札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年11月2日水曜日

マルクスを読もう

『若者よ、マルクスを読もう』(内田樹、石川康宏著、かもがわ出版、2010年)を読んでみた。

これは高校生向けに書かれたマルクスの案内書である。本書は、二人の教師による書簡のやりとりで4部構成となっている。初めが『共産党宣言』、次が『ユダヤ人問題に寄せて』『ヘーゲル法哲学批判序説』、3番目が「経済学・哲学草稿」、そして最後が『ドイツ・イデオロギー』である。

『共産党宣言』(1848年)とは、「いまの社会にはこういう欠点がありますな」「そうするとこういう具合に改革が進むでしょう」なんてことが書いてある文章だそうだ。マルクスは当時29歳。本の書き出し。「一つの妖怪がヨーロッパを歩き回っている・・・共産主義という妖怪が。・・・・」経済理論は出てこない。

内田氏は、彼がマルクスを読むのは「自分の頭がよくなった気がする」からだそうだ。そして「マルクスは僕の問題を解決してくれない。けれども、マルクスを読むと僕は自分の問題を自分の手で解決しなければならないということがわかる」と書いている。それが「マルクスの教育的なところだそうだ。またマルクスの文章の「麻薬性」に触れている。それはたたみ掛ける命令文である。革命宣言を「憎しみ」や「破壊」ではなく、「友愛」の言葉で終わっていることを高く評価している。

『ユダヤ人問題に寄せて』で。内田氏はマルクスに反論する。「社会のゆがみや不合理はふつうシステム全体にゆきわたった制度疲労が原因です。どこか1箇所だけ病んでいて、あとは全部健全なので、病んだ部分だけ外科手術でえぐり取れば、たちまちシステムは回復するというようなシンプルな仕方で社会制度は劣化するわけではありません。」と。

石川氏がマルクスの著作の内容を紹介し、それを受けて内田氏が独特の言い回しで、彼なりに理解した内容を述べている。ウーン、この内容が高校生にわかるのだろうか。私にはついて行けずに居眠りをしてしまいそうになる。とは言え、難しい哲学・経済学書にほんのチョット近づけるきっかけになるかもしれない。(山本和利)