札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年4月28日水曜日

Leadership for healthcare

 最近読んだ本の紹介をしたい。Jean Hartley & John Beningtonが書いた「Leadership for healthcareThe Policy Press, 2010)」である。指導力を身につける必要を痛感したため、アマゾンから送られた情報を基に購入して読んでみた。これまでの指導力に関する本は系統的ではないので、Warwickという人が推奨する 「6 C framework for thinking about leadership」を基本に書いたそうだ。

1.     Concepts

2.     Characteristics

3.     Contexts

4.     Challenges

5.     Capabilities

6.     Consequences

という6つのことが大切であるということであるが、結局具体的なことはよくわからなかった。リーダーとマネージャーの違いについての記述は参考になった。

Leadership concepts

Managers

leaders

Are transactional

Are transformative

Seek to operate and maintain current systems

Seek to challenge and change systems

Accept given objectives and meanings

Create new visions and meanings

Control and monitor

Empower

Trade on exchange relationships

Seek to inspire and transcend

Have a short-term focus

Have a long-term focus

Focus on detail and procedure

Focus on the strategic big picture

真のリーダーとは、解決法が見えない大きな課題に、長期的な視点をもって自己変容しながら、周囲の力を引き出しながら行動してゆく人物でなければならないということのようだ。(マネージャーは短期的な視点に立って現状を維持するために解決のわかっている方法を駆使して具体的に物事を管理する人物である)。もちろんリーダーにはマネージャーの能力も求められるとは述べられている。

 最後の結論で前述した6Cにもう一つのCが必要でそれはConnectednessと述べている。6Cをうまく結びつける能力を指していると思われる。指導力を伸ばすためには画一的な原理に基づいて行うよりも、「どんなことを、誰のために、いつ、どのような環境で」行うかが重要であるとまとめている。

 はじめに他の著者の本は系統的ではないと批判をして論を進めながら、ご本人の結論もあまり系統的な結論でないような気がする。それだけ指導力を磨くということは難しいということであろうか?!(山本和利)

 

治療効果の指標

 423日の授業では、治療効果の指標について講義した。エビデンスを正確に評価するためには,治療効果の指標を知らなければならない.そこで、いくつかの指標の計算法を示した.

 

D +

D -

Exposure +

a

b

Exposure -

c

d

相対リスク:Relative risk(RR) は治療薬の偽薬に対する比で表の文字を使って表すと(a/a+b/c/c+d)と表される.相対リスク減少率:Relative risk reduction(RRR) 1からRRを引いた値である.表の文字を使って表すと1−{(a/a+b/c/c+d)}である.絶対リスク減少率:Absolute risk reduction(ARR)は両群のリスクの差をとった(c/c+d)−(a/a+b)と表される.従来,臨床上の有用性を示す指標として,主にRRRARRが用いられてきた.現在でも,多くの権威ある医学雑誌の論文ではRRRが用いられている.

しかし,対照と比較した新しい治療法の有用性をRRRで表わすと,たとえば,最終集計時の死亡率が10%対5%も1%対0.5%も,同じように50%と表され,臨床上はわずかな差であっても大きな数字に置き換えられるため,読者に誤解を招きやすい.一方,ARRは純小数で表現されるため,個々の患者に応用しようとする場合に理解しにくい.

それらの欠点を解決するための指標がNumber Needed to Treat (NNT)である.NNTは1をARRで割った値をいう.対照となる治療ないし自然経過に加えて1例の効果を観察するためには,その治療を何人の患者に用いなければならないかという指標に置き換えられたことになる.

相対リスクやRRRはその薬剤の切れ味を表現している。自分の患者さんについて評価するときにはARRNNTを使う方がよい(有病率によって数字が大きく変わってくるからである).そうすることにより,1人の患者を救うためにどれだけの費用と薬が必要なのかがより明確になる.NNTがマイナスのときは対照群より成績が悪いことを示している(Number Needed to Harm (NNH)と言う).

治療法の効果の評価の際には、RRRだけでなくARR,NNTも計算する癖を学生のうちから身につけて欲しい。(山本和利)

 

 

2010年4月26日月曜日

治療するかしないか2つに1つの選択を迫られる状況

 421日の授業では、以下のような状況で考えてもらった.

離島において発症した急性腹痛患者

35歳の男性が4日前に島のパチンコ店開店の準備で離島に来島した.十二指腸潰瘍の既往がある.受診前日まで,深夜まで暴飲暴食を続けていた.深夜,突然,心窩部痛がおこり,病院を受診した.体温は37.5℃.腹部の触診では筋性防御を認める.腫瘤は触知しない.尿は異常なく,白血球数は15,000/mm3で左方移動を伴う.

 当直医である内科医はどうすべきか?

