札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年9月22日木曜日

9月の三水会

9月21日、札幌医科大学において三水会が行われた。大門伸吾医師が司会進行。初期研修医:2名。後期研修医:6名。他:5名。

研修医から振り返り7題。

ある研修医。発熱が続き原因究明に苦慮した症例。認知症のある78歳男性。食事がむせることが2-3週間続いた。悪寒、発熱を主訴に救急車で受診。COPDがあり,肺炎球菌ワクチンは未接種。BP;96/60mmHg, HR:60/m、SaO2;96%(O2;1L/m),CRP;5.8m WBC:9800,
右下葉に浸潤影。肺炎として加療。肝機能障害が出現。徐々に改善したため、療養先を探し始めた。血痰があり、呼吸器科にコンサルト。発熱はアセトアミノフェンで解熱。抗菌薬を中止しても微熱のみ続いている。薬剤熱、IE,悪性腫瘍等を考えた。転院間際にSCC;7.1で、喀痰から扁平上皮がんと診断された。
閉塞性肺炎の可能性はないのか?CTからは考えにくいというコメントであった。認知症があり、気管支鏡は施行できなかった。癌の場所によって予後が違うのではないか。
クリニカル・パール:発熱の原因として悪性腫瘍を考える必要があると思った。

ある研修医。82歳女性。ADL低下、摂食不良。小刻み歩行、振戦あったが、パーキンソン病ではなく、認知症と診断された。高血圧、GERD,便秘、胆嚢摘出後である。初期研修医が脱水と診断し点滴で対応。XP,CT、血液、尿で大きな異常なし。血ガスでアルカローシス。翌日、意識レベルが低下した。K;3.2、肝機能障害、嘔吐。よく症状を聞くと以前から頭痛、謳気、嘔吐があった。NH3;194であった、画像診断で脾腫、腹水あり。羽ばたき振戦があった。肝性脳症と診断した。浣腸したら症状は改善した。
検査業者によるとアンモニアはすぐに測らないと数値が上昇するそうだ。
クリニカル・パール:アンモニアは採血後即測定しなければならない。

ある研修医。20歳台の女性。妊娠24週。夫からDV。胎児は低体重。尿ケトン陽性で十分な食事がとれていないことが推測された。母子手帳紛失。今後、誰がどう対応してゆけばよいのか。新生児訪問で経過観察したい。
最近の産科の問題は、低栄養の妊婦が増えている、若年多産、10代の妊娠、ネグレクト、虐待、等とのこと。

ある研修医。挿管を繰り返した80歳代男性。RA.浮腫、全身倦怠感。スレロイド内服中。Cr;4.1。下腿浮腫が著明。CRP;3.0,TSH;100。喀痰からグラム陽性球菌陽性。慢性腎不全、肺炎、心不全、甲状腺機能低下症と診断。呼吸機能が悪化し挿管。その後、抜管。心マッサージは不要であるが挿管は希望。その後の増悪時に3回挿管。抜管時家族に見守られて永眠。
クリニカル・パール:入院時にDNRについて詰めておくべきであった。

ある研修医。食欲不振の90歳代男性。皮膚が黄色。黄疸の既往。腫瘍を考えた。血液培養でグラム陰性桿菌陽性。胆道系閉塞による敗血症であろうと判断。抗菌薬で軽快した。精査を勧めたが、大都市の病院に行くことを拒否。死んでも行きたくないという人にどうするか?

ある研修医。90歳代男性。喀痰著明。無気肺である。家族の意向で気管支鏡はしないことになった。体位ドレナージで無気肺は改善。一時、食事が取れず。DNRであったが食事を希望したため、ドパミンを投与。この判断がよかったのかどうか悩んだ。
コメント:食事をさせるかどうかを検討する価値はあるが、ドパミンを投与は不要であろう、という意見が出された。

ある初期研修医。80歳代男性。脳梗塞の既往。心房細動。右上肢不全麻痺。長谷川式:3点。CTR;63%,胸水あり。EF;45%。利尿剤を静注。その後、指示が不十分のまま出張してしまった。その夜、遅く指示を完了する。予防にまで気が回らなかった点を反省。

今回は倫理的な面の話が多く提示された。悩みながらも経験を積んで患者さん家族が納得する医療を展開して欲しい。(山本和利)