札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年11月15日火曜日

内科学の展望(後半)

11月12日、横浜市で行われた第39回内科学の展望を聴講した。

■2型糖尿病のインクレチン療法 秋田大学 山田祐一郎氏。

糖尿病は認知症を増やす(久山町研究)。食後血糖値を押さえることが重要。グルコースを静脈投与するとインスリンが感知して血糖値を下げる。食べるとインクレチンがインスリンを分泌させる。食事量に応じたインスリン追加分泌が起こる。インクレチンによって食後血糖値がコントロールされている。食後血糖を上げないためには、ゆっくり食べる、甘いものを減らすことが大切。
GLP1作動薬、DPP4阻害薬が食後高血糖に効く、変動も減らす。それ以外に体重を抑える、β細胞を保護する、臓器保護する、こともできる。他の薬剤と併用できる。DPP4は心血管イベントを減らす。骨折リスクも減らす。

■COPDの病態と治療 京都大学 三島理晃氏。
リモデリングが起こっている。気道抵抗は気道内径の4乗に反比例する。
COPDはステロイドで制御できない。可逆性に乏しい。肺気腫病変。LAA%が病理像と相関する。LAA%は体重と逆相関する。LAA%が小さい群は生存率がよい。

安定期COPD管理。禁煙、インフルエンザワクチンは増悪する率を50%を低下させる。肺炎球菌ワクチンも重症者に勧められる。長期作用性抗コリン剤、β2刺激剤・吸入ステロイド薬も推奨。在宅酸素療法患者にはときどき動脈ガス採血を実施すべし(高CO2血症の否定のため)。禁煙は大切。酸素圧が下がるので飛行機搭乗には注意。

COPDは全身疾患である。心疾患、動脈硬化、GERDが多い。栄養障害が肺気腫を助長するという研究が注目されている(神経性食欲不振症)。治療の基本はABCアプローチである(antibiotics,bronchodilator, corticosteroid)。CTによる評価は必須。夜間不眠は要注意(増悪の可能性大)。

■炎症性腸疾患の新展開 東京医科歯科大学 渡辺守氏。
患者数は15万人で若者に多い。治療の進歩が著しい。クローン病に抗体製剤レミケード(TNFα抗体)が89%に効く。ヒュミラが認可された。この領域では薬のタイムラグがない。粘膜ヒーリングという考え方がでてきた。症状のみならず内視鏡でも改善を目指す。さらに完全寛解を目指す。「早く治療すればもっとよくなる」ので、自然経過を変えることを目指す[手術不要となる]。Top-down治療が推奨(強力な治療を開始する)。それによって、20% の患者が抗TNFα抗体を中止できる。40%は免疫調節薬も中止できる。まれは副作用が報告されているので要注意である。HepatosplenicT細胞リンパ腫が20例報告された。若年男性が多い。進行性多巣性白質脳症も1例報告。

潰瘍性大腸炎の重症例は3%である。クローン病とは異なり重症例が少ない。これまでの治療をうまく継続することが大切である。5ASAをフルドーズ使う。ステロイドを長く使い過ぎない。

■リウマチ・膠原病の分子標的治療 慶応義塾大学 竹内勤氏。
1942年、クレンペラーが提唱。RAは治療法が確立している。抗ccp抗体が診断に有効である。喫煙はリスクでるので、禁煙指導をすること。RA患者は適切な治療をしないと10年後に寝たきりになる。
最近、分類基準が変わった。RAの所見は、新生血管、T細胞、破壊である。
抗体製剤、受容体Ig融合蛋白が有効である。TNF、IL6、TNFαの濃度で用いるTNFα抗体容量を変更できる。
問題点として、その製剤に対する抗体ができる(注射時反応)と、効果が発揮できない。それは特定の遺伝子を持っている人に起こる。その予防策としてMTXまたはステロイドを併用する。副作用は感染症(肺炎、結核、ニューモシスティス肺炎)、呼吸器合併症である。ST製剤とステロイドを用いる。

医学が絶えず進歩しているのが実感できた。知識の更新に有益であったが、問題点もある。

今回、内科学会総会の教育講演と内科学の展望が同一会場同時刻での開催となった。それに参加すると認定医・専門医認定の単位として各10単位がもらえるとしていた。実際には両方を聴講できないにもかわらず、大部分の参加者は両方の料金計8000円を払っていた。このやり方は、生涯教育の内容を学会参加における支払金額で換算する方式であり、内科学会の生涯教育制度がいい加減であることを露呈したものといえよう。(山本和利)