札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年2月25日土曜日

医療面接実習(1 )

2月21・22日両日に4年生に医療面接の実習を行った。これはOSCEの試験課題である医療面接の練習でもある。

この数日前の臨床推論の講義の中で、「診断のための情報の7-8割は病歴聴取から得ることができる」「臨床推論の中で病歴聴取は最も大切」と教えたばかりである。

今回の医療面接実習も、基本的には「患者さんの診断のため」に必要な医療面接の仕方を実習することではある。しかし、今回の実習は患者さんから「医学的な情報」を聞き出すための技術にとどまらず、「患者さんの病気に対する思いや心配事」や「生活上のストレス」「不安なこと」など、心理社会的な背景にまで踏み込んで面接をする技術の実習である。

実際、今の医療現場ではあまりにも医学的なことに偏りすぎているため医師と患者さんの間で思いがすれ違うことが多々ある。

たとえば、腹痛と下痢を主訴に来院した患者さんが、「医学的には」急性胃腸炎で特に何もしなくても数日で治ってしまう病気だったとしても、患者さん本人が「癌ではないか?」という不安が第一にある場合、「医学的に正しい急性胃腸炎の診断をつける」ことよりも「癌ではないことをこの患者さんにわかりやすく説明する」ことこそがこの場合に最も求められていることなのである。そういう患者さんの思いに寄り添う面接ができることを目的とした実習である。


今回はいくつかのシナリオを用意して、医学生が医師役と患者役に分かれてそれぞれ練習するのであるが、なかなかシナリオに書かれた患者さんの思いにまで踏み込んだ面接ができない。

こうした面接には「傾聴」や「共感」といった、「こうすればいい」と言ったマニュアルにできないような技術が必要である。学生たちは、「それは辛かったですね」「随分と痛みを我慢されたんですね。」「今回の受診に際して不安なことはありますか?」など、練習の場では「不自然で白々しく感じてしまう」言葉を駆使して、なんとかうまく面接を出来るようになろうと四苦八苦しながら取り組んでいた。

次回の実習は学生同士ではなくSPと呼ばれる「模擬患者」さんを相手に面接の練習をする予定である。模擬患者さんは札幌医科大学病院で院内ボランティアをやっていただいている一般の方々である。SPさんはこの1ヶ月、患者役をうまく出来るよう、ボランティアで当講座に足を運んでもらい練習をしていただいた。皆さん医学生さんの教育のお手伝いをしたいという気持ちからSPを自主的にやってくれているのである。その志には本当に感謝したい。

学生諸君も、自分たちの実習はこうした方々の思いがあってこそ成り立っているということを、肝に銘じて実習に臨んで欲しい。(助教 松浦武志)