札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年4月21日水曜日

天国と地獄の違い

4月20日、札幌医科大学全学の1年生を対象に「地域医療に必要なこと」と題して講演をした。自分の経歴を披露した後、「井戸を掘る医者」中村哲さんを紹介した。蝶々が好きで行ったアフガニスタンを、井戸や水路を作ってペシャワールの砂漠を緑で覆われた小麦畑に変えた人である。必要とされていることをする「何かの巡り合わせ」でする、「人生思うようにはならない」、大切なことは「人間として心意気」という中村さんのメッセージを学生に伝えた。

その後、「ダーウィンの悪夢」という映画を紹介した。この映画は、半世紀前のバケツ一杯の肉食魚・ナイルパーチの放流が生態系を急速に破壊。ビクトリア湖周辺に住む貧しい人々を、さらに貧困化させる経済システムを生み出した経緯を赤裸々に描いている。それぞれが最善を目指した結果、すなわち、ミクロ合理性の総和は、マクロ非合理性に帰結する、ということを批判している映画でもある。

ある本にこんな話があった。「天国と地獄の違い」は何か?どちらにも大きな食卓の上にたくさんのご馳走が並んでいる。1メートルもある長い箸がそこにいる者全員の右手にくくりつけられている。天国では皆が相手のことを思い合い穏やかに生活している(自分の箸で相手に食べさせる)。一方、地獄では自分のことだけ考えてイライラしてやせ衰えてゆく。この光景は、現在の地域医療を暗示していないだろうか?自分の2割程度の時間をみんなのために使う気持ちが、地域医療改善への一歩になると思いたい!

講演の後半で「地域で学ぶ」良さ(外来患者のケア、入院診療でみる機会の少ない患者群、病歴・身体診察の重視、包括的・継続的ケア、不確実さのマネージメント、家族や社会資源の活用、チーム医療、実践的マネージメント、地域との関わり)をアピールした。一人でも多くの学生に地域医療について興味を持って欲しい。(山本和利)