札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年10月23日日曜日

三水カンファin足寄

10月22日、足寄町我妻病院において三水会が行われた。札幌組はバスをチャーターし、途中トイレ休憩を2回入れて4時間半で到着。参加者は22名。

はじめに山本和利の挨拶。続いて、我妻病院のケアマネージャーの中村さんから、「地域で研修医を育てる」という講演を拝聴した。地域医療の楽しさを伝え、人を育てることを目標としている。受け入れ学生数はこれまでに36名。研修医は22名。研修医指導や仕事を楽しんでいることが伝わってくる発表であった。

グループ・ワーク「医療と介護・福祉の連携」を3グループで話し合った。KJ法を使用。「相手がわからない。接点がない。」「温度差、価値観の違い。」「人手不足。」「システムがない。」などの阻害因子が出た。定期的に会合を開いてお互いを知ることから始めなければならない、という結論に落ち着いた。

足寄町福祉課寺本圭祐さん(社会福祉士)から「地域住民を守る」という講演。足寄町の高齢化率は33%。つり橋を渡らないと行きつかない家や馬と共に生きる家、鹿柵の中で鹿と共存する崩壊寸前の家を紹介。外風呂と外トイレの家がまだまだある。崩壊寸前の家に帰りたい脳梗塞後遺症患者さんの事例を多職種で検討し、家族と話し合いもした。結局、「本人はどうしたいのか?」が問題となり、本人と面談。「1回も家を見ていない」という話がでたので、「いよいよ家へ」帰った。自宅で寛いだ後、素直に「また病院へ」戻った。「髪を切って施設へ行く」と、納得された様子で決意を語った。
行政としては、「だれのためなのかを考える」、「それぞれが単独では何も解決しない」ことを学んだ。今回は、医療機関と連携がうまくいったため。現在、循環型支援システムを模索している。

研修医から振り返り2題。その前に司会役の松浦武志医師からSEAの説明。

ある研修医。54歳女性。糖尿病、脂質異常症あり。HbA1c:12%でインスリン導入の依頼あり。都会に娘が居住。統合失調症で一人暮らしである。今回三回目の入院。これまでインスリン導入を拒否。入院すると血糖値も改善していた。糖尿病コントロールの経緯が書かれていない。患者へインスリン導入について了承を得ないで紹介している。インスリン導入の必要性を説明したが、最終的には導入を見送った。紹介してきた医師に、同意をとってもらいたかったことを記載して郵送した。
娘にもっと関わってもらってはどうか、電話で主治医に確認してはどうか、食事の宅配サービスを利用する、という意見がでた。

ある研修医。嚥下障害、摂食不良の高齢者。認知症で寝たきりの70歳代男性。胃癌手術後、ASO、心不全。誤嚥性肺炎、踵の壊死で入院。脳の委縮。尿道カテーテル留置状態。
痰からみが強く、SaO2が低下したため、食事を止めた。ここで栄養管理のレヴュー。多くの家族は、栄養管理についてどうしたらよいか「わからない」と答える。最終的に、点滴ののみで、家族の持ち込み食可とした。その後、家族から病院食を食べさせたいと提案あり。数日後、永眠された。
クリニカル・パール:患者さんと医療者側で認識の差を自覚することが大切である。

理学療法士、栄養士、看護師、社会福祉士等、様々な職種の方々が参加してくれたため、医師だけでは思いつかない意見が出た。多職種によるカンファランスの重要性を再認識させられた。

今回は1泊1,070円の青年の家を利用。簡易ベッドに自分でシーツや枕カバーを付けて就寝。学生時代に泊まったユースホステルを思い出した。翌日、玄関前で記念写真を撮ってバスで4時間半かけての帰宅の途についた。(山本和利)