札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年2月28日火曜日

臨床推論 背部痛

2012年2月27日、4年生に「臨床推論② 背部痛」を講義しました。

学生の皆さんと一緒に当直していると仮定して、ある日の救急外来の設定で講義を進めました。
76歳の女性、主訴は背部痛、鑑別疾患リスト→病歴聴取→仮診断→身体診察→臨床検査→
診断の流れに沿って、診療(講義)を進めました。以下、講義の要点です。

大動脈解離の予測因子
(1) 破れるような、あるいは引き裂くような痛み
(2) 脈拍欠損、血圧の左右差(20mmHg以上)またはその両者
(3) 胸部X線像での縦隔または大動脈の拡大

大動脈解離の予測因子
n 3つの予測因子が全てなければ解離の診断は否定的(LR=0.1)
n 予測因子が2つあれば解離が肯定的(LR=5.3)
n 3つの予測因子が全てあれば解離が確定的(LR=66)

背部痛患者の診察におけるred flag sign(重篤な疾患の可能性がある徴候を示す。)
① 年齢が20歳以下または55歳以上
② 最近の外傷歴
③ 持続進行性であり、安静臥床にて軽快しない疼痛
④ 胸痛を合併する症例
⑤ 悪性腫瘍の既往
⑥ ステロイドの常用者
⑦ 免疫不全患者(HIV陽性など)、薬物乱用
⑧ 全身状態不良例
⑨ 原因不明の体重減少
⑩ 馬尾症候群(膀胱直腸障害など)
⑪ 体幹・四肢の変形を有する症例
⑫ 発熱してる症例を紹介しました。

学生の積極的な発言にも助けられて、背部痛の臨床推論を進める事ができました。学生教育に携わるものとして、より良い講義が出来るよう今後も自己研鑚に努めます。(助教 河本一彦)