の答え:

町長が「小学校の給食をすべてオーガニックにするという試み」をした。フランス南部のバルジャック村の約1年を追いかけた映画。ここに登場するのは、風光明媚な村で暮らすごく普通の人々ばかりだが、その一見のどかな風景とは裏腹に、土や水の汚染による病が彼らに静かに忍び寄る。だからこそ食の豊かさを自らの五感で学ぶ子どもらの笑顔が胸にしみる。

問3の答え:

「ゴミの山、まだ使えるゴミを拾って売る仕事をしている」。ドキュメンタリー作家四ノ宮浩監督が、自作の『忘れられた子供たち スカベンジャー』と『神の子たち』で取材したフィリピンのマニラにあるゴミの街"スモーキーマウンテン"を再訪。約20年前から見つめ続けた東洋最大のスラムと呼ばれる同地でかつて出会った人々の現在を追う。世界に厳然と存在する貧困について大きな問いを投げかける1本。

(山本和利)

 

 

 

2010年5月10日月曜日

米寿の祝い

58日、父の米寿のお祝いを父・姉の住む西伊豆で行った(仲田和正先生の働く西伊豆病院は1km以内である)。子供夫婦とその孫・配偶者等10名が北海道や大阪から駆けつけてくれた。耳の遠い父に聞こえているのか気にしながら長男である私がお祝いの言葉を述べた。父のお礼の言葉は思ったより短かった。伊豆の海鮮料理に舌鼓を打ちながら子供時代の話に花が咲いた。弟から話される内容は思いの外忘れていることが多かった。ジフテリアで隔離入院されられたこと、海や山で怪我をしたこと、いつもキャベツ炒めを食べていたこと、カレーの肉がイルカの肉であったことなど、懐かしい。

 父が捕ってきたマムシを干して、それを粉にして元気になるよう毎日飲まされたこと、ニンニクを焼いて食べさせられたことなど、医療人類学的な見地から見ると面白い健康信念に基づいた母親の行動などを思い出した。

 血の繋がった者たちが久しぶりに集まって言葉を交わすことで、私自身リフレックスできた。今回の経験を通じて、患者さんから家族のことを聴くことは医師が考える以上に患者さんにとって重要な意味があるのではないかとあらためて認識させられた。

(山本和利)

 

2010年5月7日金曜日

臨床研究

57日、4年生に臨床研究の講義をした。内容は415日に行った大学院修士課程の「臨床疫学入門」とほぼ同じである。

はじめに科学とは、1)実験、2)理論(二元論、要素還元主義)、3)反証性、が特徴であること、論文捏造、科学社会の構造的問題について軽く触れた。「暮らしの手帖」を例にした科学的な姿勢の解説は学生に好評であった。CASTCardiac Arrhythmia Suppression Trialstudyを通じて、患者中心のアウトカムが重要であること、薬物治療が必ずしも偽薬より優れているとは想定できないことなど、はじめてこの話を聞く学生にはインパクトがあったようだ。

臨床研究のプロトコールの作成法や統計の話、研究のデザイン・バイアスについても言及したが、計算実習がないことが一番よかったという評価が多かった。足し算、引き算、割り算やかけ算が主であり、そんなに難しくないはずなのに。また、感想文の字数や漢字を用いた表現が少なく、ひらがなと誤字が多いことが嘆かわしい!

教養を担当するある教官が、「教養の時間では何よりも日本語をしっかりと勉強してもらうことが重要である」と教務委員会で発言していたが、同感である。(山本和利)

 

医療のこと、もっと知ってほしい

 連休中に読んだ本の紹介をしたい。「医療のこと、もっと知ってほしい」というタイトルの岩波ジュニア新書である。佐久総合病院のことを通じて若者に医療の現状を説明している。ドクターヘリ、地域医療の最前線、なぜ医者になるの?、医療の土台「国民皆保険」の4章からなる。

「地域医療の最前線」の章では私が知っている北澤彰浩先生が出てくる。訪問診療の場面で、患者さんの介護されている部屋の位置や日当たりでその家族の気持ちがわかることや出された食事を食べて味付けや塩分量を推測するなど、現場感覚が散りばめられている。部屋に飾られているモノからその人生を推測し、患者さんや家族と会話をすすめるとよいなど、ナラティブの実践法も参考になる(藤沼康樹先生も同様なことを研修医に言っている)。

