4月15日、札幌医科大学大学院修士課程に入学した方を対象に「臨床疫学入門」という講義を行った。参加者は8名、検査技師、獣医師、元新聞社勤務、栄養士、鍼灸師学校講師、美術関係者等、様々な背景をもった人たちである。
はじめに科学とはどういうことかについて宇宙論を例に解説した。1)実験、2)理論(二元論、要素還元主義)、3)反証性、がその特徴である。2005年、韓国のソウル大学ファン・ウソク教授の「ヒトクローン胚を使ってES細胞を作った」という論文捏造につて紹介し、科学社会の構造的問題について軽く触れた。
尾藤誠司先生の持ちネタをお借りして「暮らしの手帖」を例に科学的な姿勢について解説した(電子レンジで調理について)。PICOについて解説し、臨床研究のプロトールの書き方などを紹介した。
P:調理されるもの
E:電子レンジで調理
C:フライパンORなべでの調理
O:焼き目、味、調理時間、調理者の手間、費用
その中で、二十世紀最良の論文と言われるCAST(Cardiac Arrhythmia Suppression Trial)studyを紹介した。(心筋梗塞は急性期が過ぎてから合併する不整脈が時として致死的となるため、抗不整脈薬が有効であるという理論・予測があり、抗不整脈薬が予防的に投与されていた。しかし、最も有効な薬剤グループを調べるためにランダム化比較試験による臨床実験が行われところ、中間報告で最も死亡率の低いのは薬剤非投与群だったことが判明。安全のために試験の一部が打ちきりとなり、以後は抗不整脈薬が一律に投与されることはなくなった。)
残り時間で、臨床研究のプロトコールに作成法や統計の話、研究のデザイン・バイアスについて言及した。
参加者からは、「講義を受けて論文の必要性がわかった」「今後の研究の展開に有益であった」「スタート時点でこのような講義を聴けてよかった」「「とても面白い講義でした」「PICOを今後の研究生活に活かしてゆこうと思った」「会話調の講義にすっかり引き込まれた」「文系出身者にはとても参考になった」等の意見をいただいた。大学院生の皆さん、論文作成、頑張ってください。(山本和利)