札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2013年4月30日火曜日

研修発表会


427日 北海道プライマリケアネットワーク 研修発表会。

本日はNPO法人北海道プライマリケアネットワークの通常総会が「かでる27」の会議室で開かれた。その中で、現在当法人の後期研修医として研修中の研修医の昨年度1年間の研修発表会が開かれた。

これまでの1年間で経験した症例の概略の発表では、几帳面に症例数を記録しているさまが見て取れた。後期研修ともなると、大方の研修医は日常診療が「研修」というより「業務」となり、右から左へと「流れ」ていきがちとなる。そんな中でも「経験症例」として、記録を残しているさまは丁寧に研修を行っている証といえるだろう。

市内でも有数の救急病院で研修しただけあり、その経験症例数はかなりの数になる。それも、内科ではなく、他科での研修ということで、分野も多岐にわたり、まさに「ほとんどの病気を経験している」感じである。こうした研修ができるのも当法人の特徴といえるだろう。

続いて、最も印象に残った症例の振り返りの発表である。

症例は小児の自殺未遂である。

この症例は研修医にとっては相当印象に残った症例のようで、昨年度の研修中も何度か相談を受けた症例であった。

救急病院では自殺企図の患者さんは「救命」のみ行って、その後の診療は精神科でお任せするという流れ作業のようになることが多い。実際研修医本人もいままではそのように思っていたようであるが、この症例をきっかけに、患者の心理的な背景や家族構成・学校などの社会的な背景にも思いをはせることができたようである。また、この症例のように、「自殺未遂」という形で何らかの表舞台に出たものはほんの「氷山の一角」であり、その海面下には、いつ表舞台に出てもおかしくない状態の「前患者」が多数いるのではないか?という気付きが生まれたようだ。

一つの症例から、時間をかけて、多方面にわたる振り返りを行えるのも当法人の教育の特徴である。会場からは経験豊富な小児科医や、地域医療の最前線の現場の学校医からの適切なフィードバックもあり、学び深い研修発表会となった。

現在、当法人の後記研修医は1名しか在籍していないが、今後、われわれと志を同じくする若手がどんどん増えてくることを願ってやまない。 (松浦武志)

 

 

「プレゼンテーション技法」と「ファシリテーション技法」


418日・25日と医学部1年生に医学史の講義を行った。医学の歴史を通して、先人の功績を学ぶのであるが、この講義にはもう一つ目的がある。

教員が学生に一方的に講義をするのではなく、学生が各テーマについて調べて発表する形式としている。また、発表だけでなく、発表内容についての質疑応答のセッションや討論のセッションも当日の発表ではない学生に担当させて、講義時間そのものすべてを学生に運営させるようにしている。

これまで受験勉強一辺倒で、学習机に向かうことが多かった学生諸君にとって、知識を外に向かってアウトプットするという経験はかなり面食らうようである。

この授業に必要なスキルとして、「プレゼンテーション技法」と「ファシリテーション技法」について、授業の冒頭2コマを使用して紹介することにしている。

まずは、プレゼンテーション技法であるが、細かな技術について解説するのではなく、「プレゼンが上手だ」と感じる人を何人かピックアップしてもらい、その人たちに共通するものは何か?を考えてもらった。

いろいろな意見が出たが、一番大切なこととして、「何かを伝えたい情熱」であると強調した。情熱に満ちたプレゼンテーションは魅力的である。昨年亡くなったスティーブ・ジョブズの例をもとに、いかに情熱が大切かを「情熱を持って」伝えた。

その後、プレゼンに必要な基本的な技術として、「スライドではなく、ストーリーを考える」「70文字以内で魅力的なタイトルをつける」「発表のための原稿は捨てる」「魔法の3のルールを活用する」という4つのルールを、実例をもとに解説して、「まずはこの4つのルールを守ることから始める」と教えた。

講義の最後30分を使用して、「いま最も興味があって、情熱を持って取り組んでいることについて、情熱を持って、3分でプレゼン」を隣同士で行ってもらった。

紙に書いたスライドを工夫し、身振り手振りを交えながら、教室内が騒然となるほどの熱気で発表していた。そう、プレゼンがうまくなるためにはその情熱が大切なのだ。

今後の授業では、歴史上の医学の重要自分について発表してもらうが、まずは発表者がその人物について感動しなければならない。その感動を、情熱をもって他の学生に伝える。基本はそこなのである。

