『漂着』(小檜山 博著、柏艪舎、2010年)を読んでみた。
小檜山 博氏が5年がかりで書いた、日本の農業の悲惨な現状に対して怒りを込めて著したのが本書である。日本の農業人口が約300万人で、人口比2%しかなく食糧自給率が40%という。
滝ノ上から出てきて、札幌の三越前に座り込んで若い男と逃げた奥さんを捜すための登り旗を揚げる。その経過の中で、農業の悲惨な現状が綴られてゆく。マスコミに注目され、農業を軽視する評論家と主人公がテレビで討論する部分は面白い。話はどんどんとエスカレートし荒唐無稽な結論で終わる。
農民の子として生まれながら農業をせず、小説を書いている著者が後ろめたさも込めて書いた書でもある。農民の子として生まれ医師になった私に通じるところも多々ある。本書を読むことで、医療以外にも日本のアンバランスな面が多々あることを知る契機となろう。(山本和利)