札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年9月23日金曜日

小児科でよく見る感染症

9月21日、札幌医科大学においてニポポ・スキルアップ・セミナーが行われた。講師は北海道大学病院感染制御部の石黒信久准教授である。テーマは「小児科でよく見る感染症」で,参加者は10数名。

講義のポイントを示そう。
・初診時に『全身状態』良好の髄膜炎症例は少なからず存在する。発熱を主訴とする3歳7カ月の男児。突然頭痛。髄液検査から髄膜炎であった。全身状態が不良の場合は要注意であるが、重症感染症でも補液をすると顔色がよくなることがある。4か月未満の発熱児は原則入院とする。インフルエンザ桿菌は重症度が高く、嘔吐が多い。肺炎球菌ではWBC>15,000が多い。髄膜炎ではCRP>5.0が多い。現在の医療水準では髄膜炎はスクリーニングできない。

・DPTワクチン接種前の百日咳は怖い。劇症型百日咳。WBCが多いと死亡する率が高くなる。WBC除去をすると予後が改善する。成人百日咳が増えている。大人が乳児に感染させるので、大人の予防接種が重要。

・DPTワクチン接種後の百日咳診断は難しい。大多数は診断されていない。不顕性感染が多い。小児へのDPTワクチン接種を徹底する。周囲に感染者がいるかどうかが大切。1時点の抗体価で診断するのは無理。2回目で4倍の上昇が必要。採取の問題。検査室に一声かける(特別な培地がある)抗体価が二鋒性の場合:不顕性感染、再感染、昔使用したワクチンの影響が考えられる。遺伝子検査:LAMP法がよい。

・ロタウイルス胃腸炎にはCNS合併症がある。ロタウイルス胃腸炎の経過中痙攣重積の1歳児。神経発達障害が起こった。最近、ロタウイルスのワクチンが始まった。

・麻疹診断には遺伝子検査を用いる。日本は2012年までに根絶すると宣言している。

・中耳炎で使用可能な抗菌薬は限られる。起炎菌が肺炎球菌にはAMPCを倍量用いる、インフルエンザ桿菌にはメイアクト。オラペネム、オゼックスは最後の武器に用いるよう、入院患者に限定するべきである。発熱がある患児で見落としやすいのは中耳炎。

今回で小児科シリーズ(健診・発育、救急、感染症)3回を終えた。このような知識を日々蓄積しながらプライマリケア医として、地域で活躍してほしい。(山本和利)