札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2014年6月10日火曜日

病院における総合診療




6日、勤医協中央病院総合診療・家庭医療・医学教育センターの臺野巧先生の講義を拝聴した。はじめに、病院は新築移転したことの報告。

用語の整理。

2017年以降は総合診療専門医、内科専門医に統合されてゆく。

講義では極力総合診療医を使う。

・家庭医(診療所中心)

・病院総合医(病院中心)

 

「プライマリケアという言葉は、「サービス」を合わらす言葉である。

臓器専門医と総合診療医のどちらになりたいか、を問うた。総合診療意を目指す人が昨年より増えた印象。

 

その後、自己紹介をされ、臓器別専門医(脳外科医)から総合医への転身された経緯を話された。スケート部で東医体三連覇、学園祭実行委員長、POPS研究会で活躍。学生会を創設し、寮生活の改善活動をしたとのこと。

 

脳外科時代(10年半)は、臨時手術、当直業務、緊急呼び出しが主な業務。充実していたが、年をとると大変と感じていた。同窓会にゆくと他の専門医となった医師も同じ悩みを持っていることがわかった。専門以外の知識がないため全科当直が非常にストレスだった。CTMRIで異常がないと薬だけ出して終わり。めまいの患者ではDPPVが一番多いが、脳外科はそれに対応できない(デップス・ホールパイプ法、エプリー法が有効)。頭痛の99%に異常はない。NSAIDsで薬剤誘発性頭痛を作っている。うつ病も見逃すことが多い。外来教育が皆無であった。受けた教育が偏っていることを痛感した。そんなとき、『家庭医・プライマリケア医入門』という本に出会った。総合医とは総合する専門医なのだということがわかった。

 

札幌医大の総合診療科で総合医としての基礎づくりをした(病歴聴取、身体診察など)。学生さんとの学習会:EBM。勤医協へ赴任してから教育の重要性に気付いた。またそこでジェネラリストが必要とされているということへの驚きと健全なスペシャリズムのあることを知った。

 

教育の重要性を知った。

ジェネラリストが必要とされていることへの驚き

今やっていること

・総合診療

・医学教育

・日本PC連合学会

総合診療医と臓器専門医のメリット・デメリットを提示。

 

妊娠・出産を経て家庭医の研修をしている研修医の先生からの話。

子どもをオンブしながら講義をされた。2008年卒。医師になって身近な人の助けになりたい。学生結婚。2児を出産し、来年度家庭医専門医を受験する予定。当直、時間外勤務なし。外来、往診のみ。時短勤務で正職員。時間外の学習会にも子連れで参加。

学生へのメッセージ。生活者としてのどんな体験も無駄にならない。学生のときにしかできない様々な人との出会いを大切に。新しい諦めない選択を。

 

臓器別専門医と総合診療医と何が違うと思うか?

19番目の基本領域に総合診療医が入った。

 

 

総合診療の特徴。

・幅広く、急性も慢性も。予防。地域で。

・基本領域+subspeciality領域+スペシャルインテレスト。

         一次+二次を総合診療医、三次を専門医が理想。

ある日の入院患者を提示。様々な疾患が含まれている。

 

今後取り組むこと。救急外walk in 患者のトリアージ、地域の健康増進、入院日数の最適化。医療安全。

 

生物・心理・社会モデルの紹介。総合診療医で重要度、優先度の高さを判断して取り組む。小さな力で大きな作用を発揮するポイントにアプローチする。システムモデルをつかう。

 

・ニーズ主義。

総合診療は徹底したニーズ主義である。

 

総合診療医は日常疾患のエキスパート。深くたくさん勉強する(広く浅くではない)。

TOP50 の問題で、地域の全問題の8割を占める。

病棟:誤嚥性肺炎。

 

・健康増進

・家族ケア、統合ケア

・ライフサイクル・アプローチ

・システム構築

 

音羽病院院長の弁

病院総合医を大量生産する。総合医7名を送ったら救急応需率が上昇し、黒字化した。

札幌でも同じことが起こっている。

コストだけでなく、予後を改善させる。

総合診療医によって成功しているモデルケースが増えている。

病院長は気づいている。

国も気づいている。

総合診療医養成協議会が道庁主催で発足した。

社会保険グループも気づいている。

米国も気づいている。

 

若い学生へ。

総合診療医を目指してほしい。

総合的な基盤をもった専門医に。

両者の協力が重要。

現在、総合診療医のロールモデルは着実に増えている。

 

日本の研究医レベルは米国に比較して低い。ハワイ大学外科町淳二先生の言葉を引用。「日本の医師は、できれば最初の5年間くらいはgeneral physicianとしてのトレーニングを積むべきだ」