 「診断は十二指腸穿孔であるかどうかに的を絞る.治療は手術をするか,しないかの選択肢のみとする.」と仮定して話しをすすめる.この仮定を以下に図示する.その治療に関わる分岐点の値のことを治療閾値(t)と呼ぶ.今回はこの求め方について考える.

治療閾値

0                t:threshold                             1.0

治療しない

治療する

                       ↑ (0<t<1.0        

 この状況を図示する以下の図のような関係となる。

 

十二指腸潰瘍(DU)の穿孔を疑われた患者

治療する

DUである:U[T+D+]betterな結果)

DUではない:U[T+D-]worseな結果)

治療しない

DUである:U[T-D+]worstな結果)

DUではない:U[T-D-]bestの結果)

             ↑           

            決断       (可能性)

 

 選択分岐点を□で,偶発分岐点は○で表したものを決断分岐図という.確率Pで病気D(十二指腸穿孔)の存在が疑われる患者について治療する選択肢と治療しない選択肢を考える.つぎに,それぞれの選択肢から,さらに病気のある場合と病気のない場合の2つの選択肢が追加される.結果は「治療するか,しないか」と,「病気であるか,ないか」の4つの組み合せとなる.

 これらの4つの最終結果をある価値観に置き換えて数値化したものを効用値(utilityU)という.決断分岐図では□の時点で期待効用値の大きい選択肢を採用するのが原則である.病気があり治療された効用値:U[T+D+]betterな結果)、病気がないのに治療された効用値:U[T+D-]worseな結果)、病気があるのに治療されない効用値:U[T-D+]worstな結果)、病気がなく治療もされない効用値:U[T-D-]bestの結果)と表すことにする。

 治療閾値(t)は治療で得られる利益(Benefits: B)と不利益(Costs: C)の割合によって決まる。まず治療によるBとは病気の場合に治療することによって得られる利益から病気があるのに治療されないときの不利益を差し引いた値BU[T+D+]U[T-D+]と定義される.一方、病気がないときの治療は無駄な費用や医療過誤を引き起こす.それゆえ,治療がもたらすCは病気でないときに治療を控える利益から病気がないのに治療で被る不利益を差し引いた値CU[T-D-]U[T+D-]と定義される。治療する選択肢の期待値と治療をしない選択肢の期待値が等しい確率Pが決断の分岐となるtであり、それを治療閾値と呼ぶ。この式を解くとt= {[best]-[worse]}/{[best]-[worse]+[better]-[worst]}となる。[best]-[worse]benefitsのことであり、[better]-[worst]costsに相当する。よって、BとCとで書き換えるとtC/(C+B) または t=1/[(B/C)+1]と表すことができるのである。

 「B/Cすなわち損失に対する利得の比率が大きければ,病気の確率が低くても治療を選択し、患者への利得が少ない場合はかなり病気の確率が高くないと治療を選択すべきでない」という常識的な答えが導かれる。

 B/Cが半々と想定するとt=0.5となる。B/C9と想定するとt=0.1となる。すなわち手術をすると9倍よいことがあると考えると10%の可能性があれば手術したほうがよいということになる。総合診療にかぎらずこのような基本的な考え方を習得しておくことが医師にとって欠かせないはずだ!(山本和利)

 

 

北海道地域医療研究第1回運営委員会

4月24日、KKRホテル札幌において北海道地域医療研究第1回運営委員会に顧問として参加した。最初に地域の現状分析とこれからの研究会の方向性について議論が交わされた。その中で地域医療の楽しさを謳うことが提案された。2010年度総会・定期研究会は1023日または30日のいずれかで行われる予定。基調講演は「患者の視点を医療に入れてゆく」活動をしているNPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の辻本好子氏の可能性が強い。シンポジウム、ブラッシュアップセミナーも例年通り企画予定。会の終わりに弟子屈クリニックの行木紘一氏より「加藤登紀子コンサート弟子屈」を2010731日(土)に企画していることが報告された。道東の活性化につながって欲しい。

終了後、席を移して前沢元北大教授の退官記念を兼ねた懇親会が行われた。余興として行われたクラシック曲のヴァイオリン演奏が狭い居酒屋に何とも言えない雰囲気を醸し出していた。(山本和利)

 

2010年4月23日金曜日

大学院説明会

 4月23日、札幌医科大学修士大学院生に対して、各大学院のコースについての説明会が行われた。以下の英文のスライドを用いて解説した。

Community and General Medicine

Our Department was established in 1999. Its mission is to make a significant contribution to community medical care in Hokkaido. The Department has two primary goals: one is to produce primary care physicians through sound, systematic, undergraduate and graduate medical education; the other is to promote research on community medical care, general medicine/practice, clinical epidemiology and holistic medicine.

