札幌医科大学 地域医療総合医学講座

自分の写真
地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年11月23日水曜日

SHAMPOO

11月22日、月寒ファミリークリニックの寺田豊先生の「在宅医療」の講義を拝聴した。

ます写真を見せながら在宅診療を語った。在宅医療の一日を紹介。車で行くことが多い。

診療録はSAOPで書くが、在宅医療ではSHAMPOOを提案(寺田氏のオリジナル)。

SHAMPOO
在宅医療にはsoapよりシャンプーが必要。

Subject and Sign
出会う症状。だるい:脱水。便の訴え:うつ、・・・。 尿の訴え:頻尿、前立腺肥大。
、かゆい:疥癬、・・・。転倒:意識が変:脳卒中、徐脈、レビー小体病、・・・・。

House and Home
家と家族をみる。庭の様子をみる。
飾ってある写真。家族の歴史がそこにある。
昔の道具などを利用する。
家族と地域医支援。医療改革で、かかりつけ医を地域ケアの中心に。病院医療から在宅医療へ移行。
在宅医療を可能にする条件
家族の協力:39.7%。
・・・
Photo elicitation
隠されたものを引き出す。
写真から引き出せるもの。家族の「宇宙」を知る。
ジョハリの窓。フィードバックを利用して、患者さんの扉を開く。ある在宅患者さんの本棚に髙村光太郎の「知恵子抄」を発見。これが鍵だと直感した。ポロポーズ時のものであった。

ADL
活動性を評価する。
ここでADL(DEATH:dressing, Eating, Ambulating, Toileting, Hygiene)、IADL(SHAFT: Shopping, Housework, Accounting, Food preparation, Transport)を紹介された。

Medication and Meal
薬がない。冷蔵庫の中や畳の下。デンマークには風邪薬がない。風邪をひいたら即休養。

Plan and Prognosis
短期、中期、長期の治療計画を立てる。在宅看取りの率:日本は10%、米国は31%、オランダは31%である。おかえりなさいプロジェクトを紹介。

Object Data
患者さんの基本データ。尿回数、便の状況。室温、湿度も重要。「虫が体から出てくる」患者さん。便から虫がでてくるという「寄生虫妄想」であった。初老期の女性に多い。
認知症、移動機能障害を評価。
できるだけ薬を処方しない。

Open information
情報を共有し、多職種と連携する。

在宅主治医が担う役割
在宅診療に関する最終責任者、2.介護保険に関わる役割、3.在宅ケアチームの機能調整。病診連携。循環、連携できる医療システムのカギとなるのが在宅医療。Uターン(紹介元へ)、Iターン(病院の患者を適切な診療所に)、Jターン(紹介元とは別の診療所に)。オープンベッドシステムを広げる。

往診料:720点、在宅患者訪問診察料:830点である。

「往診」と「訪問診療」(診療計画を立て定期的に行う)を別に扱う。

外来診療:日本は14回/年、OESDは6回/年。診察回数:日本は7,000回/年。入院日数:日本は28日。医療資源について。日本は病院で患者さんを診る文化を作ってしまった。患者の受診回数、医師一人当たりの診察回数、急性期病床の平均在院日数は世界一である。

在宅医療に必要な知識・技能
1)患者や介護者のアセスメントができる、2)よく遭遇する問題への対応と予防ができる、3)在宅医療機器を用いての診療ができる、4)在宅医療関連の書類を作成することができる、5)コミュニケーション能力。

在宅医療で大切なこと。
「病気は家庭医で治すもの」「家庭的な雰囲気の中で」

最後に学生個々人が考える「在宅医療」に書いてもらった。その一部を紹介する。「患者さんと最も距離の近い医療」、「患者背景を重視する医療」、「思いやりのある医療」、「家族の一員になること」、「地域の担当医」、「体だけでなく心、家庭、生活、歴史に接する医療」

学生は今回の授業を通じて、「SHAMPOO」という概念でしっかりと在宅医療を理解し、在宅医療に興味を持つようになったようだ。(山本和利)