札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年11月17日木曜日

11月の三水会

11月16日、札幌医科大学において三水会が行われた。参加者は12名。稲熊良仁助教が司会進行。後期研修医:5名。他:7名。

研修医から振り返り6題。

今回から、病棟、外来で受け持った患者について供覧することにした。

ある研修医。小児科で研修中。感冒性腸炎、急性上気道炎、喘息が多い。ときに水痘、手足口病。水痘についての議論で盛り上がった。外来、新生児、乳児健診、ワクチン、子育てサロン(ロール・プレイもする)、病後児デイサービス、産婦人科外来で研修。母親とコミュニケーションをとることやその対応が難しい。

1歳児男児の母親に「子供の歯磨きにフッ素塗布をした方がよいか?」と質問された。母子保健上、法的な滋氏義務はない。幼稚園、保育園での89%が実施。札幌市、旭川市は実施していない。虫歯予防には水道水へのフッ化物添加、フッ化物塗布、砂糖制限が重要。日本は虫歯が多い(2.4本)。
予防接種の話題。任意接種のワクチンの接種率がよくない。日本の保健行政は、各自治体の裁量にまかされている。そのため地域格差がある。地域の医療関係者が連携して取り組む必要がある。

ある研修医。抗凝固薬再開につき悩んだ一例。75歳男性。発熱、悪寒。前立腺がん(膀胱瘻)、Af、脳梗塞。軽度黄疸あり、貧血あり。CTで胆嚢肥大。胆管炎。CHADS2スコアが4点。ヘパリンを使用後、下血が出現。前立腺がんの直腸浸潤と診断。ストマは作らないことになった。出血のリスクを冒してまで抗凝固薬は使用しない。胆管炎は軽快し、リハビリをしている。何もしないで経過観察をしたい。
クリニカル・パール:患者・家族に抗凝固薬のリスクを十分に説明することが必要である。

ある研修医。あるCPA蘇生後の一例。68歳女性。全身浮腫。CPAで救急搬送となった。蘇生後、CVカテーテルを挿入。今後の栄養をどうするか。家族の意見は延命医療を拒否。院内カンファランス(医師のみ)の結果、気管切開術を行い、PEGを造設した。本当は徹底的に患者家族と話し合うべきであった。患者家族の意向に沿えなかった。最初のコミュニケーショ不足が指摘された。

ある研修医。夜間当直中に63歳男性がめまい、腹痛で受診。苦悶様で体をくねらせる。腹部は平坦、圧痛なしで、急性胃腸炎と診断した。休ませてほしいと患者がいうので点滴を依頼した。3日後、その患者さんがICUに入院している。術後腸閉塞であった。排便、嘔吐はなかった。BUN:77, Cre;5.7。癒着性イレウス、敗血症性ショック、腎前性腎不全。

ここで腸閉塞のレビューが披露された。(省略)

クリニカル・パール:高齢者の腹痛には重症疾患をいれるべきである。下痢だからといって腸閉塞を否定してはいけない。腸閉塞は臍周囲の痛みで発症する。高齢者救急受診の原因で多いのは胆道疾患と小腸閉塞である。

ある研修医。訪問診療をすると、家のことがよくわかる。

85歳女性。酒飲みの長男と二人暮らし。整形外科と内科の薬が重なっている。むくみあり、Hb:4.7g/dl。(鉄剤を中止したため)

89歳の独居女性。胸部大動脈瘤持ち。イレウスで入院。退院後、ある朝、死亡しているのを発見された。

82歳女性。認知症で動けないという理由で往診依頼。風呂に3年間入っていない。本人は困っていない。入院を勧めたが拒否。

80歳女性。脳梗塞後遺症で寝たきり。ベッドから転落。頭部CTで硬膜下血腫。

84歳男性。心原生脳梗塞。CPAで救急搬送。心電図から心筋梗塞によるAf。翌日、意識は全く正常になっていた。しなしながらその後、ベッドから転落。低血圧。収縮期雑音あり。心エコーで心室中か隔穿孔であった。

クリニカル・パール:医療から隔絶された家もまだまだある。やっぱり心臓疾患は怖い。

ある研修医。コントロールに難渋している糖尿病患者。76歳女性。脳梗塞の既往。インスリン治療していてもHbA1c:10%。精査で膵がんは否定的。デイサービスで定期的運動をしてもらった。その日の血糖値はよいが、往診した日の血糖値は悪い。しっかり食事療法はしているが、御代りは自由である。「自分だけではできない」患者。

相談症例。96歳の意識のない女性。PEGを作らないと療養病棟に移れない場合、PEGを作るべきか? 生物学的禁忌、社会学的適用。


今回は様々な症例が提示され、議論も盛り上がった。受け持ち症例をエクセルにまとめて提示する方法は今後も継続してゆきたい。(山本和利)