札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年10月31日月曜日

第1回北海道地域医療教育研究会

10月30日、北海道大学学術交流会館で開催された第1回北海道地域医療教育研究会に参加した。

前沢政次氏から「地域医療教育のあい路」と題した挨拶があった。The SPICES modelを紹介。望ましい地域医療の5要素は、住民生活力、ネットワーク形成、チームケア、住民共助、文化創造。海外の考え方であるPEOPLE-centered health promotionを紹介。最後にHarden氏の教育者への「遺言」10カ条を紹介された。

第一部は「地域医療研修はどのようなプログラムが効果的か?」
大城忠氏(江差診療所)
・ベッドを閉鎖した。目標は2つ。1)研修医には地域をみる、2)困難事例を経験する。学生実習の紹介をされた。全盲の患者、脳性まひ、寝たきりの患者さんを介護する嫁さん等、グループホームへ訪問。外来見学。学生に患者さんが拍手してくれる。労働体験(漁)を計画。

一木崇宏氏(穂別診療所)
・有床診療所[19床]。総合医3名。研修医38名を受け入れ。既に進路が決まっている者22名。外来実習でcommon diseaseを体験(問診と身体診察)。院外活動。介護保険の理解。二次機関との連携。患者さんの経過をみる。生活者がいる地域(背景)として理解してもらう。穂別を好きになってもらう。研修報告会を実施。レクチャーをしてもらう。住民の協力も得ている。ハスカップ採取、化石採取、アスパラ狩り、農業体験、住民と対話。

中川貴史氏・西弘美氏(寿都町)
・医師3名。有床診療所(19床)。ある程度独立した医療を求められる。保健・医療・福祉の連携が重要。提供→協働→自立、を目指す。多職種連携教育を重視(50%以上の時間を割く)、幅広い家庭医の取り組み。保健師から報告。

小野司氏・十河真弓氏(栗山町)
・6名の研修医を受け入れ。若い医師の関心を高める。保健活動の充実。保健師の実践力を高める。

佐藤健太氏(勤医協札幌病院)
・目標は3つ。1)地域特有な事例を、責任をもって担当させる、2)地域を深く知り、住民や健康への影響を理解させる、3)多職種の事例への関わりを学ばせる。視野を広げて価値観を変えることが重要である。「参加型」、「問いを持った見学」が必要。地域視診(歴史の上での今を見せる、よそと比較する、職員・住民の意見を聞く)。漁師の家に3日間泊まり込み。木彫り、酪農の体験。患者さんも何かの専門家であることを自覚するようになる。ライフストーリーを聴取させる。他職種の体験をさせる。連携カンファランスに参加させる。報告会が効果的。地域志向型医学教育の理論を参考にしている。

古川亨君(札幌医科大学学生)
・FLAT(特別推薦枠学生+α)のメンバー。これまでの実習報告。病院外で地域の住民と関わったことが一番印象的であった。実習期間は1週間必要。できれば1カ月間、地域で暮らすことが重要。医師1年目に地域医療実習をするのもよいかと思った。研修中の宿泊施設の快適さが重要。その地域の産業、特産品、アピールポイント、その土地の魅力を伝えてほしい。Positive面を強調して欲しい。実習生に対して「何を伝えたいか」「何を学んでほしいか」を明確にしてほしい。

第2部「北海道総合内科医養成研修センターの現状と課題」
田村氏(北海道地域医師確保推進室)
・センターの指定要件。1)後期臨床研修プログラムを有していること、2)指導医が1名以上、3)総合内科外来を開設、4)病棟研修が可能であること。
現在、23施設が登録。2010年度は11施設、13研修医で実施。2011年度は11施設、23研修医の見込み。課題は4つ。1)研修医の確保、2)終了後の地域医療への従事、3)研修プログラムの充実、4)研修センターのネットワーク化。

笹川裕氏(留萌市立病院)
・広域な面の中で総合医を養成してゆく。奨学金をもらっている学生に、総合内科医養成支援センターでの研修を義務付けして欲しい。臨床疫学研究の場になる。

濱口杉大氏(江別市立病院)
・総合医が知己医療を行う主役である。チームで地域医療を行う必要がある。総合医を養成する研修教育環境の構築が最重要課題である。資金獲得も重要で、その資金を研修充実のために使用する(外部講師やアドバイザーに)。

佐古和廣氏(名寄市立総合病院)
・総合医の定義と役割を明確化する。65歳以上の患者さんは、30%が複数科を受診している。消化器内科が撤退したとき、紹介先で消化器内科であったのは15%に過ぎなかった。外来診療を効率的に行うには、総合医が初診を担当するのがよい。指導医の養成が急務である。これからの地域医療は総合医の診療連携が望まれる。

松井善典氏(更別国保診療所)
・総合医のケアと家庭医の両方を学ぶ。専門医や多職種との連携。総合医も家庭医のいる診療所で研修する相互養成システムが必要である。

最後に山本和利がまとめの代わりに「総合医の生涯教育」について講演した。(山本和利)