札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年9月29日木曜日

大津波と原発

『大津波と原発』(内田樹、中沢新一、平川克美著、朝日新聞出版、2011年)を読んでみた。

東日本大震災1カ月後に行われた鼎談を出版したものである。「天災である津波と原発事故は全く異なる事象である」という共通認識から鼎談は出発する。

天災に対する対処法はわかっているが、原発事故に対する対応がわからない。日本の首脳部はそれに対して場当たり的なブリコラージュで対応していることを批判する。

命に関わる問題なのに経営効率が優先され、心ある科学者の提言が無視されてきたことを問題視している。

宗教学者の中沢氏は原発を神学問題ととらえて発言している。さらに原発反対を核とした「緑の党」を立ち上げたい、また首都機能が分散され、札幌、大阪、博多がこれから重要な場所になっていくと述べている。

来るべき未来モデルは、また復興の基本思想は、どうあるべきなのか。課題は多い。

災害後の発想として、「贈与」(ボランティアの発想)が重要になるということは三者とも一致した意見である。

長期的な視野で、日本全体を考える政策(医療はもちろん)が求められていることを痛感する。この本の著者たちが日本においては本流ではないこと(異端)が一番問題である、と感じるのは私だけであろうか。(山本和利)