 

general physicianになるには、初期研修が重要である。ジェネラルマインドが大事。ローテーションをしただけでは身に着かない。本幹なき枝葉末節教育になっていないか。よい研修とは、病歴と身体診察を重視した研修医向けカンファランスをやっていること。研修目標が明確であること。うまくいっている病院とは、大学の派遣を受けていない、ジェネラルマインドをもっている、教育に力を入れている病院である。臓器専門医と総合診療医が協力することが大事。

 

勤医協中央病院の新しい取り組みを紹介。研修医に合った振り返りカンファランスが重要である。評価、フィードバックをする。屋根瓦式研修医教育やMini-CEX,プロフェッショナリズム教育、ヒアリハットカンファランス、等。

 

総合診療を理解するのに有益な講義であった。子育てをしながら家庭医研修をしている医師からのメッセージが学生には大変新鮮であったようだ。山本和利)

 

 

2014年6月3日火曜日

地域/へき地でのcommon diseases

講師は木村眞司先生

 まずは自己紹介。徳州会病院を経て米国家庭医科、老年科を研修。

松前の紹介。100床。へき地医療をしたかった。ジェネラリストを志す人を増やし、育成すること。我が国の医療レベルの向上。

 

映画の話。「世界の果ての通学路」がお勧め。

 

鳥の写真を出して、名前を当てる。「ニュウナイスズメ」「イエスズメ」

 

英語でプレゼンテーション。

68歳男性。「最近、鼻血がでるんです。」最も頻度が高いのはアレルギー性鼻炎。

 

38歳女性。「右肘外側が傷む」テニス肘(外側上課炎)

 

76歳男性。「3ヶ月前からお腹がごろごろする。疲れる。ふらふらする。具合いが悪い」「ありとあらゆる検査をしたが異常がない」→「うつ病」

Common things are common.

 

83歳男性。「足の親指が痛む」痛風

 

80歳代女性。「目が赤い」急性緑内障発作(狭隅角緑内障)

 

52歳女性。「右の人差指のPIP関節が痛いんです」→「リウマチ」「変形性関節症」

PIP関節はどちらの疾患も痛む。

 

13歳男児。「膝が出っ張って痛む」→「Osgood-Schlatter 病」

 

59歳女性。「朝起きたら結膜が真っ赤になっていた」結膜下出血・

 

35歳女性。「息苦しい、人混みが怖い」→「パニック障害」

身体と精神はつながっている。

 

75歳女性。「1週間前から足が腫れるんです」→「うっ血性心不全、腎不全、肝硬変、静脈のうっ滞、薬の副作用」

 

75歳男性。「肩が上がらないんです」→肩関節腱板炎

 

69歳女性。「足が攣るんです。漢方薬を下さい。」→「運動、アルコール摂取による脱水」「カルシウム拮抗薬服薬」

 

96歳男性「発熱、顔面発赤」丹毒。(溶連菌)

 

35歳女性。「毎日頭が痛いんです。」→「緊張性頭痛」「薬剤誘発性頭痛」「片頭痛」

 

78歳女性。「歩くと息が切れる」「夜寝ると、息苦しくて目が覚める」心不全、喘息、COPD

 

80歳女性。「義歯。口や舌が痛む。白苔あり。」→「口腔内カンジダ症」

 

33歳女性。「頭が痛くて時々寝込む。吐くこともあります」→「片頭痛」

 

60歳男性。「この1か月、咳とくしゃみが続くんです」→「アレルギー性鼻炎(後鼻漏)」

 

80歳女性。「耳の後ろがジクジクする」脂漏性湿疹。

 

75歳男性・「尿の切れが悪い」BPH

 

54歳女性。「どこも具合が悪くはないが、痩せてきた」→「糖尿病」「甲状腺機能低下症」「がん」

 

60歳男性。夜間10時に受診。「1時間前からすごくみずおちが痛いんです」→「胆嚢炎、胆石発作」も鑑別診断に入れる。

 

28歳女性。「23年前から味がわからないんです」→「アレルギー性鼻炎」

 

58歳男性。「ラーメン食べると鼻水が出るんです」→「血管運動性鼻炎」

 

17歳女性。「交通事故の2日後。ベッドから起き上がったらくるくる回るんです」→「DPPV

 

85歳男性。「最近。前かがみになってよく転ぶんです」→「パーキンソン病」

 

80歳代男性。「足が赤紫になる」ASO

 

80歳女性。「乳の下がただれる」→「カンジダ間擦疹」

 

77歳女性。「ときどきドキドキするんです」→「不整脈」「不安神経症」「パニック発作」

80歳女性「物忘れ、物を盗まれる」アルツハイマー病。

 

患者さんは病名をもって病院に来ない。こういうよくある健康問題に対処できるようになりたいものです。

 

PCLSの紹介。

院外活動の紹介。

 

松前で待っています、という言葉で締めくくった(山本和利)