札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年2月3日金曜日

武器としての決断思考

『武器としての決断思考』(瀧本哲史著、星海社、2011年)を読んでみた。

著者は京都大学准教授。本書は、大学1-2年生を対象に行った「意思決定の授業」を本にしたものである。

著者のいう武器とは何か。ディベート能力のことである。もう一歩すすめて、ディベートすることを通じて、論理的な能力を涵養することである。

「知識」「判断」「行動」の3つをつなげて考えるが重要。知識だけの人間は「コモディティ人材」と呼ばれ、他の人材と交換可能なので使い棄てられる。3つをつなげて考える人材こそが交換不可能な優秀な人材である。

ここではエキスパートとプロフェッショナルの違いを強調する。エキスパートとは、ある分野についての専門的な知識・経験が豊富で、それを売ることで生きている人たちのこと。一方、プロフェッショナルとはその上位概念であり、専門的な知識・経験に加えて、横断的な知識・経験を持っていること、そして、それらをもとに、相手のニーズに合ったものを提供できる人のことである。要は、相手の立場に立って、相手の代わりに考えてあげることができること。これからの時代、エキスパートの価値は暴落してゆくという。

私たちがよく行う議論では、慣れていることを重視し、成功体験を踏襲しやすい。限られた情報や枠組みで考えてしまう。これまでのコストを過大に評価してしまう、等の傾向が見られる。それを打ち破るには、ディベートが最適という論旨である。それについての方法は本書を読まれたい。

ポイントは、「「いまの最善解」として結論をだすこと、自分自身の意見を修正する態度を身につけること。どうでもいい議論はやめること。漠然としたテーマでは話し合わないこと。「メリット」と「デメリット」を比較すること(それぞれ3つある)、である。

本書を読んで、わかったことはどの分野であれ、医療における総合医のようなジェネラリストが求められているということである。総合医を目指す人で、アイデンティティに自信が持てなくなっている場合には、特にお勧めである。(山本和利)