札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年12月18日日曜日

かすかな光へ

『かすかな光へ』(森康行監督:日本 2011年)という映画を観た。

教育研究者である大田堯(たかし)氏の教育に賭ける情熱を追ったドキュメンタリー映画である。93歳なのにかくしゃくとしている。教育学部で学んだ者によると教育界では30年以上前から教祖的存在という。

軍隊体験が人生を変えた。戦場ですべてを失い、ジャングルの中に放り出された。そこでは大学で学んだ知識は役に立たず、生き延びるのに役立ったのは生活に根ざす知恵と力を身につけた農民兵や漁民兵であった。その体験を糧に、敗戦直後、さまざまな職業の住民と共に“民衆の学校”作りに取り組む。そして、労働者の中に飛び込み共同学習というものを始める。阻害され荒んだ気持ちになっている村の不良青年と生活を共にし、彼らのつぶやきをガリ版に収録し、太田氏と生徒が心と心を通わせてゆく。しかしながら教育界にとって幸せな時代は敗戦の1945年から朝鮮戦争が始まった1950年の5年間であったようだ。

その後、国が教育方針をガラリと変える。家永教科書裁判に関わる。大田堯氏は幾つになっても人生の課題を見つけて、真正面から向き合っていく。93歳の今も続いている様子が映し出されてゆく。

講演では聴衆に基本的人権とは何かを問いかける。その中で彼が強調する教育観は次の3つである。
1)違いを認めること、
2)自ら変わること、
3)関わること、である。
その一貫した考えの基に、自然や生物との共生、障害者の教育・生活実践に関わってゆく。

教育とは、他者を「違っていいのだヨ」と認め、日々の生活の中で自分自身が成長しながら、他者と関わってゆくものである、ということだ。それは現実の中に垣間見えるかすかな光への道を求める行為である。

そう思って日々を過ごそう、学生と関わろう。気持ちを新たにした。(山本和利)