札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年10月27日木曜日

医療の裏側

『医療の裏側でいま何がおきているのか』(大阪大学医学部 医療経済経営研究チーム編、ヴィレッジブックス、2009年)を読んでみた。

社会保障制度
1. 社会保障:国民同士の助け合い
2. 社会福祉:「ハンディキャップ」者へ役所が給付
3. 公的扶助:生活保護
4. 保健医療・公衆衛生:伝染病予防施策

日本は国民皆保険:サラリーマンと自営業者の二本立て。一般歳出の45%が社会保障費である。医療費の対GDP比は8%。1.2人の人間で一人の人間を支える時代が来る。
低出産は結婚・出産に伴う3つの壁があるからである。1)結婚の壁、2)出産の壁、3)複数の子供を持つことの壁。また夫が家事への参加が低いことも問題である。

給付のカットが始まった。介護保険に利用者が倍増。

個々の発言。
小塩隆士氏。「所得控除」をやめて「税額控除」に移行する。生活保護者に補助金を与えて、その金額で保険料を払ったとみなす。このような「マイナスの税金」をオランダが実行している。

武田裕氏。必要なのは一生涯一カルテ。健康増進をする医療施設と早期発見をする医療施設、そして病気の人が行く医療施設とをきちんと分類する。各施設が情報を共有して、その人物の「生涯カルテ」をつくる。ところがこのシステムがないため、患者さんは「できれば、軽い症状のときから最高レベルの医療施設に行きたい」と希望する。大病院集中が起こる。

市民病院を保健所と統合して、地域医療のコーディネーション機能を果たすようにする。

西村周三氏。自分の専門分野から出ようとしない日本人。日本の医療は産業として成立していない。薬剤師の有効活用。IT化が逆に負担になっている。

跡田直澄氏。自己負担3割は覚悟しなければならない。「医療基金25兆円」を準備し危機を乗り切る。保険料を年1.5兆円アップさせて、その分を基金として積み立てる。

医師の発言はあえてここに載せなかった。様々な分野の方々が医療再生策を打ち出している。長期的な視点でよりよい医療システムを構築したいものである。(山本和利)