札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2013年10月27日日曜日

北海道における家庭医療の実践


 
今年度の「地域医療」の講義第4回目。
 

1025日、手稲家庭医療クリニックの小嶋一先生の講義を拝聴した。講義のタイトルは「北海道における家庭医療の実践である。自分自身のことを話すことを通じて「家庭医療」を伝えたい。

 

まず、自己紹介をされた。東京生まれ。41歳。トライアスロンにはまっている。居酒屋で酔っ払いに囲まれて育った。これまでの道のりを具体的に話された。九州大学卒。沖縄中部病院で研修。実力をつけるため、初期研修は野戦病院のようなところで沢山の患者を診た。この間の担当患者350名。救急患者900名。卒後3年目の離島経験。1500名の島で看護婦と二人。840名を診察。風邪、心肺停止、外傷、精神疾患等。大事にされて居心地がよかった家庭医になって、「何でも屋」であること、「継続性」が重要、「へき地医療に関わる医師のキャリアプラン支援」が必要、「家庭医養成の重要性」に気づいた。米国Family medicine residency2003年、先輩が道筋をつけてくれて米国へ行くことになった。5年間研修した。外来での研修が中心。1年目で150名、2年目は1500名。小児検診、皮膚科、風邪、妊婦健診、成人検診、婦人科検診が多かった。いろいろな患者が来る。薬物中毒、避妊相談。開業を前提とした教育。

 

地域医療・臨床研修の日本の課題に言及。大病院、病棟中心、研修を受けている地域を知らない。

 

Faculty developmentを学んだ。公衆衛生修士として「地域の健康という視点」で、「公衆衛生の方法論」を用いて、「家庭医療の位置づけ」をしっかりとして、「医療・福祉・介護の連携」を模索したい。

 

クリニックで診ているある日の外来患者を紹介。

 

家庭医・家庭医療とは

  幅広く診療する

・人生の始まりは母親が「妊娠を考えた瞬間」:葉酸摂取、妊婦健診、体重管理

・人生の終わりは「患者の死」とは限らない:grief careの大切さ

・診療科・臓器にとらわれない診療

・セッティングに応じたギアの切り替え

  攻める医療

medical ecologyのどこを診るのが家庭医か

・予防医療とヘルスメインテナンス(予防接種、ヘルメットの着用、禁煙指導)

・「病院に来なければ始まらない」とは言わない

  アクセスの良さ(朝、土曜の診察、等)

  複雑な状況に対応+多職種連携

  現場に応じて変幻自在

・足りないものを埋める

・地域への根のおろし方

・困っているところへ人を出す

 

札幌は診療所が少ない。医師一人で4500名を診ることになる。19床の有床クリニック(ホスピス・ケア)で、年間135名の看とりをしている。看取りの際にモニターは付けない。入院してから食事を摂るようになる患者も多い。明るい雰囲気である。内科、小児科、産婦人科を標榜し、家庭医養成と地域づくり。在宅療養支援診療所でもある。医療連携、健康な地域づくり。親子三代で受診する家族もいる。地域医療への貢献も目指す。ここで手稲家庭医療クリニックのある日の外来を紹介。すい臓がん末期、不安障害、妊婦健診(DVのリスクが高い)、4か月小児の予防接種(相談の切っ掛けになる)、11歳児の発熱・咳(喘息の管理・禁煙指導)、喘息の聾唖者(配偶者の死の悲しみ、知らない世界、コミュニケ―ションの難しさ)。

 

「患者が望むこと」はいつもシンプルである。すなわち原因の追及、体調を治してほしい、等。風邪の患者さんを風邪の診療だけで終わらせない。「二歩先を読み、一歩先を照らす」患者さんを助けたい。仕事に誇りを持ちたい。成長し続けたい。

 

ロールモデルやメンター(自分を理解、先を進んでいる、成長を助ける、尊敬に値する)に出会うことが大切。

 

最後にエールを送られた。できることを地域に尽くしてほしい。継続性が大事である。ビジョンが大事。自分のすることを愛してください。「置かれた場所で咲きなさい」世界は変えられなくても自分は変われる。

 

クリニックのミッションは「ひとりひとりの生き方を尊重し、地域の力をあわせ、温かみのある医療とケアを提供する。」である。(山本和利)

 

 

2013年10月22日火曜日

地域医療講演会


 

10/21()18時より本学で地域医療講演会が北海道庁主催で開催された。特別推薦枠学生を中心に学生約25名が参加。講師は広域紋別病院 外科 才川大介先生で「地域勤務と自己実現の両立を目指して」というタイトルであった。才川先生は自治医科大学を平成17年に卒業され、市立札幌病院で臨床研修を受け、市立稚内病院、利尻島国保病院を経て、現在は広域紋別病院に外科医として勤務されている。義務年限中に外科専門医を取得され、積極的に学会発表なども行われている。義務年限というと、地域勤務ということで「田舎」、「学術的活動ができない」などのイメージがどうしても湧いてしまうのだが、自分のやる気さえあれば決してそんなことはないということであった。また「同期の仲間を大切にする」、「スタッフを大切にする」、「郷に入っては郷に従え」、「地域で一番大変なのは家族である」という言葉が非常に印象的であった。