1. Medical student education

As we become more and more actively involved in undergraduate medical education, not only do we find it vital in terms of generating patient-oriented physicians, but also important in terms of research since the methodology of medical education lags behind time and remains to be improved.  We are currently planning to conduct the following research. Qualitative analysis of student education in medical interviewing. Qualitative analysis of student education in physical examination. Research on the role of generalists in medical student education

2. Common diseases/medical problems in primary care

We as generalists encounter common medical problems in our daily practice which are somewhat different from those of the usual population, as our clinic is located in a tertiary care setting. We intend to focus on these common problems and plan on conducting prospective research into their epidemiology, diagnosis, treatment, and natural history.  Currently projects on the following are under protocol development. HeadacheDizziness, Insomnia, and so on.

3. Physical diagnosis

We have a special interest in the characteristics of physical findings in medical diagnosis, i.e., their specificity, sensitivity, positive/negative predictive values, and likelihood ratios. We plan to select important clinical findings encountered in primary care and study their sensitivity and specificity in comparison with the gold standard in diagnosis.

4. Cost-effectiveness analysis

Another of our interests is to study cost-effectiveness in health care, thereby understanding the logic behind important health policy decisions and also possibly contributing to such decision making.

5. Cultural aspects of medicine and medical care

The patient develops illnesses, and the physician and the surgeon diagnose and treat diseases.  What is also important when working as a doctor is to understand the patients' background and culture and not just the disease the patient has. "Narrative-based medicine" is a new and old way of looking at medical care from the patient's perspective through the story that the patient gives.  It departs from the traditional, biological model, and introduces sociological and anthropological methods into medicine. Our goal is to conduct quantitative research in this arena, e.g., on patients' behavior, their understanding of illnesses, and their compliance.Wari Yamamoto

 

 

オッズと尤度比を用いて検査後確率を求める

 414日と21日の授業では、オッズと尤度比を用いて検査後確率を求める計算法を解説した。

ここでは確率をオッズに変換し、三群以上に分類したデータから尤度比を用いて計算する。検査後確率を計算で求めるためには、オッズ(odds )と尤度比に置き換える.覚えるべきことは、検査前オッズ×尤度比=検査後オッズという式である。

患者Aさんの労作性狭心症の検査前確率を50%と想定し、負荷心電図でST1.6mm低下したとする.   

負荷心電図の真陽性率、偽陽性率、尤度比

負荷心電図のST低下

狭窄のある者の%

狭窄のない者の%

尤度比

0.0-0.50mm

14.3

62.5

0.23

0.5-0.99mm

20.8

22.7

0.92

1.0-1.49mm

23.3

11.0

2.1

1.5-1.99mm

8.8

2.1

4.2

2.0-2.49mm

13.3

1.2

11.1

>2.5mm

19.5

0.5

39.0

Aさんの検査前確率は0.5としたので、検査前オッズは0.5(1-0.5)1である.負荷心電図はST部が1.6mm低下したので尤度比は表から4.2であることがわかる。検査後オッズ=検査前オッズ×尤度比なので,1×4.24.2となる.これを確率に直すと検査後オッズ/(1+検査後オッズ)の式に当てはめ,4.2(1+4.2)0.81となる.はじめは50%と考えたが,検査の結果の可能性が81%ということになった.

 これに慣れると暗算できるので便利である。数とこなして是非慣れ親しんで欲しい。(山本和利)

 

4月の三水会

 4月21日、札幌医科大学において三水会が行われ、研修医4名がポートフォリオ発表会をしてくれた。富良野協会病院から卒業生の大門先生、初期研修医の齊藤先生が参加してくれた。

ある研修医は職場が変わってこれまでより時間的な余裕ができて家庭医の勉強ができているという。その研修医が「ラポール形成が艱難であった50歳のパニック障害・喘息患者」を報告した。その事例を契機に、その地区の医療への意識、経済状況を分析してみると、産業は観光、漁業で主体である。自衛隊、公務員が比較的多く、病院職員への風当たりは強いようだ。また専門医志向も強い。アンケートによると地域医療に対して60%が不満を持っているという。30-50代の住民に多い。生活習慣として、塩分摂取が多く(16g/日)、喫煙率が高いことが指摘されている。この後は職場・学校へ出向いての禁煙教育や禁煙外来や地域診断を実施しることを予定していると締めくくった。この事例への他研修医からソーシャル・ワーカーの利用が提案された。農耕民族と狩猟民族とで医療文化も異なるのではないという意見も出た。地域診断の方法として、寺田助教が地区のコアメンバーにアンケートをして集約してゆくデルファイ法を紹介してくれた。

