札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年12月28日火曜日

日本の食

『肥満と飢餓 世界フード・ビジネスの不幸のシステム』の翻訳者である佐久間智子氏が日本語版解説として「日本におけるフード・システム」を掲載している。日本の食の問題が簡潔に鋭く指摘されている。ここだけでも読む価値がある。

現在の日本の食文化に米国の対日食料戦略が大きく影響しているという。1950年代の食料援助が、米国の余剰小麦の海外市場開拓に使われた。給食制度でパン食を根付かせ、米食のアンチキャンペンを行い、小麦輸入を増やした(これらは農薬の収穫後散布小麦である)。

「農業基本法」と「貿易自由化政策」によって国産より米国産農作物を多く消費する構造に変革されてしまったのだ。大規模な単一作物栽培を奨励し、そのため除草剤、殺虫剤、化学肥料の使用量が増大した。そして遂に今では、日本は主要な食料を輸入に依存する希少な先進国になってしまっている。そのため、国際価格が大きく変動すると生産者と消費者の双方に多大な影響をもたらすことになる。また、米国の戦略によって身についた新たな食文化(食肉、トウモロコシ偏重)が、最貧国から食料を奪っているという現実もある。

さらに食の質も問題である。抗菌薬の多用、乳牛への成長ホルモン(発がんに関与)の投与が問題となる。最近増えた養殖魚では水銀やダイオキシンの残留量が多い。野菜では農薬と食品添加物が問題となる。このような方向へ広告を通じて大手流通業界が消費者を向かわせているのである。

お手軽な還元主義的栄養補給(サプリメントやジュース)では健康になれない。自然と折り合いを付けて来た過去の食文化に学ぶべきである。自然農法や有機農法への支援が必要だ。「安い食料」政策からの脱却が望まれる。人手不足を解消するためには、都市生活者が発想を変えて、休日など農家を手伝うなどの政策を推進することが必要となろう。

このような現実を知ると、根本に関与しないまま、医療などにチマチマと関わっていても日本人の健康を守れないのではないかと居ても立ってもいられなくなる。

札幌医科大学の年内の通常勤務は本日が最終日である。皆様、よいお年をお迎え下さい!(山本和利)