札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年12月9日金曜日

心電図が読めなくてもわかる心筋梗塞

12月9日、特別推薦学生(FLAT)を対象にしたランチョンセミナーに参加した。学生9名、教官4名が聴講。今回のテーマは、松浦武志助教による「心電図が読めなくてもわかる心筋梗塞」である。

まず、心筋梗塞を疑う患者さんを学生に提示してもらった。
「胸が苦しい」「中年・高齢の男性」・・・知っていないと出てこない。
年齢、性別、主訴を提示すること。19歳の女性の胸痛では心筋梗塞は考えない。作詞、作曲、歌手で曲目を予想できるか。AKB48、石川さゆり、の例を提示。

冠動脈疾患の有病率を問診で設定。
1)痛みは胸骨の裏か、2)労作で誘発、3)安静で消失、の3つを訊く。

60歳台男性で3つあれば、事前確率は90%。
尤度比(likelihood ratio)の説明。どのくらい確率を上げ下げするかの指標。
耳たぶの皺の尤度比:2.3
老人環(角膜):3.0、と言われていたが、最近否定された。

症状
・両肩に放散:9.7、左腕に放散:2.2、右肩に放散:2.7、発汗:2.0、謳気、嘔吐;1.9
・呼吸性の変動:0.2、鋭い痛み:0.3、体位による変化:0.3、触診で誘発:0.25
・ニトログリセリンで症状が消失:1.0

病歴で心筋梗塞を疑ったがECGが正常であった。
心筋梗塞患者で初診時のECGが正常なものが30%いる。

血液検査
・CK-MB;2時間以内:陽性で50, 陰性で0.01、2時間以降:陽性で18、陰性で0.46。
・トロポニンI:時間関係なく:陽性で47, 陰性で0.03。

痛みのない急性心筋梗塞が、33%であったという研究を示す。高齢者、女性、糖尿病、は要注意!否定するには慎重に。

心筋梗塞の診断は、問診(COMPLAINTS)、身体診察、ECG,採血、胸部XP、適切な経過観察、で行う。

参考文献
・聞く技術(上)(下)日経BP社
・考える技術 第2版 日経BP社
・JAMA版 論理的診察の技術 日経メディカル社
・マクギーの身体診断学 診断と治療社

エンターテイメントな要素を入れて、問いかけながら行われたので、学生さんも楽しそうに参加していた。(山本和利)