札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年11月19日土曜日

森聞き

『森聞き』(柴田昌平監督:日本 2010年)という映画を観た。

この映画は「森の名人」と呼ばれる老人たちの人生と技について高校生が聞き書きをした場面やそのための準備・まとめの場面等を映画にしたものである。そもそもは2002年から毎年行われている「森の聞き書き甲子園」という企画に、毎年100名の名人と高校生が選ばれ、これまでに900組の名人と高校生の出会いを演出しているという。その中から必ずしも優秀とは言えない高校生4名を監督が選んで、映像化したものである。

私が鑑賞した日に、監督が上映挨拶に見えており、その後有志が集まって監督を囲んでの懇談会にも参加した。そのとき、幸運にも選んだ名人や高校生に対する選択基準を聴くことができた。林業関係者のみならず、ハンターやマスコミ関係者も参加していて様々な分野の方々の話も聞くことが出来た。

監督は元NHKのディレクター。沖縄赴任時に戦争体験を織り上げる番組を企画し、それがうまくゆかず、それを契機に退職したと話されていた。『ひめゆり』という沖縄戦の映画も撮っている。高校生である娘さん世代の考え方を知りたいと言うことも映画作成をする動機の一つのようだ。

焼き畑の名人、茅葺きの名人、木に登っての杉の種取り名人、木こりの名人が登場する。技もすごいが、人生について語る内容も素晴らしい。名人それぞれ「いい顔」をしている。そのような仕事であるが、時代の変化とともに名人技を継ぐ人がおらず、消滅の危機にある。技を見せることがこの映画の主張ではないので、あえて技の全てを見せていないが、それでも私からすると感嘆する技である。

一方、インタービュする高校生の日常生活は丁寧に取材して映像化している。その結果、現在の高校生がどのような生活をしてどのような悩みを持っているのかの一端にふれることもできる。

本作品を通じて若者がどのように考えて、人と出会って仕事を選択してゆくのかがよくわかる。一つの仕事を長年続けている理由は、好きだからではなく、使命感であるというある名人の言葉が印象的である。(山本和利)