札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年11月18日金曜日

運動器急性疾患

11月16日、札幌医科大学においてニポポ・スキルアップ・セミナーが行われた。講師は札幌徳洲会病院の森利光院長である。テーマは「運動器急性疾患」で,参加者は10数名。

脳梗塞既往がありCre1.8の意識消失。脳外科、腎臓内科、循環器科、糖尿病科、整形外科では、どこも診たがらない。

高齢者には臓器別専門医の力は発揮できない。今までは専門医に診てほしい、といわれていたが、これからは総合医に診てほしい、になって欲しい。

総合医の必要性を訴え、研修医に熱いエールを送られた。

5項目を講義。そのポイントを示そう。
骨折;ろっ骨骨折は全外傷の10%。局所の圧痛は感度が高い。診断は治療に影響を与えない。「自転車から転倒。ハンドルを右胸部にぶつけた。呼吸苦はなし。第6肋骨に圧痛を認める。骨折しているかどうか知りたがっている」Xpを撮るが、骨折線は認めない。

感染:1)化膿性関節炎、診断が遅れると骨が破壊される。2)化膿性脊椎椎間板炎、アルコール多飲の肝硬変患者。3)腸腰筋膿瘍、発熱、股関節痛を訴える。4)化膿性腱膜炎、犬に咬まれた症例。

診断のポイント:痛みは有効な指標。第6番目のヴァイタル兆候とも言われる。

悪性腫瘍「どんな時に転移性脊椎腫瘍を疑いますか?」50歳以上。体重減少、癌の既往、薬でよくならない。安静でよくならない。SpPin(特異度の高い検査が陽性のときは確定できる), SnNout(感度の高い検査が陰性のときは除外できる)で診断確定または除外をする。

糖尿病足障害:痛みがない。骨髄炎は掻爬。この際には第6番目のヴァイタル兆候とならない(無痛なので)。

脊柱管狭窄症:まれであるが馬尾障害(排尿、排便障害)に注目。自然寛解が期待できない。
「専門医へ紹介した80歳の患者が手術後、かえって悪くなったといって受診した」どんな言葉をかけますか。「死ぬまで付き合っていきます」

簡潔明瞭な歯切れのよい講義であった。この内容は翌日のPCLSでもなされた。次回は「圧迫骨折」を予定。(山本和利)