札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年12月25日日曜日

地域密着型チーム医療実習報告会

札幌医科大学では医学部と保健医療学部が合同で地域医療志向の医療系学生を育てる地域医療合同セミナーの講義が医療人育成センターを中心に行われています。我々地域医療総合医学講座もメンバーとして協力しています。

今回は12月21日16:30より記念ホール2F講堂に、学生の実習先である根釧地区、留萌、利尻地区の首長さんはじめ自治体関係の方、病院長はじめ事務方、福祉関係の代表者の方々を招いての実習報告会です。

地域密着型チーム医療実習は3年生の3グループ、地域医療基礎実習合同報告会は1年生で留萌3グループ、利尻4グループが発表しました。

個別のグループの発表は仔細にわたりますので、主なメッセージをまとめると

多職種連携と協働
・ 地域に出て医療職のチームワークを学んだ。
・ 多職種連携は例えて言うならまるでF1のピットチームのような役割。
個々の職が地域の医療に協力しベストを尽くす。
・ 多職種が協働することで色々な視点からの情報共有ができる。それにより患者さんへのアプローチ方法が増える。
・ 他の医療者、患者さんへの対応でもコミュニケーション能力が大切。
・ コメディカルの話をしっかり聞き、意見を尊重できる医師になる。
・ 様々な職種の方たちから教えられ、問いを投げかけられる事で自分の中に学びが形成できた。
・ 同じ医療福祉関係者にも色々な考え方や目的があり、ベストの選択は一つではない。協力しながらベターを求めていくことが大切。

地域と医療福祉の繋がり
・ 医療福祉従事者だけでなく、地域に支えられていることが実感できた。
・ 町が一つのホスピタルとして機能しているようだ。
・ 地域中核病院の役割を知ることができた。
・ 地域中核病院の中には行政と地域一体で新しい地域医療の仕組みを創りだそうとプロジェクトを立ち上げ取り組んでいる。
・ 地域のネットワークを作り、維持する事にはお互い顔の見える関係、まず信頼関係を構築することが大切。大きな街ではなく、町ではそれが育みやすい。
・ 生活体験(コンブ加工場、外来生物駆除、生物生態学・海洋生物採取)によりその土地の風土、産業、歴史、自然が人々の生活や健康に密接に関わっていること、そこにいる人々の思いを感じることができた。
・ 医農連携:果樹農園を患者さんに開放し、地域の資源を有効に使ってリハビリも行なっている試みに感心した。
・ 患者さんにとっては地域こそ生活の場であると知った。

実習を通じて
・ 告知について患者さんへの気持ちを思いやることの大切さを学んだ。
・ 胃瘻造設術を行なう事について、介護の負担やリスクなど様々な面から問題点を考えた。
・ 出産直後の女性(褥婦)さんへのインタビューから地域で命を育む事の意味を知った。
・ 老人介護施設で介護実習を行い、声かけ、食事介助、デイサービスの補助をしたが、自分たちの技術が無いこと、職員のプロフェッショナルな技術に気がついた。それと共に職員の仕草の細かな配慮にまで目が行くようになった。
・ 早期体験実習を通じて将来の医療者像にビジョンを持つことができた。
・ 知識だけでなく体験として記憶に刻めた。

実習を踏まえての提案
・ 医師になって未知の地域医療に長期間拘束されることを嫌う学生はいる。
・ 大学では経験できない、見えてこない地域医療の見学体験の追加を。
・ 地域医療を知っておくために、もっと地域での実習を増やして欲しい。
・ 地域で医療を体験すること自体が一つの学習であると思う。
・ 履修年数の見直しも検討。
・ 札幌医科大学の講義と共に平行して実習を行い、自分たちの到達度を測るとともに、医療人としての人格形成を測ることが大切。
・ 地域で必要とされているのは一人の自己犠牲ではなく、地域医療システム全体の改善が必要。
・ しかしシステムの改善では間に合わないほど極限にあると感じた場面も目にした。やはりそうなるとシステム改善の先駆けとなる人が必要。

各グループとも非常に真面目に取り組んできた様子がヒシヒシと伝わる熱いプレゼンでした。一つのグループは熱い思いを伝えるためにマイクを使わずに肉声で発表していました。

まだ医療の入り口に立った彼らがこうして地域に出向き、新鮮かつニュートラルな立場で彼らの問題意識を地域・大学双方への忌憚のないフィードバックを返してくれる事は大変重要な事だと思います。

特に彼らが一様に伝えていたのはコミュニケーションの大切さと、現場の医療福祉関係者や地域の人達から学ぶ喜びと学びの多さ、それによる自己啓発の大きさでした。

このような学生さんが実際に現場にでて、地域医療を支えてくれる事を願っています。(助教 河本一彦/稲熊良仁)