診療所勤務の研修医。1年が終わったが、経営のことをよく言われる。予想より少ない赤字であった。長期勤務していたやり手看護師長が変わった。薬剤師の補充があった。子供の体調不良が続く。町内の病院が1人体制になり、その余波が大変である。このような状況の中で、「肺がんの末期患者を在宅で看取り」について報告してくれた。このような訪問診療件数が増えているが、本人家族は何を望んでいるのか。その際「在宅での輸液は必要か?」という問いが浮かぶという。心の準備に必要ではないか。「非がん患者の緩和ケアはどうあるべきか?」文献検索してみると、訴えの第一位は呼吸困難、第二位は食思不振、第三は位嚥下障害、第四位は喀痰排出困難だそうだ。事例としてはCOPD,心不全が多い。うつ評価をして、抗鬱薬の使用を検討する必要がある。オピオイド使用:6.2%。住宅での死亡13.9%2004年)。節目節目で意思の再確認が必要であろう。最期をどう迎えるか意識調査をすることも重要である。「お家に帰ろうプロジェクト」という企画が紹介された。

整形外科と総合内科にいる研修医。病院と家を往復し、コンビニ弁当で過ごしている。整形外科の診療スタイルは思った以上に身体診察のみが多く、痛み止めでOKといった印象を持った。時間が余ると骨折などを勉強。医学全般をDVDで勉強。家庭医になるために必要なのにこれまでの研修で手薄であった領域を報告してくれた。患者教育、ヘルスプロモ−ション領域が事例不足のため、健康よろず相談、そのための勉強会を企画中。教育、研究、幼児、思春期事例も不足。リハビリテーション、メンタルヘルス、救急も不足気味。手近な目標は内科認定医を取得することに置く。

もう一人の研修医は「胃癌手術を選択した95歳男性」についてどのような選択をすべきであったかを考察してくれた。

最後に、参加者全員に労作性狭心症シナリオについて検査前確率、感度・特異度を用いての検査後確率の計算をしてもらい、医学生とどのくらい違いがあるかの対照群としてのデーター収集に協力してもらった。(山本和利)

 

2010年4月21日水曜日

特別推薦枠学生の歓迎会

4月20日、札幌医科大学島本学長、黒木医学部長、高橋副医学部長から今年度特別推薦枠で入学した1年生12名に励ましの言葉をいただいた。

その後、2,3年生主催による特別推薦学生の歓迎会が大学付近の料理屋で開かれた。33名が参加し、自己紹介をしたりしながら懇親を深めた。

今後は月に1度ランチョンセミナーとして勉強会をしていくことになっている。学生の皆さん、クラブ活動、アルバイト、自動車免許取得だけでなく、勉強も頑張ろう!

(山本和利)

 

 

天国と地獄の違い

4月20日、札幌医科大学全学の1年生を対象に「地域医療に必要なこと」と題して講演をした。自分の経歴を披露した後、「井戸を掘る医者」中村哲さんを紹介した。蝶々が好きで行ったアフガニスタンを、井戸や水路を作ってペシャワールの砂漠を緑で覆われた小麦畑に変えた人である。必要とされていることをする「何かの巡り合わせ」でする、「人生思うようにはならない」、大切なことは「人間として心意気」という中村さんのメッセージを学生に伝えた。

その後、「ダーウィンの悪夢」という映画を紹介した。この映画は、半世紀前のバケツ一杯の肉食魚・ナイルパーチの放流が生態系を急速に破壊。ビクトリア湖周辺に住む貧しい人々を、さらに貧困化させる経済システムを生み出した経緯を赤裸々に描いている。それぞれが最善を目指した結果、すなわち、ミクロ合理性の総和は、マクロ非合理性に帰結する、ということを批判している映画でもある。

ある本にこんな話があった。「天国と地獄の違い」は何か?どちらにも大きな食卓の上にたくさんのご馳走が並んでいる。1メートルもある長い箸がそこにいる者全員の右手にくくりつけられている。天国では皆が相手のことを思い合い穏やかに生活している(自分の箸で相手に食べさせる)。一方、地獄では自分のことだけ考えてイライラしてやせ衰えてゆく。この光景は、現在の地域医療を暗示していないだろうか?自分の2割程度の時間をみんなのために使う気持ちが、地域医療改善への一歩になると思いたい!

講演の後半で「地域で学ぶ」良さ(外来患者のケア、入院診療でみる機会の少ない患者群、病歴・身体診察の重視、包括的・継続的ケア、不確実さのマネージメント、家族や社会資源の活用、チーム医療、実践的マネージメント、地域との関わり)をアピールした。一人でも多くの学生に地域医療について興味を持って欲しい。(山本和利)

 

2010年4月19日月曜日

臨床実習前学生の診断に関する思考は論理的でない

49日、前回の講義内容をどれだけ理解しているかを授業で評価してみた(97名)。

®   47歳男性。労作時の胸焼けで受診した。安静にしたり、ゲップをしたりすると治る。この症状が3ヶ月間続いている。

®   放散痛なし、息切れ、動悸なし

®   安静時には起こらない。

®   食事・食べ物と無関係

®   腎血管狭窄性高血圧でACE-I,βblocker, 利尿剤を内服

®   喫煙者

®   父親が49歳時に心筋梗塞で死亡。母親・3兄弟のうち2名が心筋梗塞

(身体所見:省略)

