札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年12月16日金曜日

出張授業ライブ

12月16日、和歌山県立医科大学の2年生に「地域医療の現状と取り組み」という講義を行った。これまで3年間は4年生が対象であった。今年度から2年生に移行し12回のシリーズになったそうだ。県内・県外から有名な先生方の講義が既に行われており、個性的な内容が求められるところである。

教室に入ると150人収容の前の方には誰も座っていない。昨年まで4年生の60名に話していたのが、今回の2年生は112名と倍に膨らんでいる。まず講義はライブ感覚が大事であることを強調した(ライブは最前列が特等席なのに・・・)。

映画の話(ダーウィンの悪夢)を導入に「合成の誤謬」の話をした。医療界においても医師それぞれが自分自身の眼の届く範囲で一生懸命やっていても、総和として地域医療がうまくゆかないことに結びつけて話した。

次に実際に出会った患者さんの例を挙げながら、現実の医療の現場は混沌として、単純化できず一筋縄ではゆかないことを話した。

最後に、札幌医大の4年生にも話した地域医療再生の5つの作業仮説を述べた。(使ったスライドは90枚。)

講義をしているうちに、教室が静まり返って来る。一人ひとりが耳を澄ませ、傾聴しているのがヒシヒシと伝わってくる。時に学生さんに問いかけながら講義は進む(ビデオ撮影もされていたが、ビデオではこの空気は伝わらないと余計なことを口走ってしまった)。

講義時間を5分間残して感想を書いてもらった。ほぼ全員がA4用紙いっぱいに書いてくれている。学生それぞれ思いれの内容は異なるが、熱い授業であり、ライブ感覚が強いと褒めてくれる学生が多く、うれしくなった。私の本を複数読んでいるという3年生がワザワザ聴講に来てくれていた。

学生の感想を紹介しよう。私と中村哲さんの話から「それぞれが思うようにならない人生に意味を見いだせるまで必要とされている働きをし続けた結果が今にあるということに勇気づけられた」
「患者さんはどんな人なのか、そんな生い立ちで今何を考えているのか、悩んでいるのか。臓器だけでなく患者さんを診る、ということはそういうことで、地域医療だけではなく医師すべてにおいて求められていることであると強く感じ、曖昧さに対処できる心の強さや柔軟性を身につけてゆきたいと思った。」
「総合医のイメージが変わった(臓器を治すというより背景を重視する)」
「一度は若いうちに、地域で医療をしてみたい」
「困難な方を選択する人生を送りたい」
「これまでの授業と全く違う授業であった」
「熱いメッセージであった」
「医師に公的な使命があることを再認識した」

若者は、叩けば響く!今、若者が熱い!静かな教室に若者たちの思いが充満する至極の1時間半であった。(山本和利)