札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2014年1月24日金曜日

1月の三水会


115 日、札幌医大で、ニポポ研修医の振り返りの会が行われた。後期研修医:1名。他:7名。

 

 

ある研修医の経験症例。外来、往診事例を数十例検討。

 

研修医から振り返り1題。

 ある頭痛患者。70歳代女性。脳梗塞後遺症、頭痛、抑うつで経過観察されている。頭全体が重苦しく痛む。夫が死亡後に悪化。同時期にペットの犬も死亡。精神科にも受診し、SSRIを含め、多数の薬剤が処方されている。薬物乱用性頭痛も考え、NSAIDSを中止した。

ライフストーリーを聴取して、次のことがわかった。

中学卒業後、和裁、洋裁で生計を立てていた。脳梗塞後、右手が使えず、辛かった。手芸をしたいという思いが募る。よくみると寝具も手作りである。

 

コメント:病気や薬剤だけではなく、患者の背景や生き甲斐が症状に反映しているのがよくわかった。入院すると精神不穏となり、精神科に診てもらうが、処方だけで経過をみる患者も目にする。生き甲斐、生き場所も大切である。

 

 

今回は、生物・心理・社会モデルに基づいて議論が交わされた。(山本和利)

 

第6回病院総合医カンファランス

118日、北海道建設会館で第6回病院総合医カンファランスの勉強会が行われた。

 

まず、症例検討会。

精神遅滞があり、胃がん術後に嚥下障害を主訴にした70歳代男性についてグループ討議を行った。高血圧、糖尿病、腎不全等あり。ルーY手術後、正球性貧血有。消化管閉塞を疑い精査したが閉塞はなかった。電解質異常なし。貧血あり。フェリチン高値。

「閉塞病変はなし。さて、何だろう?」

 

結局、TSHが高値でFT4,FT3低下。抗体は陰性。T4投与で症状は改善。フロワーから:本当に甲状腺機能低下症でいいのか? 精神遅滞があることから小児期から機能低下があり、見逃されてきたのではないか。

 

認知症についてのミニレクチャー。

ステージの診断の重要。レビー小体病を否定すること(パーキンソン症候群、幻視、軽度の認知症)。

 

再び症例提示。

87歳男性。高血圧。左下肢の違和感。腫脹が広がる。発熱あり。Dダイマーがやや上昇。下肢静脈エコーでのう胞状の構造物有。ここでDVTは否定的となった。

 

CT、穿刺でベーカーのう胞破裂と診断した。

 

14歳男子。野球部所属。修学旅行後、Cr:1.7。

17歳男子。野球部吐き気、胸やけ。CR:2.0

16歳男性。不眠。サッカー部男性。練習後嘔気。Cr:0.75.UA:0.5

 

「健康な男児が運動後に起こす腎不全」

「さて、何だろう?」

 

腎性低尿酸血症による運動後急性腎不全、ということである。

 

腎性低尿酸血症。運動後、男性。嘔吐、嘔気。尿路結石と間違われやすい。予後はよい。若年時に起こる。加齢につれ、症状は起こらなくなる。

 

血液ガスの読み方

 

57歳男性。ふるえ。pH:7.558, pCO2:16.8mmHg, pO2:105, HCO3:15mEq/lを提示。

急ぎ足の解説のため消化不良となった。

 

結局、Anion gap高値であり、以下の3つが考えられる。

・ケトアシドーシス

・乳酸アシドーシス

・毒物服薬

 

答え:アルコール多飲による症例。

 

中規模の病院。

一般内科外来。午前外来終了間際。78歳男性。貧血があるといわれた。下肢痛、上肢痛。腰痛。整形外科から紹介。MRIで腰椎椎間板ヘルニア疑い。Hb:8.6, CRP:13.MCV:93,リウマチ反応陰性。

 

体重減少あり、倦怠感。既往:胃潰瘍、タバコ40/日。

胸部XP,血培。

 

ESR:140/h、血培陰性。

転院。

寝汗なし。黒色便なし。梅毒の既往あり。左肩関節の可動制限。

 

ここで、悪性腫瘍、化膿性脊椎炎、結核、多発性骨髄腫。が鑑別にあがった。

 

画像では、椎体の変性所見のみ。

 

ここで、PMR、感染性心内膜炎、が鑑別に上がった。

良く話をきくと、左足が上がりにくい。自転車に乗れない。朝重苦しく歩きにくい。

 

プレドニン20mgで症状改善。所見も改善。

 

PMRの診断基準がある。

急性発症。

「他覚的な所見で説明がつかない著明なADLの低下」が特徴。

除外診断である。悪性腫瘍、血管炎、リウマチ。側頭動脈炎(合併することあり)

 

熱気の溢れた3時間であった。(山本和利)