これについて「労作性狭心症」を想定して以下の表を埋めてもらった。(簡便検査の感度65%,特異度89%とした)

症例

 

検査前確率

 

検査陽性時検査後確率

(直観)

検査陰性時検査後確率

(直観)

検査陽性時検査後確率

(計算で)

検査陰性時検査後確率

(計算で)

最終的な確率

 

その結果、診断に関する学生の問題点がいくつか判明した。

1.     検査前確率を正しく設定できない

・低く設定する

・計算をしない場合、陽性時、陰性時の検査後確率の振れ幅が小さい

2.     計算をしない場合、簡便検査が陽性になったとしても検査後確率を上げない

3.     計算間違い:特異度からみ

4.     検査後確率の計算ができない

5.     画像や心電図の結果を陰性か陽性かに正しく判断できない

6.     折角計算で求めた結果を最終結果としない:勝手に調整する

7.     理解不能な回答

授業の質を上げながら、評価の結果を研究として発表してゆきたい。

 

北海道プライマリ・ケアネットワーク2010年度定期総会

 4月17日、札幌医科大学においてNPO法人北海道プライマリ・ケアネットワークの第15回理事会終了後、31会員が参加して定期総会が行われた。議事を審議する中で参加施設から意見をいただいた。医師不足が深刻化しておりその解決策として、総合内科を立ち上げた話が二三報告された。それに対していくつかの病院からいかに総合内科を立ち上げてゆくかという質問も出された。総合内科を目指す医師をどう確保するかが当面の課題である。学生教育にかかわり、しっかり課題を与えて指導することが重要であることが確認された。初期研修期間中の地域医療研修とうまく連携できないか。NHKで放映が開始された総合診療医Gの話題も出た。スーパードクターに頼らない総合内科研修システムを確立し、その環境作りが大切である、総合診療科の認知度が低いがそれはパイオニアとして克服していかなければいけない、という意見も出た。一方で懇親会など楽しいことを企画する等の意見も出た。

総会終了後、研修医のポートフォリオ発表会が行われた。研修医3名の発表。「脊椎カリエス、呼吸不全、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、肺炎の患者」を生物・心理・社会的モデルで分析し、その結果家族会議を行い在宅ケアにつなげた事例が報告された。患者だけでなく家族も診ていく必要性を参加者全員で共有できた。「他院に入院紹介したのに入院せず帰宅してしまった腎臓結石・急性腎盂腎炎患者」を通じてコミュニケーション、プロフェッショナリズムについて考察してくれた。「食欲不振、全身倦怠感を訴える胃癌術後の高齢男性」についての不条理な選択を迫られた事例を報告してくれた。

席を移して懇親会が行われ、和気藹々とした中で近況報告に花が咲いた。(山本和利)

 

 

2010年4月16日金曜日

特別推薦枠学生ランチョンセミナー

4月16日、札幌医科大学の特別推薦枠学生(23年生)対象にランチョンセミナーを行った。松前町立松前病院長の木村眞司先生の司会で、学生から今後に期待する活動の意見を求めた。月1回を目標に、医療面接(講師:寺田豊助教)や身体診察(講師:木村眞司先生)の学習をすることになった。たくさんの学生の参加を期待したい。(山本和利)

 

臨床疫学入門

4月15日、札幌医科大学大学院修士課程に入学した方を対象に「臨床疫学入門」という講義を行った。参加者は8名、検査技師、獣医師、元新聞社勤務、栄養士、鍼灸師学校講師、美術関係者等、様々な背景をもった人たちである。

はじめに科学とはどういうことかについて宇宙論を例に解説した。1)実験、2)理論(二元論、要素還元主義)、3)反証性、がその特徴である。2005年、韓国のソウル大学ファン・ウソク教授の「ヒトクローン胚を使ってES細胞を作った」という論文捏造につて紹介し、科学社会の構造的問題について軽く触れた。

尾藤誠司先生の持ちネタをお借りして「暮らしの手帖」を例に科学的な姿勢について解説した(電子レンジで調理について)。PICOについて解説し、臨床研究のプロトールの書き方などを紹介した。

P:調理されるもの

E:電子レンジで調理

C:フライパンORなべでの調理

O:焼き目、味、調理時間、調理者の手間、費用

その中で、二十世紀最良の論文と言われるCASTCardiac Arrhythmia Suppression Trialstudyを紹介した。(心筋梗塞は急性期が過ぎてから合併する不整脈が時として致死的となるため、抗不整脈薬が有効であるという理論・予測があり、抗不整脈薬が予防的に投与されていた。しかし、最も有効な薬剤グループを調べるためにランダム化比較試験による臨床実験が行われところ、中間報告で最も死亡率の低いのは薬剤非投与群だったことが判明。安全のために試験の一部が打ちきりとなり、以後は抗不整脈薬が一律に投与されることはなくなった。)