続いて、翌週に、ファシリテーション技術についての講義を行った。案の定、「ファシリテーション」という概念そのものを知らない学生がほとんどであった。その意味するところは?「司会者」や「リーダー」とどこが違うのか?今後の医師人生でどのように必要となっていくのか?など、一つ一つ実例を交えながら説明していった。

一人の患者さんに最良の医療を提供するためには、医師がリーダーとなり、薬剤師・看護師・ソーシャルワーカー・リハビリ技師・福祉関係者・患者家族といった、様々な人々から、様々な意見を「引き出し」て実現可能なプランに「まとめて」、医療チームとして実際に「実行する」ことが必要である。この一連の過程を、関係者の対立を最小限にそしてスムーズに進行・援助する技術がこの「ファシリテーション技術」なのだ。実際医師となれば、この技術があるかないかでは一人の患者さんの人生に大きな差が出てしまうことだろう。医師になるのであれば、必須の技術といえる。しかし、これまでちゃんとした教育があったとは言い難い。学生の間での認知度の低さにもそれは如実に表れているといえよう。

新しい概念を教えるのは難しい。どうしても時間がかかるし、説明は難しく抽象的になりがちだ。午後の昼食後最初の授業ということもあり、どうしても眠気に襲われる。

学生に問いかけたり、発表させたり、レポートを書きながら進めたりとあの手この手で眠らせないように工夫して授業を進める。実は、この眠らせることなく、学生諸君の意見を引き出して、一つのレポートをまとめられるようにしていく過程そのものが「ファシリテーション技術」なのだが、学生諸君は目の前で実践されているファシリテーションを実感しているだろうか?

授業の最後30分を利用して、前回同様実習をしてもらった。

学生を5-6人ほどのグループに分け、「飛行機内でドクターコールがあったとき、医師ではない医学生の皆さんはどう行動するか?」をテーマにファシリテーターを一人指名して、グループとしての行動をまとめてもらった。今回は全員にファシリテーターを経験してもらうことはできなかったが、ファシリテーションしやすい意見の言い方も授業内では教えている。それを駆使してグループ内で活発な議論が行われたようだ。

プレゼンテーションがうまくなるには練習するしかない。

ファシリテーションがうまくなるには経験するしかない。

今後半年かけて進めていく授業の中で少しでも練習・経験してさらなる高みを目指してほしい。(助教 松浦武志)

2013年4月15日月曜日

肺炎の克服


日本内科学会総会・講演会で長崎大学 河野茂教授の講演を拝聴した。

100年前、インフルエンザにかかると2次性肺炎で、若者がたくさん死亡した。

現在の問題点
 
肺炎死亡率の増加

病態の複雑化

抗菌薬

・耐性菌

・院内感染

鳥インフルエンザ:人に感性しやすい43名中、11名が死亡。

 

肺炎の克服を目指して

ラム染色、純粋培養には欠点が多い。

タンパク質解析:MALDI-TOF MS

・経済性、迅速性

遺伝子学的手法

・キノロン耐性決定領域の検出

・重症化するメディエーターの解析:HMGB1

 

新しい治療法の開発

・細菌の病原性抑制:Quorum SensingAiimによる緑膿菌病原性発現の抑制

・免疫力の活性:抗菌ペプチド:各種デフェンンシンの抗菌活性

・プロバイオティックスによる感冒はあ章の予防:40%減少させる

 乳酸菌(b240):腸内細菌層が重要

De-escalationで肺炎の予後を改善する

 
マクロライド誘導体EM900

・肺炎球菌の鼻咽腔への定着の低下をもたらす

・マクロファージ遊走を促進

 

肺炎死亡の96%が高齢者である。

経口摂取付加、寝たきりの者が多い。

「老人の肺炎は。安らかな死に誘う、老人の友である」とウイリアム・オスラーが述べている。

終末期肺炎治療には倫理的配慮が重要である。ガイドラインも変わりつつある。

院内感染制御が重要である。

蓄尿による感性であった。手指清潔の重要性

行政へのアピール

5疾病6疾患は肺炎にも当てはまる。(山本和利)

 

 

 

多発性硬化症と視神経脊髄炎


日本内科学会総会・講演会で東北大学 藤原一男教授の講演を拝聴した。

 