才川先生より学生に対し初期臨床研修の心構え5点。

    たくさんのcommon diseaseを体験しておくこと。

    選択科が決まっても、関連のある診療科を幅広く研修すること。

    専門医取得への道筋を初期の段階から確認すること。

    研修医でもあり社会人1年目でもある。より良い人間関係を築くこと。

    検査・手技・手術経験にこだわらない。

 才川先生より地域勤務での心構え5点。

    理不尽と感じることが必ずある。それを受け入れられる準備を。

    医療者以外の友人を持つことが大切。

    地域で一番大変なのは家族。

    横のつながりを大切に。

    メディカルスタッフを大切に。

 自分も義務年限を果たしたが、色々と共感する部分が多く、学生達にはこの講演会で聴いた話をこの先も覚えておいてほしいと思った。きっといつか、あの時聴いたことだ、と思うときがくるだろう。才川先生、講演、本当にありがとうございました。(助教 武田真一)

2013年10月17日木曜日

10月の三水会



1016日、札幌医大で、ニポポ研修医の振り返りの会が行われた。松浦武志助教が司会進行。後期研修医:1名。他:6名。

 

ある研修医の経験症例。糖尿病の50歳代女性患者でコントロールが悪いが、医療費が払えない女性。頻回にインスリンが打てない。寒い日に階段を登っていて胸が締め付けられた50歳代女性。循環器科に紹介したが、どこまで診療所で経過観察するか?両側肺炎の50歳代男性。マイコプラズマの可能性は?頭痛の70歳代女性にトリプタノールを処方し改善。「糖尿病がどうしたらよくなるかわからない」男性患者。入院すると一時的に改善。

 

研修医から振り返り1題。

 90歳代男性。家族カンファ事例。高齢患者、C型肝炎、慢性腎不全、リウマチ患者のターミナルケア。積極的な肝硬変の治療はしていない。韓国で出生。77歳で肝切除。その後、腎機能悪化。一時的に透析を受ける。心不全で入院したが、自主退院。妻一人で介護。訪問介護は拒否し、月2回の訪問診療を受けている。義歯が合わず訪問歯科診療を導入。入院精査を進めたが、拒否。入院時に嫌な思い出がある。

 方針を変えて、自宅で点滴だけを開始した。ここで多職種カンファを行った。

今後起こりうることとして、肝性昏睡、静脈瘤の破裂、特発性細菌性腹膜炎,乏尿を伝える。悪化時の対応を聞き出すと、自宅で看取りたいと。長男を交えた家族カンファを実施。DNARを希望。穏やかな時は自宅で、急変時は救急車要請、透析は行わず。結局TVを見ていて穏やかに死亡した。検案の結果、「加齢による多臓器不全」であった。その後、妻は長男のところに同居。

 

クリニカル・パール:終末期ケアでは家族コミュニケーションが重要である。面談における注意事項もある。医療者の患者、家族とのシステムに組み込まれていることを自覚すること。

 

今回も家庭医の視点で、終末期ケアについての重要さを発表してくれた。

 

2013年10月5日土曜日

第6回地域医療体験キャンプ:9/28(土)


 体験キャンプ2日目は、留寿都診療所の糸矢所長より「地域で働くということ」と題して講演をして
いただきました。糸矢先生が地域医療を実践するためにどのような研修を行ってきたかなど、具
体的なお話をお伺いすることができました。自分の母校でもある自治医大で研修をされたとのこと
で、自分が学生時代にならった教授や教員がお話の中にでてきてとても懐かしくなりました。現在
は大泉先生とお二人で留寿都診療所に勤務されていますが、「ワークシェアリング」という形式を
とられており、どちらか一人が診療所勤務をしている間はもう一人は別の地域で「地域医療」をさ
れたり「被災地支援」や「国際ボランティア」をされているとのことで非常に興味深い勤務形態でし
た。このような勤務形態が他の地域でも可能であるならば、例えば若い先生が「地域医療」に従事
しながら「専門科研修」を行い最新の専門技術・知識を学ぶということもできます。「ワークシェアリ
ング」という勤務形態に無限の可能性を感じました。
 その後、学生より各班毎に自分達が学んだことを発表してもらいました。
※詳しい発表内容については、9月29日の教授の記事をご参照ください。
学生達は今回、5感で留寿都を知り、色々なことを学んだことが伝わってきました。
  この2日間を通して様々なことを学び、成長したことが実習レポートより伝わってきました。留寿
都診療所の先生方をはじめ住民の方々、役場の皆様、銀河荘の皆様にご協力いただき、本当に
よい地域医療体験キャンプを行うことができ、心より感謝申し上げます。(助教 武田)

第6回地域医療体験キャンプ:9/27(金)


 9/27(金)から留寿都にて第6回地域医療体験キャンプが行われました。
今回は1年生12名、3年生4名、6年生2名の学生18名が参加してくれました。
初日大学に集合し、バスにて留寿都に向かいました。途中、バス内で若林先生による「地域医療
心理チェック~あなたの未来を予言する~」と題して各種エビデンスに基づいた心理チェックを行
いながら、学生全員が地域医療・総合診療の素質があることを楽しく再確認しました。
  到着後はすぐに各班毎に学習契約に基づき、各々調査に向かいました。昼食時には留寿都診
療所の大泉先生が車を出してくださり道の駅などへ連れて行ってくださいました。調査後、公民館
で発表用スライド作成をしながら、自分達が学んだことをまとめてもらいました。
  夜の部では、留寿都診療大泉先生より「国際ボランティアと地域医療」と題してご講演をしてい
ただきました。一見、国際ボランティアと地域医療とは全く違うもののように思いますが、実は「ニ
ーズを探る」、「熱意を持つ」というところで非常に似た部分もありました。また東日本大震災での
被災地での活動など、興味深くお話を伺うことができました。
  その後、留寿都診療所の糸矢先生、大泉先生を囲んで交流会を行いましたが、学生達はお二
人の先生から様々なことを質問し、学んだようです。交流会後も大泉先生の三線にあわせ歌を歌
ったりなど充実した1日を過ごすことができました。(助教 武田))