「なぜ医者になるの?」の章でフィリピン国立大学医学部レイテ分校(SHS)のことが紹介されている。学生は生まれ育った町や村の推薦を受けて、奨学金をもらいレイテ島に集まってくる。教室の授業と島での仕事を半々に行い、2年間で助産師の資格を得る。さらに勉学を希望する者は看護師養成コース、正規看護師、医師コースへと進んでゆく。長純一先生が「日本の医師教育は病棟診療を重視してきました。現実には多くの職種がチーム医療で対応するのですが、患者さんを多面的にとらえる意味では医師の社会的教育が必要です。コミュニケーション能力を含めて、医師になった早い段階で、日本でも地域に出たほうが社会性は鍛えられます。」と発言している。

 わが国でも奨学金給付による入学制度が全国各地に増えて来ているので、このような制度を日本でも参考にしてほしいものである。本書は、「将来、医療がどのように変わってゆくのか。若い皆さんに未来は託されています。」と結んでいる。(山本和利)

 

医療情報マネジメント(EBMの実践)

 4月30日、幌加内町国保病院の森崎龍郎医師が4年生に「EBMの実践」という講義を行った。幌加内町国保病院の外来の机にコンピューターが置かれていることを紹介して、どこでもインターネットがあれば最新のエビデンスを利用することができることをわかりやすく解説してくれた。

まずEBMの4つのステップを紹介し(Step 1 臨床上の疑問の定式化、Step 2 情報収集、Step 3 情報の批判的吟味、Step 4 自分の患者への適用)、インターネットでの情報収集に関する注意点を述べた。インターネットの情報は何でもありで、ウソの情報も当然混じっている。無責任な情報はもっとたくさんあふれている。ホームページの美しさにだまされてはいけない!「情報の質」を判断するのは受け手側(あ・な・た!)である。情報化社会においては、「情報の質」を見極める力がますます重要!「簡便さ」「情報平等主義」「匿名性」であるため、逆に危険度も大である。まず、運営者を必ずチェックすること。公の機関、専門的な組織、その問題の専門の研究者が運営しているページは比較的信頼できるが、それ以外は、参考程度にのぞくだけにしておくのが無難である。もちろん、「公の機関、専門的な組織、その問題の専門の研究者が運営しているページ」だって疑ってかかる必要がある。

ポイントは「信頼性の高い二次資料を使おう」である。これ以上元をたどれないオリジナルな内容を伝えるものを一次資料という。医学の場合、基礎実験や臨床研究に基づく専門的な研究論文のこと。一次資料に基づいて編集・加工された資料を二次資料という。一次資料を編集・整理したり、その内容を取捨選択し、評価を加えたりしたもの。(さらに教科書のことを「三次資料」と呼ぶ場合もあるようです。)信頼性の高い(アカデミックな)二次資料とは、信頼できる著者が書いていて(もしくは信頼できる出版社から出版されている)、多くの専門家の目を通してあり(独りよがりな論旨になっていない)、一次資料の出典を明らかにしている。その点からいうとUpToDate DynaMed (二ポポ研修医にはiPODが支給されニポポプログラムが使用料金を肩代わり)を推薦したい。

さらに英語が苦手な学生さんのためにインターネット上で使える便利な英語辞書の紹介し、日本語なら「メルクマニュアル」を推薦。American Family PhysicianのHPも便利と紹介。ここで事例を基にここまで紹介した検索エンジンで具体的に検索した結果を提示した。

まとめると、

1)  まずインターネットの検索エンジンで調べる。

2)  (一般向けのものでもよいので)その問題についての概略をまず簡単に理解し俯瞰する。(参考程度に)

3)  専門的な教科書の必要な部分を読む。

4)  さらにUpToDateなどの二次資料を英語で読む。

5)  その内容をもう一度日本語の資料で確認する。

最後に、「山本先生のEBMの講義は難しすぎて付いていけなかった・・・という人は、まずこの本から!(この本は一般向けですので、数式や難しい用語は一切でてきません。)」と言って、名郷直樹先生の「治療をためらうあなたは案外正しい」を推薦して講義を終えた。(山本和利)

 

学生ランチョンセミナー(2)

4月30日、特別推薦枠学生を対象にランチョンセミナーの2回目を行った。寺田豊助教の指導を受けながら、医療面接の教科書の選定をした。その後、3年生のみを対象に胸部X線の読影を行った。学生のモチベーションを下げないように、様々な試みをしていきたい。たくさんの学生の参加を期待する。(山本和利)