多発性硬化症(MS)の標的:ミエリン

視神経脊髄炎(NMO)の標的:アストロサイト病

 
816/10万名と有病率が低い。北に多い。NMOは日本に比較的多い。

 
非典型的MSの診断には要注意。若い女性の頻度が増している。

 
遺伝

HLA-DRA,helper T cell 関連因子が関与。

環境要因

EBウイルス、喫煙、ビタミンDが低い、塩分摂取が関与。

 
RIで診断

2回、2カ所の中枢神経の炎症性病変

脳室周囲、皮質直下、テント下、脊髄の4つのうちの2つ。

 
治療は

ステロイドパルス、血漿交換

フィングリモド、インターフェロンβが用いられる。

 

視神経脊髄炎

アクアポリン4抗体陽性が60%であり、精髄病変が長い、髄質中央を侵す。

しゃっくり、嘔吐、過眠症が初発のこともある。

 
多発性硬化症と視神経脊髄炎とでは治療法が異なるだけでなく、間違って用いると悪化させるので、区別して診断を下すことが重要となる。(山本和利)

炎症性腸疾患


日本内科学会総会・講演会で東京慈恵医科大学 細谷龍男教授の講演を拝聴した。

 
若年者に多い。慢性に炎症が持続し、QOL(quality of life)が悪い。根本治療がない。

というのが「炎症性腸疾患」の特徴とこれまで言われていた。これも変わりつつある。

 
日本では20万人の患者がいる。全身の免疫異常があって腸炎が発症する。

腸内細菌が関係らしい。マウスモデルでは病態が解明されていない。腸管に異常なマクロファージの機能異常が問題であり、TNFαが関与する。

 
診断法が進歩している。カプセル内視鏡、ダブルバルーン・シングルバルーン内視鏡、CT enterography等が有効である。

 
TNFα製剤が著効を示すようになり、患者予後は大きく変わりつつある。

ステロイド抵抗性を示す患者群が問題となる。

重症群には抗TNFα抗体、タクロリムス:50%に有効である。これは34に有効で、外瘻、痔瘻にも有効。中程度群には白血球除去術、等がなされている。(山本和利)

 

小児喘息:世界と日本のガイドラインの違い


日本内科学会総会・講演会で浦島充佳先生の講演を拝聴した。


小児喘息のガイドラインを例に検討した。日本版は書籍として3500円かかるが、米国版は無料でホームページからダウンロードできる。

日本では軽症例にロイコトルエン受容体拮抗薬が入っている。また、中症(発作が週2回)例でもロイコトルエン受容体拮抗薬が入っている。

米国では軽症、中等症では、発作治療で十分となっている。

どうも日本のガイドラインはロイコトルエン受容体拮抗薬の優先度が高く思える。

米国は吸入ステロイド使用を中心に据えている。(これは5つのエビデンスに基づいている)

日本では、ロイコトルエン受容体拮抗薬が吸入ステロイドに劣っていないという1論文に根拠をおいている。この論文にはこの薬剤を販売する会社の研究員が含まれており、利益相反が疑わしい。また、ガイドライン作成委員が不明、外部員がいないという問題もある。論文抽出が米国では明記されているが、日本では明記されていない。エビデンスの順位付けもされていない。米国が採用している重要な論文4編が日本では採用されていない。コストも吸入ステロイドはロイコトルエン受容体拮抗薬の1/3である。ただし将来の1.2cm身長が低くなるという報告がある。総合的に考えると、吸入ステロイドは副作用よりも利益が勝る。

日本の小児喘息のガイドライン作成には製薬会社の意向が反映されている可能性が高そうだ。ガイドライン作成のためのガイドラインが必要のようだ。(山本和利)

 

 

 

輸入感染症

日本内科学会総会・講演会で墨東病院 大西健児先生の講演を拝聴した。

 
輸入感染症に対する問題点

患者は渡航先の感染症の知識がない(海外渡航者数、毎年1700万人)。

医師はその知識に乏しい。

医療機関が治療薬を持っていない。

医学部で教えていない。

 
熱帯熱マラリア

パプアニュウギニアへ旅行患者が3つの病院で見逃された。鑑別にマラリアが入っていない。知識不足である。

 
旅行者下痢症が多い。下痢、発熱で受診する。

デング熱、マラリア、腸チフス、パラチフスを鑑別に入れること。渡航歴を訊く。特に一ヶ月以内。潜伏期:腸炎は1日から3週間、マラリア;一ヶ月。狂犬病:3ヶ月。熱帯熱マラリア、狂犬病は見逃してはならない。(治療薬を常備すること)。専門病院を紹介する。

