札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年12月17日金曜日

インビクタス

『インビクタス 負けざる者たち』(ジョン・カーリン著、NHK出版: 2009年)を読んでみた。 原題は「Playing the enemy」であるが、翻訳タイトルは映画の題名と同じにしている。映画を観てすぐ市立図書館に本書を予約したが、順番が来るのに半年以上かかってしまった。

本書は、南アフリカ共和国初の黒人大統領となったネルソン・マンデラの苦難の人生を綴っている。前半が監獄と出獄後の半生、後半がラグビー・ワールドカップという構成になっている。反アパルトヘイト運動により反逆罪として逮捕され27年を監獄で過ごしたのに、白人に復讐せず、逆に新体制に取り込んでゆくマンデラの姿勢は驚嘆に値する。これは持って生まれた資質なのだろうか。私にはとても出来そうにない。黒人と白人のわだかまりを捨てさせ一体化させるために、ラグビーを通じて国民の意識を変えることができると信じて、弱小だった南アフリカ代表ラグビーチームの再建を決意する。黒人が反発するチーム名「スプリングボクス」という名前をあえて残す。自国開催するラグビー・ワールドカップに向け、マンデラはチームキャプテンのフランソワ・ピナールや選手達に、対話を通じてエンパワーを施してゆく成り行きや最後にラグビー・ワールドカップで優勝し、国民が一体になってゆく過程を読んでゆくと知らないうちに涙が出てくる。真に尊敬できる政治家とはマンデラのような人をいうのだろう。

『インビクタス 負けざる者たち』(監督 クリント・イーストウッド)は2010年に日本でも公開された。こちらはラグビー・ワールドカップを中心に描かれているが、やはり観る者に感動を与える。マンデラ役のモーガン・フリーマン、 フランソワ・ピーナー役の マット・デイモンもよかった。

西部劇を卒業した監督としてのクリント・イーストウッドの活躍は素晴らしい。「チェンジリング」(2008)、「グラン・トリノ」(2008)、「父親たちの星条旗」(2006)、「硫黄島からの手紙」(2006)、ミリオンダラー・ベイビー(2004)がお勧めである。特に一本に絞ると「グラン・トリノ」となろう。これはマンデラの生き方(利他主義)に通じている。(山本和利)