札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年9月26日月曜日

指導医講習会

9月24、25日、第7回NPO北海道プライマリケアネットワーク指導医講習会にチーフタスクフォースとして参加した。当日、会場である札幌医大で7:00から打ち合わせ。受講者は14名。

まず山本和利の挨拶、タスクフォース紹介後、山本和利のリードで「アイスブレイキング」。偏愛マップを使って、雰囲気を和らげた。好きな項目には子育て、料理、お酒、ビールなどが挙がっていた。

続いて尾形和泰氏の主導で「カリキュラム・プランニング」を150分。教育のタキソノミー、一般目標(GIO)、行動目標(SBOs)の説明。途中、二人一組になって、相手の専門領域の教育目標を作りあって評価し合う作業をしてもらった。これは新しい試みで、大変盛り上がった。新しいカリキュラム・モデルを紹介。教育方略のSPICESモデルを紹介。学習方略、学習環境について言及(人的資源、物的資源、時間、場所の使い方)。ここで、二人一組で作ってもらった教育目標をどのように実践するについて方略を考えてもらった。続いて評価の仕方(形成的評価、包括的評価)を紹介。評価しようとするタキソノミーと評価方法を紹介。最後にRUMBA(real, understandable, measurable, behavioral, achievable)を強調して、セッションを終えた。

続いて、川口篤也医師の主導で「SEAを用いたプロフェッショナリズム教育」セッションを行った。なぜプロフェッショナリズムなのか、を解説。「新千年紀のプロフェッショナル憲章」を紹介。「家族旅行を半年ぶりに家族サービスを計画。出発直前に肺炎入院中の患者が急変したと連絡が入った」さあ、あなたならどうする。モヤモヤ領域をどう教育するか。背中を見せながら振り返ることの重要性を強調。行為中に省察し(独自で)、事後に省察し(チームや同僚で)、未来につなげる(reflection in action→on action→for action)。事例をSEA形式にして提示。その後、各自にSEAを書いてもらった。感情面に焦点を当てる。各グループの中で興味深い例を一つ選び、それについて討議した。非難されないという雰囲気がよかった、と受講者の声。

記念撮影(参加した証拠)。

昼食後、札幌医大松浦武志助教の主導で「SEAを用いたヒアリハット・カンファレンス」セッションを行った。はじめにリスク・マネジメントについてのミニ講義。人は何から学ぶか?先輩の背中、プロジェクトに参加して、挫折から、という意見がある。その後、濱野貴通研修医の事例「持続する嘔吐を呈する高齢女性」を通じてヒアリハット・カンファランスを実演してもらった。クリニカル・パール:「謳気、嘔吐に神経所見があれば頭蓋内病変を疑う。検査前確率を高める因子として、高血圧の既往、抗凝固剤の内服、加齢などが挙げられる。意識障害の合併症を疑った場合には、頭蓋内病変と全身性疾患とを分けて考えることが重要である。その際、血圧値が参考になる。家族からの情報は何よりも重要である。」。最後に自分の施設でSEAセッションを行うにはそうしたらよいかをグループで話し合ってもらった。

続いて、八木田一雄氏の主導で「上手なフィードバックをしよう」のセッション。自己分析能力の高い研修医、生真面目だが気づきの少ない研修医、能力以上に自己評価が高い研修医という3シナリオを用いたロールプレイを行った。3人一組でのロールプレイは研修医役、指導医役、評価者役をそれぞれ1回ずつ(緊張しやすく技術が未熟な研修医、当直明けで眠気を堪えて外来研修を受ける研修医、問題をあちこちで起こすのに自信満々の研修医の3シナリオ)。

続けて臺野巧医師の主導での「実践的研修評価」は、3シナリオを準備していずれか1つのシナリオに沿ってロールプレイを行った。まず「評価をしないで教育するのは、味見をしないで料理をするようなものだ」というスライドを提示。最初に初期研修医評価のための指導医会議(指導医、看護師長、看護主任、ソーシャルワーカー、等)を模擬体験した。患者ケア、医学知識、症例に基づいた学習とそれに伴う向上、コミュニケーション技術、プロフェッショナリズム、システムに応じた医療、の6項目について評価をしてもらった。

続いて、場所を変えて「北海道における地域医療の現状と道の取り組みについて」と題したセッションで北海道庁の杉澤孝久参事が講演された。医師数は西高東低。道内は全国並み。2010年6月現在、医師は道内では1,007名不足。質疑応答後、情報交換会となり、第一日の日程を終了した。

第二日目は、稲熊良仁氏の主導で「5マイクロスキルの実践」セッション。一番の問題は、研修医が考えて答える前に、指導医が答えを言ってしまうことである。今回お勧めのマイクロスキルは5段階を踏む(考えを述べさせる、根拠を述べさせる、一般論のミニ講義、できたことを褒める、間違えを正す)。外来患者シナリオ3つを用いて3人一組になってロールプレイ(シナリオの読み上げ)を行った。最後は、自分たちでシナリオを作成してもらい、各グループの自信作を発表してもらった。


最後は阿部昌彦氏の主導で「ティーチング・パールを共有しよう」のWS。研修医はお寺に住み込む修行僧のようだと例えた。(色つきの作務衣のような服を着て、禅問答のようなプレゼンをしている)。参加者各自が得意ネタで10分間講義を白板で行い、そのやり方へのフィードバックをしてもらった。次のようなテーマで行われた。マラソン、白内障、大動脈解離、めまい、胃癌の内視鏡治療、癌症状の緩和、チーズの普及、血液培養、鼻出血、呼吸器内視鏡、心因性腰痛、コーチングに学ぶ研修医指導の言い回し、日本の外傷医療の問題点、身体障害者への対応、等。最後に研修医のプレゼンテーションについてのミニレクチャーを行った。江別総合病院式プレゼンテーションを紹介。

最後に総括として、参加者全員の感想をもらい、受講者に終了証を手渡して解散となった。

今回、参加者が14名と少なかったことが惜しまれる。参加者からの評判は上々であった。大勢が参加してくれるようになるような工夫をしたい。(山本和利)