札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年3月11日日曜日

私たちの時代

『私たちの時代』(今村亮監督:日本 2010年)という映画を観た。

本作は、2010年にフジテレビ系列で放映されたドキュメンタリーを劇場映画化したものである。過疎化が進み寂れた小さな町、門前町は日本海に面した石川県奥能登の半島の先端に位置する。石川県のソフトボール名門校である門前高校女子ソフトボール部の活動を取材している。過疎化が進み何と廃校が決まってしまった。その取材中の2007年3月25日に能登半島地震(震度6強)が発生した。そのためであろう。被災直後の部員の様子、表情や被災地域の崩壊した家屋、家並みがマザマザと映し出される。そんな中での門前高校女子ソフトボール部の部員たちの活動が記録されている。

この部の女性監督は、門前高校の卒業生であり、体育の先生でもある。独身を貫き、遠隔地からの部員を20名近く下宿させている。この先生を慕うコーチもすごい。この二人で生徒達に「あきらめないことの大切さ」を教えている。その部員達がソフトボールに打ち込むために協同生活する姿がほほえましい。朝4時半に起床し、朝食の準備・掃除をして、朝練習に向かう。携帯電話禁止、日焼け止めクリーム禁止、化粧禁止。異性への関心等微塵も示されないが、そこには少女達の青春の輝きがある。

映画の後半は、被災した部員たちの高校存続最後の試合が映し出される。ライバル校津幡高校との因縁の試合である。レギュラーを外れた上級生、ピンチに立っても笑顔を絶やさない相手ピッチャ-。そこにはあり得ないようなドラマが待っている。(ドキュメンタリーとは思えない。現実は小説より奇なり)。

映画の中の卒業式で生徒が答辞を読み上げる。「世界が大きく揺れ、日本が挫折している。道標なき時代に、私たちはどこへ向えばよいのか。何を信じて進んでゆけばいいのか。」と。若者も苦しんでいることが伝わってくる。この少女達のソフトボールに打ち込んだ青春時代が、きっと長い人生の中で出会う彼女たちの苦悩を乗り越える一手段になるだろうと確信させる映画であった。(山本和利)