札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年3月19日月曜日

指導医のための教育ワークショップ

3月17,18日、札幌KKRホテルでの北海道医師会主催の「指導医のための教育ワークショップ」にチーフ・タスクフォースとして参加した。前日、同会場で約1.5時間の打ち合わせ。参加者は32名。

開会後、役員挨拶(道庁、医師会)があり、タスクフォースから自己紹介があった。まずはよい雰囲気を作るため山本和利が「偏愛マップ(現在の愉しみを書きだす)」を用いて自己紹介・他己紹介するアイスブレークングを行った。

続いて旭川医大奥村利勝教授のリードでKJ法を用いての「北海道における医師養成」を120分。指導医師のモチベーションの維持、地域医療に関わる医師不足問題を挙げるグループが多かった。

昼食後、北大の川畑秀伸氏のリードで「アウトカム基盤型カリキュラム:目標と方略」について。最近の医学教育の流れを反映した内容にしてみた。GIOやSBOの作成はしないやり方である。将来稼業のマイナー科を続予定の研修医に対して内科または外科で3カ月研修するという設定で、コンピテンシィ(実際にできる能力)として2つ挙げてもらい、目標と方略を話し合ってもらった。眼科を目指す研修医の内科研修、耳鼻咽喉科を目指す研修医の内科研修、耳鼻咽喉科を目指す研修医の外科研修、皮膚科を目指す外科研修、等、研修医の興味がある内容を取り込んだ目標と方略が示された。各グループともコミュニケーションが重視されていた。かなり盛り込み過ぎのカリキュラムが提示される傾向が見られた。どこまでやらせるか熱い議論がなされた。

続いて天使病院の山本浩史氏のリードで「アウトカム基盤型カリキュラム:教育評価」。
評価の仕方とポートフォリオ(学習したものを集めて提示して振り返る)についての解説があった。評価の仕方を考えてもらい、態度についてのチェックリストまたは評定評価尺度を作成してもらった。各施設の事例を紹介することで議論が深まったようだ。

夕食後「北海道における地域医療」と題したナイト・セッションで北海道庁の杉澤孝久参事が講演をした。北海道で不足医師数は1,075名。内科医が219名不足。女性医師は12.9%。その後山本浩史氏が「市中研修病院での研修医の指導法」について講演された。研修医がhappyであることを目標にした研修の仕方を情熱的に語られた。質疑応答後、20:45近くに第一日の日程を終了し、参加自由の懇親会となった。

第二日目は、朝8;00開始。山本和利のリードで「フィードバックについて」、自己分析能力の高い研修医、生真面目だが気づきの少ない研修医、能力以上に自己評価が高い研修医という3シナリオを用いたロールプレイを行った。参加者から満足のいく内容であったというフィードバックをいただいた。

コーヒーブレイク後、札幌医大の松浦武志助教のリードで実際にヒヤリ経験をした研修医を招いて「ヒアリハット・カンファランス」を行った。「意識障害の93歳女性」から、最終診断についてと診断エラーのバイアスについての振り返りをしてくれた。一般に単純作業や初心者は経験すればするほど業績はあがるが、経験を積んだ群では、経験年数と業績とは相関しない。振り返り(significant event analysis)が必要である。成功者は、上司(ロールモデル)、プロジェクト、挫折から学んでいる。最後に、SEAセッションを自施設で行うにはどうしたらよいかをグループで話し合ってもらった。

昼食後、勤医協札幌病院の尾形和泰氏のリードで「参加者各自の10分間レクチャーとそのフィードバック」を行った。私が関わったグループのテーマは、「肺がんの診断」「頻呼吸・徐呼吸の鑑別診断」「尿路感染症」「ヨード造影剤投与の注意点」「月経痛」「熱性けいれん」「禁煙について」「こどもの発熱」「脂肪肝」「グリオーマ」「LASIK」「ソケイヘルニア」「頭部CTの脳以外の所見の読み方」「RA」等であり、変わったところでは「競馬の予想の仕方」というのもあった。それぞれが巧みに白板を使って簡潔に得意ネタを披露された。

最後に参加者全員から1分間感想を述べてもらった。ロールプレイや参加型カンファランスに対してこれまでで最高の評価を頂いた。修了証授与後、写真撮影を行い、散会となった。(山本和利)