札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年9月28日水曜日

ハーフ・ザ・スカイ

『ハーフ・ザ・スカイ』(ニコラス・D・クリストフ、シェリル・ウーダン著、英治出版、2010年)を読んでみた。女性の待遇改善を訴える本である。

冒頭、一人の少女の話が掲載されている。純真な少女が騙されて国外の売春宿に売られる。やっと逃げ出して警察に向かうが、不法移民として逮捕された。1年間の服役後、本国に送還されるはずが、警察官が人身売買業者へ譲り渡し売春宿に売り飛ばされた。その後、故国に帰って教育とマイクロローンを受けて自立して商売をしているという。

この後のページで、たくさんの女性が虐待されている例を提示している。そして、教育を受けて、逆境を越えようと闘う事例も示される。

妊婦の死亡がまだまだ多い。母体の死亡原因を求めると次の4つが挙がる。
1) 身体的要因
2) 学校教育の欠如
3) 農村部の医療体制の不備
4) 女性蔑視

毎年、中国では39,000人の女児が命を落としている。原因は親が女児に男児のようには医療を与えないからである。統計上多くの国で男女比に違いがあり、これは約1億700万人の女性が地球上から姿を消しているとアマルティア・センが指摘している。

この状況を変えるために、3つのプロジェクト、1)世界中の少女を教育する、2)貧困国にヨード塩を供給する世界的な取り組みに資金を拠出する、3)産科瘘を根絶する、を挙げている。

本書の主張を抜粋すると次のようになる。
「女性のエンパワーメントは教育から始まる。」
「女の子を教育するのは、一つの村全体を教育することなのだ」
「マイクロ・クレジットが女性の地位を向上させる」
「女性の政治参加が子どもの命を救う」
「女性のエンパワーメントは、経済的生産性の向上と乳児死亡率の低下に貢献する。また健康状態、栄養状態の改善にも貢献し、さらに次世代の教育機会を増大させる。」(山本和利)