札幌医科大学 地域医療総合医学講座

自分の写真
地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年10月28日金曜日

家庭医、家庭医療、家庭医療学

10月28日、医療福祉生協連 家庭医療学開発センターの藤沼康樹先生の講義を拝聴した。講義のタイトルは「家庭医、家庭医療、家庭医療学」である。まず、自己紹介をされた。

日常遭遇する患者さんたちを次々と紹介された。
家庭医が思春期を診る。17歳女子高生。咽頭痛。予防的介入をすることが大事。都内の高校からの依頼講義は違法薬物、等が多い。

家庭医が子どもを診る。1歳の男児。微熱。第1子に何を聞くか? 予防注射、乳児健診。両親、祖父母の健康問題の相談に乗る。家族志向性小児保健。比較的元気な急性期の症状に対応する。夏休み子供企画。医学部1日体験入学。夏休みの自由研究になる。

54歳男性。腰痛。尿酸が7.8mg/dl.紹介が必要な腰痛(うつ病、膵がん、椎体炎)を除外する。

62歳男性。高血圧。定年の時期。夫が夫人の行動をチェックしたりすると、夫婦の危機となることあり。

44歳女性。糖尿病で血糖降下剤を内服。HbA1c:8.8%。夫がタクシー運転手、姑がアルツハイマー病、息子が高校中退。家族ライフサイクルを考慮する。タクシー不況、介護が大変。息子の突然の変化、肉食中心の食事。家族全体の相談役である。

27歳の女性。人混みで動機。パニック障害。アルコール、うつ病、パニック障害が家庭医が診る3大疾患である。

78歳男性。前立腺がんで通院中。がんの早期診断が重要。診療所のトイレにHIV、性感染症等のパンフレットを置く。予防と健康増進。待合室でインフルエンザのレクチャーをする。少人数で塩分について話し合いをしてもらう。(健康テーマパーク)

18歳男性。大学受験のための診断書希望。継続的に診る。医師がその人にとっての便利な資源になっている。

63歳男性。妻と二人暮らし。アルツハイマー病。家庭医はどう診るか?日本は、神経内科→精神科→在宅医療、となっている。

6歳女児。咳、鼻水。母親は妊娠中。大工の父親は喘息だが喫煙者。

非常に複雑な事例。50歳男性。リストラ対象。中国から帰国した妻。不登校の娘。アルツハイマー病の姑。

89歳女性。夜間尿失禁。糖尿病。利尿剤が増えた。膝OAで整形外科に通院中。白内障でよく見えない。4つが累積して尿失禁が起こっている。家庭医が高齢者を診る。50%しか解決できない。「物忘れ」「失禁」「元気がない」「フラフラする」などの問題を得意とする。健康なところ、元気なところを伸ばす(健康生成論)。

特定集団のケア。母子寮で予防接種を受けていない子供が多かった。公営団地で「孤独死」が多かった。地域でもっとも健康格差のある分野への取り組み。

五十嵐正絃氏の言葉が好き、「長く身近にいて、すべてに関わる」を紹介。

家庭医のよろず相談とは
日本は医療システムの使い方を国民に指導しない唯一の国である。ガイド役が重要。

臓器別専門医のケア・モデルは、「病い・疾患 = 連続体 患者 = エピソード」である。
一方、家庭医療のケア・モデルは、「患者/家族 = 連続・継続 病い/ ライフイベント = エピソード」である。何かあったら相談に乗る。年代別年間死亡者数の推移をみると百万人。将来は160万人。その25%が在宅死。

在宅医療の実際の事例を提示。がんの在宅緩和ケア、非がんの在宅緩和ケアが重要。

かかりつけ医と呼ばれるその医師がなにができるかがはっきりしない。質保証がされていない。保証するために、新しい言葉が必要である。

藤沼先生の気さくな人柄に好感をもった学生が多かった。家庭医の具体的なイメージができた、家庭医療とは深さよりもバラエティである、家庭医の振り幅の大きさを知った等、好意的な意見が寄せられた。藤生沼先生、ありがとうございました。(山本和利)