札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年11月10日木曜日

フランケンシュタイン

『フランケンシュタイン』(メアリー・シェリー著、光文社、2010年)を読んでみた。

小説は書簡の中に、さらに書簡が出て来て、その中で怪物のことが記載されているという構成になっている。

過去に3冊か翻訳出版されているが、新訳ということで読んでみた。フランケンシュタインは怪物のことと思っている人が多いが、フランケンシュタインは怪物を作った博士の方の名前で、怪物に名前はない。たくさんの映画がつくられ、その影響が強いからであろう。

科学の進歩により怪物を創造することになるのだが、所詮18世紀の小説。その辺の過程にはほとんど触れていない。墓場で死体をよく研究している場面が出てくるが、材料やその大きさも不明確である。怪物は、普通の人間より大きいと記されているが、それは小さいと作るのが大変であるからというのが理由である。

物語が進むと、怪物がフランケンシュタイン博士の後を追って脅迫する場面が何度も出てくるが、どうやって移動し、何を食べているかなど具体的なところが見えてこない。3年で読み書きができるようになり、人間への愛が目覚めると言われても・・・ついてゆけなかった。本作品をこんな風に読むのは、邪道なのだろう。

知性と感情を獲得した怪物が、人間の理解と愛を求める(自分と同じ女性版「怪物」の作成を懇願する)が、それが拒絶されて疎外される話である、と解説されている。しかしながら、私には余りに具体性が乏しく、感動することもなく終わってしまった。

名作とは様々な解釈ができる作品だそうだ。読者が違えば、私と違って感動が引き出せるかもしれない。人によっては本作品を「資本家」と「労働者」の対立と読み替える説もあるそうだ・・・・。(山本和利)