ウイルス性出血熱、鳥インフルエンザは社会に与える影響が大きい。

 
速やかに診断することが重要。検査室に輸入感染症の可能性を伝える。

検体から病原体そのものを検出する。

下痢;便

発熱;血液培養、胸部XP

 

マラリア、デング熱には診断キットがある。数分で結果が出る(保険適用なし)。

下痢患者、発熱患者に抗菌薬を使ってはいけない。(山本和利)

 

 

総合内科医の育成


日本内科学会総会・講演会で千葉大学 生坂政臣教授の講演を拝聴した。


内科学会の抄録には総論が書かれているが、口演では千葉大学における総合内科の研修の実態を示された(研修システムの変更等には言及されなかった)。

内科学の根幹をなす診断学

・いかに診断するか

・診断は何か、である。

 

自転車に乗るには、経験・暗黙知が必要で、診断においても同様である。


病歴の段階で鑑別診断が入っていないと、正診率が低くなる。訓練を積むと1年間で研修医でも30%から80%に上昇する。

感度、特異度の高い情報の利用が重要である(SNOUT,SPPINの利用)。

 

直感的診断と分析的診断をうまく使い分ける必要がある。ベテラン医師は直感的診断を、研修医は分析的診断を用いる傾向にあるが、両者をうまく用いて振り返ると正診率が上昇すると言われている。

5マイクロスキルを紹介された。研修医には、診断に合う点ではなく、あわないところを言わせることで論理的思考が上昇することを強調された。

 

■臨床教育1分間指導法(Six Micro-Skills for Clinical Teaching

1. Get a commitment(研修医の考えを聞く)
2. Probe for supporting evidence
(研修医から根拠を聴く)
3. Teach general rules
(一般論を示す)
4. Reinforce what was done right
(できたことをほめる)
5. Correct mistakes
(間違いを正す)

(山本和利)

胆石症の病態と治療


日本内科学会総会・講演会で広島大学の田妻進先生の講演を拝聴した。


日本人の胆石保有率は13%で、加齢と伴に上昇する。胆嚢ポリープは5%程度。

コレステロール胆石が60%をしめる。起こりやすさ;5F”(fair, fat, female, forty, and fertileが有名。


診断と治療

エコー、CT,MRCPERCP, EUS等がある。

症状の有無による対応。

無症状では経過観察でよい、有症状化は24/年である。

有症状では胆摘を勧める、20万件/年(日本)行われている。

 
コレステロール結石は、経口溶解療法がよい。これはエコーをしないでCTで診断しようととすると見逃すので要注意である。


総胆管結石は積極的に行う。

肝内結石のうち、胆管手術例が2/3である。バルーン内視鏡が行われつつある。半数が内科治療でよい。重症度により、対応を変える必要がある。肝内胆管がんが2%に発生。利胆剤はこれを減らす。


胆石の死亡率の第1位は糖尿病、第二位は心血管疾患であり、胆嚢癌が増えるというエビデンスはないようだ。(山本和利)

透析療法の現況


日本内科学会総会・講演会で東京女子医科大学 秋葉隆先生の講演を拝聴した。

1945年に透析による救命例がでた。急性腎不全の死亡率を40%改善した。

2012年現在、日本では30.5万人に行われている。台湾、日本、米国に受療者が多い。日本における透析時間:240分。週3回、4時間治療が95%。血液量は2/3であり、透析量も低い。(レベルが高い)。しかしながら、ガイドラインの目標値にはまだまた至っていない。導入の増加率は減少しているので、増加は2018年にはしなくなると予想している。

透析患者の生命予後は一般人に比較して、65歳時点で10年間短い。欧米に比べると生命予後は長い(1年死亡、日本:6.6%,欧州:15.6%,米国:21.7%)。

進展防止への活動

CKDの概念の啓発

・かかりつけ医と専門医の連携

・栄養士・薬剤師の介入による生活習慣の改善

・糖尿病・高血圧の治療介入の強化

ACE/ARB、腎性貧血治療薬の使用の啓発

在宅血液透析は現在327名であるが、それ(移植も)を推進したい。(山本和利)

