札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年4月23日金曜日

4月の三水会

 4月21日、札幌医科大学において三水会が行われ、研修医4名がポートフォリオ発表会をしてくれた。富良野協会病院から卒業生の大門先生、初期研修医の齊藤先生が参加してくれた。

ある研修医は職場が変わってこれまでより時間的な余裕ができて家庭医の勉強ができているという。その研修医が「ラポール形成が艱難であった50歳のパニック障害・喘息患者」を報告した。その事例を契機に、その地区の医療への意識、経済状況を分析してみると、産業は観光、漁業で主体である。自衛隊、公務員が比較的多く、病院職員への風当たりは強いようだ。また専門医志向も強い。アンケートによると地域医療に対して60%が不満を持っているという。30-50代の住民に多い。生活習慣として、塩分摂取が多く(16g/日)、喫煙率が高いことが指摘されている。この後は職場・学校へ出向いての禁煙教育や禁煙外来や地域診断を実施しることを予定していると締めくくった。この事例への他研修医からソーシャル・ワーカーの利用が提案された。農耕民族と狩猟民族とで医療文化も異なるのではないという意見も出た。地域診断の方法として、寺田助教が地区のコアメンバーにアンケートをして集約してゆくデルファイ法を紹介してくれた。

診療所勤務の研修医。1年が終わったが、経営のことをよく言われる。予想より少ない赤字であった。長期勤務していたやり手看護師長が変わった。薬剤師の補充があった。子供の体調不良が続く。町内の病院が1人体制になり、その余波が大変である。このような状況の中で、「肺がんの末期患者を在宅で看取り」について報告してくれた。このような訪問診療件数が増えているが、本人家族は何を望んでいるのか。その際「在宅での輸液は必要か?」という問いが浮かぶという。心の準備に必要ではないか。「非がん患者の緩和ケアはどうあるべきか?」文献検索してみると、訴えの第一位は呼吸困難、第二位は食思不振、第三は位嚥下障害、第四位は喀痰排出困難だそうだ。事例としてはCOPD,心不全が多い。うつ評価をして、抗鬱薬の使用を検討する必要がある。オピオイド使用:6.2%。住宅での死亡13.9%2004年)。節目節目で意思の再確認が必要であろう。最期をどう迎えるか意識調査をすることも重要である。「お家に帰ろうプロジェクト」という企画が紹介された。

整形外科と総合内科にいる研修医。病院と家を往復し、コンビニ弁当で過ごしている。整形外科の診療スタイルは思った以上に身体診察のみが多く、痛み止めでOKといった印象を持った。時間が余ると骨折などを勉強。医学全般をDVDで勉強。家庭医になるために必要なのにこれまでの研修で手薄であった領域を報告してくれた。患者教育、ヘルスプロモ−ション領域が事例不足のため、健康よろず相談、そのための勉強会を企画中。教育、研究、幼児、思春期事例も不足。リハビリテーション、メンタルヘルス、救急も不足気味。手近な目標は内科認定医を取得することに置く。

もう一人の研修医は「胃癌手術を選択した95歳男性」についてどのような選択をすべきであったかを考察してくれた。

最後に、参加者全員に労作性狭心症シナリオについて検査前確率、感度・特異度を用いての検査後確率の計算をしてもらい、医学生とどのくらい違いがあるかの対照群としてのデーター収集に協力してもらった。(山本和利)