残り時間で、臨床研究のプロトコールに作成法や統計の話、研究のデザイン・バイアスについて言及した。

参加者からは、「講義を受けて論文の必要性がわかった」「今後の研究の展開に有益であった」「スタート時点でこのような講義を聴けてよかった」「「とても面白い講義でした」「PICOを今後の研究生活に活かしてゆこうと思った」「会話調の講義にすっかり引き込まれた」「文系出身者にはとても参考になった」等の意見をいただいた。大学院生の皆さん、論文作成、頑張ってください。(山本和利)

 

 

2010年4月13日火曜日

地域医療合同セミナーI

4月13日、札幌医科大学全学の1年生を対象に「地域医療合同セミナーI」という科目のオリエンテーションを行った。両学部合同で行う選択授業で定員は医学部18名、保健医療学部18名である。一年間にわたっての30時間の授業内容にについて説明が行われた後、利尻島で35年間ウニの研究に携わる高橋延昭先生の講演があった。研究や実践以外にも話がおよび沢内村の医療や日本国憲法第25条等にも言及され、若者に対してどう生きたらよいかについて暖かいメッセージが込められていた。一つの分野に地道に取り組んできた人の言葉は感銘深いものがあった。最後にこの科目に関わる教官が舞台に上がって自己紹介を行った。山本和利と河本一彦助教も挨拶させられた。来週は、山本和利が「地域医療に必要なこと」を講演する予定である。(山本和利)

 

2010年4月12日月曜日

日本プライマリ・ケア連合学会誌編集会議

4月10日、東京の医師会館で開催されたプライマリ・ケア連合学会編集委員会に参加した。小泉俊三編集長より就任に当たっての挨拶があった。質の高い学会誌を作ることを宣言された。引き継ぎ論文については受理された3論文、和文10編、英文3編。投稿論文は原則として原著論文として扱う。英文誌(11巻1号)に8編を掲載予定(年2回発行を目標)である。J−STAGEのJアーカイブでGeneral Medicine10年分の論文を見ることができる。学会誌の正式名は日本プライマリ・ケア連合学会誌:An Official Journal of the Japan Primary Care Associationとなった。著者連絡先にe-mail addressを入れることになった。連載として、インタビュー・ジェネラリスト温故知新、臨床医学の現在(プライマリ・ケア・レビュー)、ジェネラリストに学ぶ診断推論、反省的実践家入門等があがっている。乞うご期待。最後に、広告掲載について今後どうするかで議論があった。(山本和利)

 

 

日本内科学会:日本の内科系専門医制度が進むべき道

49日、東京有楽町で開催された日本内科学会の「日本の内科系専門医制度が進むべき道−総合医のあるべき姿も含めて—」というフォーラムを聴講した。はじめに認定機構の池田康夫先生からわが国の専門医制度の概略があり、2つの論点に立って述べられた:1)医師の地域・診療科の偏在の是正、専門医認定の透明性・公正性の確保(中立的第三者機関が行う)。2)基本領域と専門領域の2段階制にする。問題点:学会が専門医制度を作り認定しているため、基準が不統一であり質が担保されていない。公的なサポートがない。臨床能力本位になっていない。今後、専門医の適正な数を設定し、患者の視点に立つ、プログラムの充実が直近の課題である。

次に福島県立医大の渡辺毅先生が2つの視点(ミクロの視点、マクロの視点)から話された。ミクロの視点:主訴から鑑別診断、決断治療、コンサルテーションに繋げることが総合内科に基本的能力として求められる。Subspecialtyの医師にも総合内科能力は大切である。マクロの視点;疾病構造の変化に対応できること。患者のニーズに対応する必要があるのに、慢性疾患の全身管理をする内科医を目指す者が減っている。さらに総合内科専門医を受験者は半減している。総合内科に限らず専門医(腎臓内科)の数において5倍の地域差がある。地域を基盤とした専門医制度を再構築する必要がある。地域医療連携の要として総合内科専門医を位置づけた。

次に千葉大学の生坂正臣先生が総合内科専門医のキャリアパスと題して、「崩壊する地域病院への処方箋となるか」について分析された。はじめに「総合内科専門医は単にブランド化しているにすぎないのではないか」と核心を突いた問いを投げかけた。地域で内科を標榜する診療科の全身管理能力についての調査を示した。その中で安定した慢性疾患患者の全身管理ができると答えたのはわずか13%であり、ワーファリン、インスリン、HOTに対応可としたものは7%にすぎなかった。日本は英国の専門医制度に近づいている。分化と統合は自然な流れであり、統合も視点を変えれば分化とも言える(例えば家庭医療は診療場所を主に診療所に限定するという分化)。総合内科専門医が生き残るためには、1)成人の慢性疾患全般を診ることができるadult primary care physician、2)総合内科医を現場で育てるclinician educator、3)診断のエキスパートであるambulist、であるとまとめられた。

