札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年3月3日土曜日

第1回全国地域医療教育協議会総会

3月2日、東京の砂防会館で開催された第一回全国地域医療教育協議会総会(第4回全国シンポジウム 地域推薦枠医学生の卒前・卒後教育をどうするか?)に、武田真一助教と一緒に参加した。

総会前に世話人会が行われた。

前田隆浩会長の挨拶後、総会。

■筑波大学前野哲博教授より全国地域医療教育協議会のアンケート結果の報告があった。
回収率が100%であった(N=80)。地域医療教育部門は73%の大学にある。そのうち寄付講座が48%[県が主]。半数が2年で期限切れである。教員数:139名。常置講座は40.5%。20大学には何もない(都市部の大学に多い)。将来が不安定。半数は消滅の可能性あり。臨床教授・准教授・講師は全国で4,700名。奨学金をもらっている地域枠学生は980名。6%の大学が地域枠学生について開示していない。90%の大学が地域医療教育を全学生を対象に行っている。80%が保証制度等に加盟している。予防接種は73%が受けている。交通費は40%、宿泊費は20%が学生の全額負担。

■帝京大学の井上和男教授の「地域枠学生のキャリア形成‐missionの自己実現‐」
日本の地域枠は家庭医になることが要件になっていない。入学時の地域医療への興味が在学時に徐々に減ってゆく。いくつかの試みが示された。ジェネラリスト・医療過疎地での経験を積み、キャリア形成につながる方策が必要である。real-case based learningが重要。

■岐阜大学村上啓雄教授の「岐阜県医学生修学資金と岐阜県医師育成・確保コンソーシアム」
167名に支給。2年間の初期研修は岐阜県内。その後、9年間のうち2/3は指定機関に勤務。
研修医は3名がドロップアウト(24名中)。マッチングは特別枠なくフリーに行う。専門科の選択は自由である。岐阜圏域や三次病院へ長期赴任は不可としている。

■和歌山県地域医療支援センター長の「和歌山県立医科大学の地域枠入学医学部生に対する取り組みについて」
2次医療圏に格差が激しい。都市部に公立病院が少ない。県民医療枠:全国公募。1学年に20人。奨学金なし。専門医養成コースを設けている。地域医療枠:県内募集。1学年5-10名。奨学金あり。9年間の義務年限。総合医養成コース。自治医大卒業生と同じ扱い。大学病院と一般病院の両方で研修する。和歌山県立医大の中に地域医療支援センターを設置。学生は将来が不安。他学生とどう違うのかわからない。対策としてセミナーを実施。自治医大卒業医師の講演。病院見学。学長が現場の病院に出向いて講演。問題として診療科・指導医の偏在、地域枠学生のモチベーションの維持が挙げられた。

■秋田大学長谷川仁志教授の「地域医療再生のための大学と地域医療機関による1年生からの卒前・卒後シームレスな医師育成体制構築‐地域枠推薦学生と総合力ある専門医‐。

キャリアアップ体制構築が必要。2次医療圏のレベル維持を目指す。県内で(一般卒業生が流出する分)地域枠医師数の比率が増す。研修1年目が大学、2年目臨床研修病院。県庁所在地以外は医師不足。地域枠学生を区別せずに1年生から総合力を付ける試みがなされている。1年生から診断学を学び、症例ベースで、各科で必要な勉強をさせている。また1年生からOSCEをしている。(長谷川仁志教授を中心にして6年間の教育システムを変革してしまった素晴らしい試みである。)

最後に質疑応答が行われた。全体としては、総合医・専門医といった一律のものを示すのではなく、各県が各々の事情に応じて努力してことが重要であるという方向性で締めとなった。(山本和利)