札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年5月7日金曜日

医療情報マネジメント(EBMの実践)

 4月30日、幌加内町国保病院の森崎龍郎医師が4年生に「EBMの実践」という講義を行った。幌加内町国保病院の外来の机にコンピューターが置かれていることを紹介して、どこでもインターネットがあれば最新のエビデンスを利用することができることをわかりやすく解説してくれた。

まずEBMの4つのステップを紹介し(Step 1 臨床上の疑問の定式化、Step 2 情報収集、Step 3 情報の批判的吟味、Step 4 自分の患者への適用)、インターネットでの情報収集に関する注意点を述べた。インターネットの情報は何でもありで、ウソの情報も当然混じっている。無責任な情報はもっとたくさんあふれている。ホームページの美しさにだまされてはいけない!「情報の質」を判断するのは受け手側(あ・な・た!)である。情報化社会においては、「情報の質」を見極める力がますます重要!「簡便さ」「情報平等主義」「匿名性」であるため、逆に危険度も大である。まず、運営者を必ずチェックすること。公の機関、専門的な組織、その問題の専門の研究者が運営しているページは比較的信頼できるが、それ以外は、参考程度にのぞくだけにしておくのが無難である。もちろん、「公の機関、専門的な組織、その問題の専門の研究者が運営しているページ」だって疑ってかかる必要がある。

ポイントは「信頼性の高い二次資料を使おう」である。これ以上元をたどれないオリジナルな内容を伝えるものを一次資料という。医学の場合、基礎実験や臨床研究に基づく専門的な研究論文のこと。一次資料に基づいて編集・加工された資料を二次資料という。一次資料を編集・整理したり、その内容を取捨選択し、評価を加えたりしたもの。(さらに教科書のことを「三次資料」と呼ぶ場合もあるようです。)信頼性の高い(アカデミックな)二次資料とは、信頼できる著者が書いていて(もしくは信頼できる出版社から出版されている)、多くの専門家の目を通してあり(独りよがりな論旨になっていない)、一次資料の出典を明らかにしている。その点からいうとUpToDate DynaMed (二ポポ研修医にはiPODが支給されニポポプログラムが使用料金を肩代わり)を推薦したい。

さらに英語が苦手な学生さんのためにインターネット上で使える便利な英語辞書の紹介し、日本語なら「メルクマニュアル」を推薦。American Family PhysicianのHPも便利と紹介。ここで事例を基にここまで紹介した検索エンジンで具体的に検索した結果を提示した。

まとめると、

1)  まずインターネットの検索エンジンで調べる。

2)  (一般向けのものでもよいので)その問題についての概略をまず簡単に理解し俯瞰する。(参考程度に)

3)  専門的な教科書の必要な部分を読む。

4)  さらにUpToDateなどの二次資料を英語で読む。

5)  その内容をもう一度日本語の資料で確認する。

最後に、「山本先生のEBMの講義は難しすぎて付いていけなかった・・・という人は、まずこの本から!(この本は一般向けですので、数式や難しい用語は一切でてきません。)」と言って、名郷直樹先生の「治療をためらうあなたは案外正しい」を推薦して講義を終えた。(山本和利)