その後、弁護士の鈴木利広先生が患者の立場で意見を述べ、黒木茂広先生が自治医大卒業生の30年間の活動をまとめられた。その中で「本質的、多面的、長期的に」「切り取らない医療」「社会的視野を持つ」という3点を強調された。

4名のシンポジストが壇上に上がった総合討論の場で、「地域で様々な疾患に対応している忙しい医師が研修条件を満たさないという理由で総合内科専門医を受験できない現状の改善」を要望したところ、会場から大きな拍手が起こった。現場と制度の乖離を窺わせた。

 全体的な印象として、総合内科専門医が単にブランド化しているだけではいけないという企画者の思いが伝わってきた。日本プライマリ・ケア関連学会の専門医制度確立への動きがこのような企画を生んだようでもあり、その意味で巨大な内科学会に日本プライマリ・ケア関連学会を意識させるようになったと考えると、プライマリ・ケアの3学会が統合したことは大きな意味があったと思える。(山本和利)

 

 

2010年4月9日金曜日

Evidence-Based Medicine 診断編1-1


49日、Evidence-Based Medicine 診断編1。その内容を紹介しよう。

はじめに、診断のプロセスについての解説をした。 

4つのパターンが知られている。

1) パターン認識(pattern recognition, Gestalt):効率のよい近道となることが多いが、はじめに間違えると後戻りしにくい欠点がある。「動悸、発汗、体重減少」からバセドウ病を疑い、メルカゾールで治療した。実は亜急性甲状腺炎であった、というようなことがある(亜急性甲状腺炎ははじめ機能亢進でも自然に正常化し一時機能低下となることがある)。

2) 多分岐法(multiple branching method

3) 仮説・演繹法(hypothesis-deductive method

ベテラン医師が用いる方法である。

4) 徹底的検討法(method of exhaustion

病棟でまれな症候を持つ患者などに教科書などを参考にひとつひとつ当ってゆく方法。

胸痛で考えてみよう。命に関わる病気を見逃してはいけない。4 chest pain killer(急性冠症候群、肺塞栓症、解離性大動脈瘤、緊張性気胸)。

1)鑑別診断を挙げる(5つ程度)

2)最も疑わしい疾患の検査前の可能性を設定する

3)治療すべきか,経過観察すべきか決断が下せないとき,検査をする

4)検査の特性を知る

5)検査前確率と検査特性から,検査陽性または陰性時の疾患の確率を計算する

6)まだ,治療すべきか,経過観察すべきか決断が下せないときは次の検査をする

40歳の女性Aは階段を昇った後、左前胸部にしめつけられるような痛みを5分間経験した。その後、立ち止まって休んだら治まったが心臓病ではないかと心配して来院した。

60歳の男性Bも階段を昇った後、左前胸部にしめつけられるような痛みを5分間経験した。その後、立ち止まって休んだら治まったが、やはり心臓病ではないかと心配して来院した。

30才の女性Cは階段昇降時にズキンという10秒間続く左前胸部痛を主訴に来院した。

 どんな疾患を考えるか。

労作性狭心症で考えてみよう。科学的に診断するためには、はじめに、事前(検査前)確率を想定することが大切である。

 一般に医師が診断に用いる推論は患者の年齢,性別,人種,主訴から,ときに身体所見や検査データから初期仮説を形成することから始まる.これは経験的,主観的なものであるため、厳密なものではないが、データを蓄積することによって一般化できることもある

 初期仮説で想定した病気の検査前確率は,病歴と身体所見から推定される.これまでは、「かなり」,「まれ」,「まあまあ」などと表現されていたものを数値、すなわち%や少数、分数で表現するようにする。これによって検査後確率が計算できる。

 学生に想定させるとBさん(病気の可能性の高い場合)を低めに、逆にCさん(病気の可能性の低い場合)を高めに設定する傾向にある。

 データとしては以下のようなものがある。

Diamond GA, et.al. Analysis of probability as an aid in the clinical diagnosis of coronary artery disease. N Engl J Med. 1979; 300:1350-8. 多数の研究結果を集め、剖検23,996例と胸痛を持ち冠動脈造影検査(CAG)が施行された4,952例についての検討したsystematic reviewである。至適基準は2つあり、無症状患者は剖検、有症状の患者はCAGである。剖検23,996例の冠動脈疾患有病率は4.5%であり、胸痛患者の割合は非狭心痛が20%、非典型狭心痛が39%、典型的狭心痛が51%である。高度医療を担当する病院のデータと思われる。)

3つの質問を行い、その該当数と年齢、性別から検査前の確率を想定した。

Q1.前胸部に締めつけられる痛みがあるか?

Q2.運動で誘発されるか?

