札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年12月15日木曜日

貧困のない世界

『貧困のない世界を創る』(ムハマド・ユヌス著、早川書房、2008年)を読んでみた。

著者は1940年生まれ。大学の経済学部長を勤める傍ら、大飢饉後に貧しい人々の窮状を目のあたりにして、その救済のためにグラミン銀行を創設した。これが多くの国際機関やNGO等の支援活動の模範となり、現在世界の1億人以上がマイクロクレジットの恩恵を受けているといわれる。2006年、ノーベル平和賞を受賞。

世界総所得の94%は、40%の人々にしか行き渡らず、残る60%の人々は、世界総所得の6%で生活しなければならない。世界人口の半分は一日当たり2ドル以下のお金で生活している。

ユヌス氏が創設したマイクロクレジット組織「グラミン銀行」について。
・30-40ドルを貸し出す担保不要のローンである。返済率は98.6%と予想に反して非常に高い。借り手はバングラテシュの貧しい女性であり、借り手自身がアイデアを出す。そうすることで、自己雇用を作り出す。アイデアを探り、それらを持続可能なビジネスに変えるである。銀行内部に五つ星の評価と報奨金制度がある。利益の最大化を目指さないのが特徴である。

この銀行は「ソシャル・ビジネス」であるそうだ。その特徴は、
・慈善事業ではない
・すべてのコストを回収する
・損失がない代わりに配当もないビジネス
・自己持続型
・投資家は自分の資金を取り戻せる
マーケットに貧しい人々の利益を保護するための合理的な規則とコントロールが必要である。

貧困を克服する「16箇条の決意」が掲載されている。
1. 規律、団結、勇気、勤勉
2. 家族の繁栄
3. 家の修理・新築を目指す
4. 野菜を育てる
5. 種まき
6. 家族計画
7. 教育
8. 清潔な環境
9. 簡易トイレ
10 清潔な飲料水
11 お金のかからない結婚
12 不正防止
13 みんなで大きな投資
14 互助
15 規則の回復
16 社会活動参加

グラミン・ダノン・ヨーグルト立ち上げの逸話が興味深い。

「消費者へのメッセージ」として次のものが掲載されている。
・本当にそれが必要か?
・再生不能資源を消費していないか?
・下取りしてくれるリサイクル店で買う。
・社会的責任のある家を建てる。
・世界市民としての消費。

学問を社会変革に適用したすばらしい事例である。バングラテシュの貧困克服に比べれば、日本の地域医療の再生など簡単そうに思えるのだが・・・。どうして出来ないのだろうか?(山本和利)