札幌に来てから12年間、天皇誕生日は働いている。
『言い残しておくこと』(鶴見俊輔著、作品社、2009年)を読んでみた。
母親についての言及がすごい。彼女は愚かで気狂いであったと述べている。「You are wrong」と息子を愛という名で責める母親に、「I am wrong」で生き抜いてきたと述懐している。宗教にしても、共産主義にしても「You are wrong」を押しつけて来ると。それが厭だから宗教にも主義にも従わないと。これを読んで私の母親に似ていると思った。私は母親に優等生であることを求められ、悪さに対してはお灸をすえられ、棒を持って追いかけられたこと、熱が出て学校を休むと氷枕で頭を冷やしてくれながら布団に入ってきて抱きしめてくれていたこと等を懐かしく思い出す。
インタービュの中で印象深い人物に言及している。抜粋すると、「東大から小田実のような人間が出たのは奇跡だ」。幕末から150年のなかでいうと、ジョン万次郎と小田実がすごい。脳卒中後の姉鶴見和子を評価(それ以前の80年は評価していない)。戦後ショックを受けた人は、武谷三男と花田清輝。自分がやっていること、やったことを入れ込んだうえで歴史をみることができる人物として、羽仁五郎、武谷三男、竹内好、吉本隆明を挙げている。
著者の家系は勲一等をもらった人が多い。それを避けるために大学教授を止めたという。私にそんな機会は与えられるはずはないが、心構えとして見習いたい。著者が挙げた人物の著作を読みたくなった(羽仁五郎、武谷三男は懐かしい、大学生のとき読みました)。(山本和利)