札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年2月24日金曜日

海にはワニがいる

『海にはワニがいる』(ファビオ・ジェーダ著、早川書房、2011年)を読んでみた。

アフガニスタンで暮らしていた少数民族(ハザラ人)の少年が、迫害を逃れて、パキスタン、イラン、トルコ、ギリシャと密入国を繰り返し、イタリアにたどり着くまでの物語であるが、事実に基づいているそうだ。この少年の体験を聞き取って、イタリア人作家が本にしたものである。

故郷のアフガニスタンでは、タリバーンが地元の教師を射殺して、ハザラ人学校を廃止している。そんな中で母親からの戒めは、1)麻薬に手を出すな、2)武器を持つな、3)盗むな、である。母親に連れられてパキスタンに逃亡。その後、母親が失踪。途中、トラックの荷台に木の柱が何十本も積まれているが、実は盗むものがないので電柱を盗んでいるのだそうだ。

パキスタンでの給料なしの労働。貯めたお金を使ってイランへ脱出。そこで、建築現場で寝起きして建築作業を続ける不法滞在者の群れ。警官に捕まり収容所へ。警官に捕まりアフガニスタンへ強制送還、等が描写される。

小説としてよりも、ドキュメンタリーとしてとらえて、世界にはこんなにも過酷な人生を10歳から送る少年が居るのだと知る機会になればよいのかもしれない。(山本和利)