札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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2012年3月23日金曜日

ロコモとメタボ

3月21日、札幌医科大学においてニポポ・スキルアップ・セミナーが行われた。講師は札幌徳洲会病院の森利光院長である(3回シリーズの最終回)。テーマは「ロコモとメタボ」で,参加者は8名。

メタボリック・シンドロームとロコモティブ・シンドロームとの関係について講演された。

メタボリック・シンドロームとは、虚血性心疾患合併の高リスク状態である多危険因子保有状態である。人は血管から老いる。生活習慣から血管障害に至るプロセスとして「メタボリック・ドミノ」という概念が言われている。

日本の死亡変遷を見ると、現在は悪性腫瘍、心疾患、脳血管障害が上位を占める。そこで心血管イベントの防止する必要がある。各学会からの集計によると、高血圧;4000万人、糖尿病:2000万人、認知症:220万人、骨粗鬆症:1100万人、慢性疼痛:2300万人、OA:1000万人、腰部脊椎管狭窄症:240万人と報告されている。

ロコモティブ・シンドロームとは、運動器疾患により要介護になるリスクが高い状態。歩行がうまくできないで、日本独自の概念である。

日本には200万人の寝たきり患者がいる。9.3%は骨折・転倒が原因である。12.2%は関節疾患。最終的に第1位は脳卒中で、第2位は運動器疾患となる。

骨格筋は加齢とともに低下する。握力もそれに比例する。それゆえ、骨格筋の衰えは握力測定でスクリーニングできる。人は骨から老いる、とも言える。「メタボリック・ドミノ」と同様に寝たきり状態に至る「ロコモティブ・ドミノ」という概念も提唱される。

高血圧は骨折をきたしやすく、その尤度比は2.7倍である。股関節骨折は心不全、脳卒中、末梢動脈疾患でも増える。逆に骨粗鬆症は動脈硬化をきたす。骨折患者に糖尿病が多い。コラーゲンの質の悪化を招く。骨形成が悪化し、骨の脆弱性が増す。

このようにロコモとメタボは関係しあっている。予防に運動が推奨される。運動療法の効用は、骨密度の増加、インスリン感受性の増加、LDL-C低下をもたらすことである。

具体的には、スクワットを1度に5-6回を一日に3回行う。開眼片足立ちを左右1分ずつ一日3回、が勧められる。

最後に森先生からのメッセージ。健康とは生きがいを大切にすること。やりたいことを実現させるために健康を守る必要がある。QOLとは、自分で選んだ人生を自分らしく生きること。総合医こそロコモにアプローチをしてほしい。

整形外科専門医からはなかなか聞くことのできない斬新な講演であった。(山本和利)