札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年3月12日月曜日

東京難民

『東京難民』(福澤徹三著、光文社、2011年)を読んでみた。

地方から東京へ出てきて三流大学で惰性に流された生活をしていた主人公の大学生が、親からの仕送りが途絶え、授業料を払えなくなったことにより大学を除籍となる。両親は行方不明で、貯金もない。

どうやって都会で生活してゆくのか。主人公が底辺へ底辺へと転落してゆく様子が綴られている(ティッシュ配り、ビラ配り、治験の患者役、ホスト、ドヤ街での日雇い人夫、ホームレス)。定職に就けない者たちの苦悩や苦難がリアルに伝わってくる。

1年ほどの短い期間にもかかわらず、人間として徐々に成長してゆく姿が描かれている。できれば苦労はしたくはないが、人間を優しくし成長させてくれるのは苦労なのかもしれない。そんな気持ちにさせる小説である。(山本和利)