札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2012年1月23日月曜日

忠誠心

『忠誠心、このやっかいな美徳』(エリック・フェルテン著、早川書房、2011年)を読んでみた。

著者はウォール・ストリート・ジャーナル誌のコラムニスト・ゲーム理論や倫理学に堪能。カクテルに関するコラムが人気で、ジャズ・ヴォーカル・トロンボーン奏者でもある。

著者は、友情、恋愛・結婚、ビジネス、リーダーシップ、政治、国家等、9つの分野について考察を加えている。

忠誠心とは単なる共同作業を指しているわけではない。それを超えた信頼を指している。忠誠心は基本的に相互補完的に成り立つものであって、信頼がおけるとは、肝心なときに強要されることなく自分の受け持つべき部分を提供することを意味している。

黒沢明監督の『七人の侍』に登場する島田勘兵衛は、野武士の襲撃に備えて村人に戦い方を教えながら、「人を守ってこそ、自分を守れる」と諭す。「おのれのことばかり考える奴は、おのれをも滅ばす奴だ」と百姓たちに活を入れる。忠誠心にもとづく行動は計算に従っておらず、むしろ打算を頑固に拒否しているものになる。

「友情は逆境で試される。」など参考になる。ゲーム理論を引用しながら、合理的かつ利己中心的にふるまうことが必ずしも、自分自身にとっても周囲の者にとっても得にならないことを強調している。同感である。(山本和利)