日本人の肺がんの特徴

日本内科学会総会・講演会で九州大学 中西洋一先生の講演を拝聴した。

 
日本人の予後は良好である。

5年生存率は手術;66%、非手術10%。欧米より優れている。

これは生物学的特徴によっている。

喫煙は肺がんのリスクを20倍増やす。喫煙と男性は69%、女性は20%が関係している。

逆にいうと男性30%、女性80%はタバコと無関係といえる。

 
上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子異常はアジア人、女性、非喫煙者、腺癌に多い。EGFR阻害薬が著効する。(ゲフィチニブ、エルロチニブ)30%に効く(欧米では5%)

 
アジアにおける非喫煙肺腺癌患者にたいしてIPASS Studyを行った。上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子異常者は標準治療よりも治療成績がよかった(標準治療;シスプラチン+エトポシド)。

肺がんについては、日本人の臨床試験を参考にする必要がある。日本の肺がん臨床試験が欧米に住むアジア系住民の肺がん治療を変えつつある。(山本和利)

膠原病に伴う神経障害


日本内科学会総会・講演会で北里大学の廣畑俊成先生の講演を拝聴した。


SLEの神経障害の特徴は

1.症状が多彩

2.副腎皮質ステロイドの影響

3.全身の疾患活動との乖離、である。


神経障害と精神障害(Lupus精神病)の2つのパターンがあるが、

Lupus精神病はステロイド開始後に半数以上が発症している(6週以内)。


これを診断する際、血清中の自己抗体は感度・特異度が高くない。そのうち、抗Sm抗体、リボソ-ムPは上がる(50%)ので役立つ。抗リン脂質抗体による血栓形成がこれに関係している可能性がある。リボソ-ムPが中枢神経の炎症に関わるサイトカインに働きかけ血管内皮細胞に炎症を起こす。


髄液中抗神経細胞抗体がLupus精神病に明らかに関与している。(抗RPN抗体も関与)

N-methyl D-aspartate receptors(NMDAR)抗体による辺縁系脳炎が報告されており、自然寛解することが多い(死亡例もある)。

中枢神経Lupusでは髄液中のIL6が高い(感度88%、特異度92%)ので診断に役立つ。特に急性混迷状態で多い。脳血液関門が破壊されて、髄液中のIg産生が起きている。

治療は

ステロイドが基本である。抗痙攣薬等は対処療法である。生物学的製剤のエビデンスはない。

70%が急性混迷状態でけいれんを伴う。ステロイド内服とパルス療法を行う。エンドキサンパルスによって再発率を下げることができる。死因は原病コントロール不全が半数である。(山本和利)

糖尿病腎症の治療


日本内科学会総会・講演会で東京慈恵医科大学 宇都宮一典先生の講演を拝聴した。

 

糖尿病腎症の生命予後が悪い。病気進展と伴に心血管疾患のリスクが増加する。心血管疾患で死亡する者が20%である。

 

インスリン抵抗性が基盤状態であり、腎症進展要因であることがわかっている。そこで、インスリン抵抗性が関係する血糖値、血圧値、脂質異常に対して早期に治療を開始することが重要である。

 

ACORD研究で、大血管合併症は予防しないが、最小血()管障害は予防することが判明した。

血糖管理の意義はいまだ不明確である。

 

血圧管理では、ACE-Iはがあらゆる段階で腎症進展を予納することを示した。ARBとの併用については議論となっている。

 

脂質管理ではスタチンが有効である。腎臓保護効果があるが、その機序は多面的である。(山本和利)

医学史

4月11日、1年生を対象にした「医学史」の第1回目の講義を行った。

最初に、医学に入学した動機や将来の志望についてと総合診療、地域医療についてのアンケートに30分かけて記載してもらった。

その後、頻回の検査を求めて受診した頭痛患者、治療方針に医師と家族で齟齬が生じた進行がん患者例を提示して、考えてもらった。
医師の仕事を紹介し、医学史のオリエンテーションに移った。

総合診療、地域医療についてのアンケートから、入学時の学生の意向を分析する予定である。本年度から北海道医療枠ができ、入試制度も年々変わってきている。学生の情熱に応えられるような授業を展開してゆきたい。

次回、次々回は松浦助教が、プレゼンテーションの仕方、ファシリテーションの仕方を講義する予定である。(山本和利)