札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年12月29日木曜日

スガモプリズン・サリドマイド

昭和八十四年 1億3年万分の1の覚え書き』(伊藤善亮監督:日本 2009年)というドキュメンタリー映画を観た。

86歳になっても、戦い続ける一日本人に密着取材。太平洋戦争に出征し、後に戦犯として裁かれた飯田進氏。戦後の日本と共に歩んできた彼が、昭和八十四年(2009年)の現在も戦争の実態などを語り続ける姿を映すドキュメンタリーである。

戦争で派遣されたニューギニアで民間人殺害の罪で、敗戦後にBC級戦争犯罪人としてスガモプリズンに収監される。

一時は死刑宣告を受けるが、1956年に出獄。苦労しながら会社を立ち上げる。その後、長崎で被爆した女性と結婚し2児をもうけるが、長男の指が3本しかなく、前腕も短い障害児であった。その原因は原爆が原因ではなく、妊娠中に服用したサリドマイドが原因であると後に判明。

戦争犯罪だけでなく、薬害根絶がライフワークとなる。配偶者は40歳代で死亡し、息子も30歳代で、体調不良でありながら医療機関にかかることを拒否して死亡。死因は後にC型肝炎と判明。息子は何と二重の薬害被害者であったのだ。

次々と苦難が襲う人生が明らかになってゆく。時代がもたらした運命に翻弄されながらも、果敢に闘う飯田進氏。自分の置かれた状況や苦しさが些細なものに思えてくる。日本のこれまでのあり方や自分の生き方に再考を迫る映画である。(山本和利)