札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年3月1日木曜日

地域通貨

『地域通貨』(嵯峨生馬著、NHK出版、2004年)を読んでみた。

貨幣とは複数のコミュニティで共有された「約束事」である。必ずしも貨幣=法定通貨とは限らない。
貨幣の4機能。1)価値評価機能、2)交換機能、3)蓄積機能、4)増殖機能。
シルビオ・ゲゼルが利子をマイナスにする「自由通貨」という考え方を提唱した。地域通貨とは、「ある特定の地域、コミュニティの範囲に限り流通するお金」のことである。効力を約束されていない。地域内で調達する割合が高いような商品・サービスは地域通貨の利用できる割合が高く設定されている。

1999年から急速に地域通貨が増加しているそうだ。
地域通貨に類似するものに地域振興券が思い浮かぶ。その地域振興券はうまくよかなかったという。その理由は、大手流通業者にまわり、地元商店街に回らず、日常的な買い物に使われ、新たな消費に繋がらなかった。ばらまき(参加して得たものではない)、「円の代わり」に過ぎなかった。商店街のポイント制度は大きな魅力になっていない。

地域通貨の3つの特徴。1)社会的な目的に基づいて発行されている、2)「私たち」という感覚をもつ、3)流れの道筋をデザインしておき、サービスの循環構造をつくりだす。

オーストリアのヴェルグルで労働証明書を発行し、月ごとに1%相当のスタンプを貼付しないと価値が存続しない制度をつくり、成功した。ニュージーランドのLETSの特徴は、参加者全員が通貨を発行する権利をもち、何の制約もない。性善説に支えられる。
「企業担保通貨」という発想もある。それは、NPOや市民団体のプロジェクトに企業が地域通貨を寄付する。

方式として、紙幣方式、通帳方式、口座方式の3つがある。

地域通貨として有名なものに、米国ニューヨーク州「イサカアワーズ」、スイス「WIR」、我が国では草津市「おうみ」、宝塚市「ZUKA」...等がある。

今後の課題として、ITを活用した地域通貨の方向性、複数の地域通貨に対応したプラットフォームの構築、インターネットとICカードの連携、法定通貨との並行決済システムの構築、代替ではなく補完的機能を目指す、等が挙がっている。

地域通貨を成功させる7つのポイントは、
1)定期的なイベントがコミュニティにいのちを吹き込む
2)「プロジェクト」がコミュニティを育てる
3)目で見える「ゴール」を設定することで喜びを共有する
4)わかりやすい「交換価値」を提供する
5)企業の「ポイントカード」に学ぶ
6)地域通貨が使えるお店ではなく「使うお店」に
7)底辺にあるのは「センス・オブ・コミュニティ」

マンパワーやお金の不足する地域における地域興しには、欠かせない発想ではないのだろうか。(山本和利)