Q3.安静(亜硝酸剤)で治まるか?

これからゆくと、Aさんは55.2%、Bさんは94.3%、Cさんは0.3%となる。

 大部分の学生はなんでこんな訳のわからないことをさせるのだ、という顔をしている。ここまでが前半の30分。(山本和利)

Evidence-Based Medicine 診断編1-2

 後半に突入。

2×2表を書いて検査後確率を計算しよう。

 検査の結果(横に)と真の診断の結果(縦に)である4種類の組み合わせを表現した図である。

 

至適基準

あり

なし

検査

陽性

TP(真陽性数:●)

FP(偽陽性数:▲)

陰性

FN(偽陰性数:■)

TN(真陰性数:◆)

 

科学的な考え方。Bayesの定理

  18世紀に英国人Bayes Tが考えたもので「はじめに考えた可能性」に「あとから得られた情報」を加味すると「あとで考える可能性」が得られるというものである。診療の場面では(検査前確率)を想定して、検査の(感度・特異度)を用いて計算すると(検査後確率)が得られる、となる。

 検査結果が陽性であれば即診断確定というわけにはいかず、表3-1でいうと、検査が陽性の場合の検査後確率=●÷(●+▲)であり、検査が陰性の場合の検査後確率=■÷(■+◆)である。

感度=●÷(●+■)=TP/(TP+FP)と表される。感度を知るためには、表を縦みることがポイントである。

特異度=◆÷(▲+◆)=TN/(FP+TN)と表される。特異度を知るためには、感度と同様に表を縦にみることがポイントである。

 

Aさんは50%、Bさんは 90% 、Cさんは0.5% とした(読者が計算しやすい数字とした)。A,B,Cの3人全員,負荷心電図でST1.6mm低下したとする.   

 

負荷心電図ST低下>1.5mmをカット・オフ値としたときの割合

負荷心電図のST低下

狭窄のある者の%

狭窄のない者の%

>1.5mm

40

4

0.0-1.50mm

60

96

その結果、負荷心電図ST低下>1.5mmをカット・オフ値としたときの感度は40%、特異度は96%である。

2×2表による計算

Aさん:50%

 

冠動脈狭窄

 

検査後確率

あり

なし

負荷心電図

陽性(>1.50mm

200

20

200/220=0.91

陰性(0.0-1.50mm

300

480

300/780=0.38

 

500

500

1000

 

Bさん:90%

 

冠動脈狭窄

 

検査後確率

あり

なし

負荷心電図

陽性(>1.50mm

360

4

360/364=0.99

陰性(0.0-1.50mm

540

96

540/636=0.85

 

900

100

1000

 

Cさん:0.5%

 

冠動脈狭窄

 

検査後確率

あり

なし

負荷心電図

陽性(>1.50mm

2

39.8

2/40.8=0.05

陰性(0.0-1.50mm

3

955.2

3/958.2=0.003

 

5

995

1000

 Aさんの負荷心電図でSTが1.6mm低下したときの検査後確率は91% であり、1.5mm以下であった場合には38%となる。同様に求めるとBさんでは99% 85%、Cさんでは5% 0.3%となる。このように検査結果が同じであっても検査後確率は異なることが学生さんにも実感できたようだ。検査前確率を決定する問診、身体所見の重要性を再認識してくれた。

 

 診断しようとする疾患の検査前確率がCさんのようにかなり低いとき又はBさんのように高いときには、検査後確率の変動が少ないので、診断のためにあえて検査をする必要はない。また、検査前確率が高いときには、陰性結果であってもまだかなり検査後確率は高いことが多く(Bの場合は85%)、陰性結果のみで最終診断とすると偽陰性という誤診になりかねない。検査前確率が低いときには、陽性結果が得られても(Cの場合5%)、偽陽性の可能性の方が強く残る。当然であるが、精査すべきなのは、Aさんのように疾患があるかないかはっきりしない場合である。

検査前確率の応用:診療の場

 病気かどうかわからない人が集まる市中病院(A)、病気の人がたくさん紹介されてくる大学病院(B)、病気の人が少ない人間ドックや検診(C)に置き換えて考える.

 大学病院では検査前確率が高いので、結果が陽性の時に病気と診断しても間違うことは少ない。一方、大学病院と同じ方法を用いて、診療所や検診の現場で実施すると、たとえ結果が陽性であっても偽陽性の可能性が高いということである。

 すなわち、診断過程はどのような患者層を診ているかによって違って然るべきであると言えよう。

検査前確率の応用:検査前確率の間違った設定

 ある患者について、大部分の医師が想定する検査前確率とはかけ離れた検査前確率を想定する医師は、確定または除外診断に至るまでに、さらに高額で危険な検査を追加するはめになる。そうならないためには、しっかり問診をし、身体所見をとって検査前確率を適切に想定できるようになって欲しい。(山本和利)