札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年10月16日日曜日

エージェント6

『エージェント6(上)(下)』(トム・ロブ・スミス著、新潮社、2011年)を読んでみた。

スケールの大きな新人作家の登場である。本書は『チャイルド44』『グラーグ57』に続く三部作の完結編である。3作品とも文庫本上下2巻900ページの構成。息も付かせず読者を引き込んでゆく。主人公は旧ソ連の秘密警察捜査官レオ・ドモドフ。『チャイルド44』は連続殺人事件の捜査、『グラーグ57』は極寒の強制労働所やハンガリー動乱のブダペストで超人的な活躍をする。

本書の話は1950年のモスクワを訪れた米国の黒人歌手の警護場面で始まる。この冒頭の数ページの話が15年後のニューヨーク、そのまた15年後のアフガニスタンへと繋がってゆく。

共産主義の黒人歌手、妻、養女、歌、夫婦愛、アフガニスタン紛争、米国社会の不平等、アヘン、モスクワ、ニューヨーク、カブール等のキーワードに基づいた話が上下2巻に散りばめられている。

「エージェント6」とは何か。どこまで読んでも出てこない。はじめはゆっくりと、徐々に話が加速し、15年後の想像もしない場面に読者は連れて行かれてしまう。

著者はまだ3作品しか書いていない。どの作品もタイトル末に数字がついている。たして100になるのかな、等と考えたりした。ならないネ。「44」、「57」、「6」。この3つの数字に何か意味があるのだろうか。次の作品タイトルにも数字が入るのだろうか。興味は尽きない。(山本和利)